左室駆出率が軽度に低下または維持された心不全におけるダパグリフロジン投与後のeGFRファーストディップの影響はどのくらい?(DELIVER試験の事前規定二次解析; JAMA Cardiol. 2023)

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SGLT2阻害薬投与後のファーストディップが患者予後に影響するのか?

ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害薬(SGLT2i)の投与開始後、推定糸球体濾過量(eGFR)の初期低下が報告されています。この低下は、糖尿病、慢性腎臓病、心不全の患者全体で観察されています。しかし、心不全における左室駆出率の違いによる患者予後への影響については充分に検証されていません。

そこで今回は、Dapagliflozin Evaluation to Improve the Lives of Patients With Preserved Ejection Fraction Heart Failure(駆出率維持心不全患者の生活を改善するためのダパグリフロジン評価:DELIVER)試験に登録された軽度の駆出率低下(HFmrEF)または駆出率は維持された(HFpEF)心不全患者におけるeGFR初期変化による患者予後への影響を検証したランダム化比較試験の二次解析の結果をご紹介します。

本試験は、EF40%以上、eGFR25以上の患者を対象とした国際多施設共同ランダム化比較試験であるDELIVER試験の結果の事前規定解析です。DELIVER試験は2018年8月から2022年3月まで行われました。今回の事前に規定された試験のデータは2023年2月〜10月まで解析されました。

本試験における介入は、ダパグリフロジン1日10mgまたはプラセボでした。

今回の事前解析では、最初のeGFR低下(ベースラインから1ヵ月目)の頻度についてダパグリフロジンとプラセボとで比較検証されました。ベースラインのeGFRと確立された予後因子で調整したCoxモデルが当てはめられ、糖尿病で層別化され、1ヵ月目をランドマークとして、初回eGFR低下と心血管(心血管死亡または心不全イベント)および腎臓(50%以上のeGFR低下、eGFR<15または透析、腎臓の原因による死亡)の転帰との関連が推定されました。

試験結果から明らかになったことは?

5,788例(平均年齢 72[SD 10]歳;男性 3,253例[56%])の試験データが解析されました。ベースラインから1ヵ月目までのeGFR値の変化の中央値(IQR)は、プラセボ群で-1(-6~5)、ダパグリフロジン群で-4(-9~1)でした(差 -3;P<0.001)。

ダパグリフロジン群プラセボ群オッズ比 or 調整ハザード比 aHR
(95%CI)
最初のeGFR低下が10%を超えた患者の割合2,892例中1,144例
[40%]
2,896例中737例
[25%]
オッズ比 1.9
1.7〜2.1
差のP<0.001
主要心血管系転帰
(心血管死亡または心不全イベント)
aHR 1.33
1.10〜1.62

ダパグリフロジンに割り付けられた患者のうち、最初のeGFR低下が10%を超えた患者の割合がプラセボと比較して高いことが報告されました(2,892例中1,144例[40%] vs. 2,896例中737例[25%];オッズ比 1.9、95%CI 1.7〜2.1;差のP<0.001)。

調整ハザード比 aHR
(95%CI)
ダパグリフロジン群プラセボ群
主要心血管系転帰
(心血管死亡または心不全イベント)
aHR 0.90
0.74〜1.09
交互作用のP=0.01
aHR 1.33
1.10〜1.62

最初のeGFR低下が10%以上(対10%以下)は、プラセボにランダムに割り付けられた群では主要心血管系転帰のリスクが高いことと関連していましたが(調整ハザード比[aHR] 1.33、95%CI 1.10〜1.62)、ダパグリフロジンにランダムに割り付けられた群では関連しませんでした(aHR 0.90、95%CI 0.74〜1.09;交互作用のP=0.01)。

初期のeGFR低下の代替閾値を考慮した場合、および連続的な指標として解析した場合にも同様の関連が観察されました。

ダパグリフロジン治療患者において、最初のeGFR低下が10%を超えても、その後の腎複合アウトカムの有害性とは関連しませんでした(aHR 0.94、95%CI 0.49〜1.82)。

コメント

SGLT2阻害薬を使用した初期にeGFRの低下(ファーストディップ)が認められますが、駆出率の異なる心不全患者の予後にどのように影響するのかについては明らかとなっていません。

さて、ランダム化比較試験の二次解析の結果、プラセボと比較して、ダパグリフロジン治療を受けたHFmrEFまたはHFpEF患者において、初期のeGFR低下は高頻度でしたが、その後の心血管イベントまたは腎イベントのリスクとは関連しないことが示されました。

あくまでも二次解析の結果であることから、追試が求められますが、現在のところはSGLT-2阻害薬によるファーストディップの影響はないようです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ダパグリフロジン治療を受けたHFmrEFまたはHFpEF患者において、初期のeGFR低下は高頻度であったが、その後の心血管イベントまたは腎イベントのリスクとは関連しなかった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害薬(SGLT2i)の投与開始後、推定糸球体濾過量(eGFR)の初期低下が予想され、糖尿病、慢性腎臓病、心不全の患者全体で観察されている。

目的:Dapagliflozin Evaluation to Improve the Lives of Patients With Preserved Ejection Fraction Heart Failure(駆出率維持心不全患者の生活を改善するためのダパグリフロジン評価:DELIVER)試験に登録された軽度の駆出率低下(HFmrEF)または駆出率維持(HFpEF)心不全患者におけるeGFRの初期変化の意味を検討する。

試験デザイン、設定、参加者:本試験は、EF40%以上、eGFR25以上の患者を対象とした国際多施設共同ランダム化比較試験であるDELIVER試験の結果の事前規定解析である。DELIVER試験は2018年8月から2022年3月まで行われた。今回の事前に規定された試験のデータは2023年2月から10月まで解析された。

介入:ダパグリフロジン1日10mgまたはプラセボ。

主要アウトカムと評価基準:今回の事前解析では、最初のeGFR低下(ベースラインから1ヵ月目)の頻度をダパグリフロジンとプラセボで比較した。ベースラインのeGFRと確立された予後因子で調整したCoxモデルを当てはめ、糖尿病で層別化し、1ヵ月目をランドマークとして、初回eGFR低下と心血管(心血管死亡または心不全イベント)および腎臓(50%以上のeGFR低下、eGFR<15または透析、腎臓の原因による死亡)の転帰との関連を推定した。

結果:5,788例(平均年齢 72[SD 10]歳;男性 3,253例[56%])の試験データが解析された。ベースラインから1ヵ月目までのeGFR値の変化の中央値(IQR)は、プラセボ群で-1(-6~5)、ダパグリフロジン群で-4(-9~1)であった(差 -3;P<0.001)。ダパグリフロジンに割り付けられた患者のうち、最初のeGFR低下が10%を超えた患者の割合がプラセボと比較して高かった(2,892例中1,144例[40%] vs. 2,896例中737例[25%];オッズ比 1.9、95%CI 1.7〜2.1;P差<0.001)。最初のeGFR低下が10%以上(対10%以下)は、プラセボにランダムに割り付けられた群では主要心血管系転帰のリスクが高いことと関連したが(調整ハザード比[aHR] 1.33、95%CI 1.10〜1.62)、ダパグリフロジンにランダムに割り付けられた群では関連しなかった(aHR 0.90、95%CI 0.74〜1.09;交互作用のP=0.01)。初期のeGFR低下の代替閾値を考慮した場合、および連続的な指標として解析した場合にも同様の関連が観察された。ダパグリフロジン治療患者において、最初のeGFR低下が10%を超えても、その後の腎複合アウトカムの有害性とは関連しなかった(aHR 0.94、95%CI 0.49〜1.82)。

結論と関連性:ダパグリフロジン治療を受けたHFmrEFまたはHFpEF患者において、初期のeGFR低下は高頻度であったが、その後の心血管イベントまたは腎イベントのリスクとは関連しなかった。これらのデータは、最初のeGFR低下に対してSGLT2薬を中断または中止すべきではないという臨床ガイダンスを補強するものである。

試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier. NCT03619213

引用文献

Decline in Estimated Glomerular Filtration Rate After Dapagliflozin in Heart Failure With Mildly Reduced or Preserved Ejection Fraction: A Prespecified Secondary Analysis of the DELIVER Randomized Clinical Trial
Finnian R Mc Causland et al. PMID: 37952176 PMCID: PMC10641768 (available on 2024-11-12) DOI: 10.1001/jamacardio.2023.4664
JAMA Cardiol. 2023 Nov 12:e234664. doi: 10.1001/jamacardio.2023.4664. Online ahead of print.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37952176/

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