~メトホルミンの有効性・安全性はどのくらいか?~(SR&MA; Diabet Med. 2025)
安全性・有効性を検証した最新メタ解析を読み解く
妊娠糖尿病(Gestational Diabetes Mellitus:GDM)は、母体だけでなく新生児・将来の児の健康にも影響を及ぼす重要な疾患です。
食事・運動療法が第一選択とされますが、血糖管理が不十分な場合には薬物療法が必要となります。
これまで標準治療はインスリンでしたが、体重増加や新生児低血糖、注射への心理的負担といった課題があります。
こうした背景から、経口血糖降下薬であるメトホルミンが代替治療として注目されてきました。
今回ご紹介するのは、妊娠糖尿病におけるメトホルミンの安全性・有効性を評価した系統的レビューおよびメタ解析です。
試験結果から明らかになったことは?
◆対象となった研究の概要
本研究は、妊娠糖尿病に対するメトホルミン治療について、母体・新生児・長期転帰を包括的に評価することを目的とした系統的レビュー・メタ解析です。
◆研究デザイン
- PubMed・Embase を用いた系統的検索(2024年8月29日まで)
- 対象:ランダム化比較試験(RCT)および追跡研究
- バイアス評価:
- RCT:RoB 2.0
- 非ランダム研究:ROBINS-I
- 統計手法:IVhetモデルを用いた統合解析
◆主要評価項目と結果
新生児アウトカム・長期転帰
| 評価項目 | 結果 |
|---|---|
| 新生児低血糖 | OR 0.65(95%CI 0.46~0.92) |
| 出生体重 | 平均差 −68.96 g(95%CI −108.34 ~ −29.57) |
| LGA(巨大児) | リスク低下傾向あり(有意差なし) |
| 将来の耐糖能異常・糖尿病・インスリン抵抗性 | 有意差なし |
| 小児の長期代謝アウトカム | データ不足・異質性が高く結論困難 |
※本解析には RCT 10件 が含まれています。
この結果から何が示されたのか?
本メタ解析では、
- メトホルミン使用により
- 新生児低血糖の発生が統計学的に有意に減少
- 出生体重が平均で約70g低下
- 一方で
- 巨大児(LGA)リスクは有意に低下せず
- 小児期以降の耐糖能異常・糖尿病リスクに有意差は確認されていない
という結果が示されています。
試験の限界
本論文では、以下の明確な限界が指摘されています。
1. 長期アウトカムデータの不足
- 小児期以降の追跡研究は件数が少なく、追跡期間も不十分
- 研究間で評価指標・追跡年齢が異なり、データの異質性が高い
2. メトホルミンの胎盤通過に関する懸念
- メトホルミンは胎盤を通過することが知られており
- 将来的な代謝影響については結論を出せる段階にない
3. RCTの規模・設計のばらつき
- 各RCTで
- 対象人種
- 妊娠週数
- 投与量・治療開始時期
が異なっている
4. インスリンとの「完全な安全性比較」には至っていない
- 有効性・短期安全性は示唆されるものの
- インスリンを完全に代替できるかは未確定
薬剤師・医療従事者としてどう考えるか
本解析からは、
- 短期的な母児アウトカムに関しては、メトホルミンは有効かつ安全性が高い可能性
- しかし
- 長期的な児の代謝影響についてはエビデンス不足
- 慎重な適応判断が必要
であることが読み取れます。
妊娠糖尿病治療においては、
- 食事・運動療法が基本
- 薬物療法導入時には
- 母体の負担
- 血糖コントロール
- 新生児リスク
を総合的に評価
する必要があり、一律にメトホルミンを推奨できる段階ではないことも重要です。
まとめ
- 妊娠糖尿病におけるメトホルミンは
- 新生児低血糖を減少
- 出生体重をわずかに低下
- 一方で
- 児の長期代謝転帰については不明点が多い
- 現時点では
- インスリンの代替というより「選択肢の一つ」
- 個別判断が不可欠
今後は、長期追跡を含む大規模RCTの蓄積が待たれます。
再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。
続報に期待。

✅まとめ✅ ランダム化比較試験のメタ解析の結果、メトホルミンは妊娠糖尿病の管理において安全かつ効果的であると思われるが、長期的な結果についてはさらにデータが必要である。
根拠となった試験の抄録
目的: 本システマティックレビューとメタアナリシスは、妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus, GDM)の管理におけるメトホルミンの安全性と有効性を、母体、新生児、そして長期的なアウトカムに焦点を当てて評価した。生活習慣の改善は第一選択治療であるが、薬物療法もしばしば必要となる。標準的なインスリン療法には、体重増加、新生児低血糖、母体の不安といった欠点がある。メトホルミンはインスリン抵抗性改善作用を有するため有望な代替療法であるが、胎盤移行や児への長期的な影響については依然として懸念が残る。
方法: 2024年8月29日までのPubMedおよびEmbaseにおいて、ランダム化比較試験(RCT)および追跡研究を含む系統的検索を実施した。主要評価項目は新生児低血糖、出生体重、および長期代謝アウトカムとした。研究の質はRoB 2.0およびROBINS-Iを用いて評価した。データはIVhetモデルを用いて統合した。
結果: 10件のランダム化比較試験(RCT)が含まれた。メトホルミンは、新生児低血糖(オッズ比0.65、95%信頼区間0.46~0.92)および出生体重減少(平均差-68.96g、95%信頼区間-108.34~-29.57)を統計的に有意に減少させた。LGAリスクの減少傾向は認められたが、有意ではなかった。前糖尿病、糖尿病、インスリン抵抗性には有意差は認められなかった。小児における長期転帰は、追跡データが限られており、かつ不均一であるため、依然として不明確である。
結論: メトホルミンはGDM管理において安全かつ効果的であると思われますが、長期的な結果についてはさらにデータが必要です。
キーワード: 妊娠糖尿病 (GDM)、母体転帰、メトホルミン、新生児転帰、ランダム化比較試験 (RCT)、システマティックレビュー
引用文献
Metformin safety during pregnancy in women with gestational diabetes mellitus: A systematic review and meta-analysis of maternal, neonatal and long-term outcomes
Mathilde Louise Saxdorff Brinkmann et al.
Diabet Med. 2025 Dec 7:e70173. doi: 10.1111/dme.70173. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41354637/


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