2型糖尿病患者に対するGIP、GLP-1およびグルカゴン受容体作動薬レタトルチドの効果は?(DB-RCT; Lancet. 2023)

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開発中のGIP、GLP-1およびグルカゴン受容体作動薬レタトルチドの第2相試験

現在の2型糖尿病管理のコンセンサスガイドラインによれば、体重管理は血糖目標値の達成と同様に重要であるとされています。

グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド(GLP)-1、グルカゴン受容体に対してアゴニスト活性を有する単一ペプチドであるレタトルチド(Retatrutide)は、臨床的に意義のあるグルコース低下および体重減少効果を第1相試験で示しました(PMID: 36354040)。

しかし、2型糖尿病患者においてレタトルチドの有効性と安全性を様々な用量で検討していません。そこで今回、18〜75歳の2型糖尿病、糖化ヘモグロビン(HbA1c)7.0〜10.5%(53.0〜91.3mmol/mol)、BMI 25〜50kg/m2の成人を対象に行われたランダム化、二重盲検、ダブルダミー、プラセボ対照および実薬対照、並行群間、第2相試験の結果をご紹介します。

試験参加者は米国の42の研究・医療センターから募集されました。試験対象者は、スクリーニングの少なくとも3ヵ月前から食事療法と運動療法のみ、またはメトホルミン(1日1回1,000mg以上)の安定投与を受けていました。試験参加者は、HbA1cとBMIのベースライン値で層別化されたインタラクティブなWeb応答システムを用いて、プラセボ、デュラグルチド1.5mg、レタトルチド維持用量0.5mg、4mg(開始用量2mg)、4mg(漸増なし)、8mg(開始用量2mg)、8mg(開始用量4mg)、12mg(開始用量2mg)の注射を週1回受ける群にランダムに割り付けられました(2:2:2:1:1:1:1:2)。参加者、試験施設関係者、および治験責任医師は、試験終了後まで治療割り付けについてマスク(盲検化)されました。

本試験の主要エンドポイントはベースラインから24週までのHbA1cの変化であり、副次的エンドポイントは36週におけるHbA1cと体重の変化でした。

有効性はランダムに割り付けられた参加者全員(不注意で登録された参加者を除く)を対象に解析され、安全性は試験治療を少なくとも1回受けた参加者全員を対象に評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

2021年5月13日から2022年6月13日の間に、281例の参加者(平均年齢 56.2歳[SD 9.7]、平均糖尿病罹病期間 8.1年[7.0]、女性156例[56%]、白人235例[84%])がランダムに割り付けられ、安全性解析に組み入れられました(プラセボ群45例、 プラセボ群45例、デュラグルチド1.5mg群46例、レタトルチド0.5mg群47例、4mg漸増群23例、4mg群24例、8mg緩徐漸増群26例、8mg急速漸増群24例、12mg漸増群46例)。有効性解析には275例が組み入れられました(レタトルチド0.5mg群、4mg漸増群、8mg緩徐漸増群に各1例、12mg漸増群に3例が誤って登録された)。237例(84%)が試験を完了し、222例(79%)が治療を終了しました。

HbA1cのベースラインから24週目までの最小二乗平均変化率
レタトルチド0.5mg群-0.43%(SE 0.20)
レタトルチド4mg漸増群-1.39%(SE 0.14)
p<0.0001 vs. プラセボ群
レタトルチド4mg群-1.30%(SE 0.22)
p<0.0001 vs. プラセボ群
レタトルチド8mg緩徐漸増群-1.99%(SE 0.15)
p<0.0001 vs. プラセボ群
p=0.0019 vs. デュラグルチド1.5mg群
レタトルチド8mg急速漸増群-1.88%(SE 0.21)
p<0.0001 vs. プラセボ群
レタトルチド12mg漸増群-2.02%(SE 0.11)
p<0.0001 vs. プラセボ群
p=0.0002 vs. デュラグルチド1.5mg群
プラセボ群-0.01%(SE 0.21)
デュラグルチド1.5mg群-1.41%(SE 0.12)

24週時点で、レタトルチドによるHbA1cのベースラインからの最小二乗平均変化率は、0.5mg群で-0.43%(SE 0.20;-4.68mmol/mol[2.15])、4mg漸増群で-1.39%(0.14;-15.24mmol/mol[1.56])、4mg群で-1.30%(0.22;-14.20mmol/mol[2.44])、8mg緩徐漸増群で-1.99%(0.15;-21.78mmol/mol[1.60])、8mg急速漸増群で-1.88%(0.21;-20.52mmol/mol[2.34])、12mg漸増群で-2.02%(0.11;-22.07mmol/mol [1.21])、プラセボ群では-0.01%(0.21;-0.12mmol/mol[2.27])、デュラグルチド1.5mg群では-1.41%(0.12;-15.40mmol/mol[1.29])であった。レタトルチドによるHbA1cの減少は、0.5mg群を除くすべての群でプラセボより有意に大きく(p<0.0001)、8mg緩徐漸増群(p=0.0019)と12mg漸増群(p=0.0002)ではデュラグルチド1.5mg群より大きいことが示されました。所見は36週でも一貫していました。

体重のベースラインから36週目までの最小二乗平均変化率
レタトルチド0.5mg群3.19%(SE 0.61)
レタトルチド4mg漸増群7.92%(SE 1.28)
p=0.0017 vs. プラセボ群
p=0.0001 vs. デュラグルチド1.5mg群
レタトルチド4mg群10.37%(SE 1.56)
p=0.0001 vs. プラセボ群
p=0.0001 vs. デュラグルチド1.5mg群
レタトルチド8mg緩徐漸増群16.81%(SE 1.59)
p=0.0001 vs. プラセボ群
p=0.0001 vs. デュラグルチド1.5mg群
レタトルチド8mg急速漸増群16.34%(SE 1.65)
p=0.0001 vs. プラセボ群
p=0.0001 vs. デュラグルチド1.5mg群
レタトルチド12mg漸増群16.94%(SE 1.30)
p=0.0001 vs. プラセボ群
p=0.0001 vs. デュラグルチド1.5mg群
プラセボ群3.00%(SE 0.86)
デュラグルチド1.5mg群2.02%(SE 0.72)

体重はレタトルチドの用量依存的に36週で0.5mg群で3.19%(SE 0.61)、4mg漸増群で7.92%(1.28)、4mg群で10.37%(1.56)減少しました。プラセボ投与群では3.00%(0.86)、デュラグルチド1.5mg投与群では2.02%(0.72)であったのに対し、8mg緩徐漸増群では16.81%(1.59)、8mg急速漸増群では16.34%(1.65)、12mg漸増群では16.94%(1.30)でした。レタトルチド4mg以上の用量では、体重減少はプラセボ(4mg漸増群でp=0.0017、その他でp<0.0001)およびデュラグルチド1.5mg(いずれもp<0.0001)よりも有意に大きいことが示されました。

吐き気、下痢、嘔吐、便秘を含む軽度から中等度の胃腸有害事象は、レタトルチド群190例中67例(35%)(0.5mg群47例中6例[13%]から8mg急速漸増群24例中12例[50%]まで)、プラセボ群45例中6例(13%)、デュラグルチド1.5mg群46例中16例(35%)に報告されました。重篤な低血糖の報告はなく、試験期間中の死亡例の報告はありませんでした。

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グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド(GLP)-1、グルカゴン受容体に対してアゴニスト活性を有する単一ペプチドであるレタトルチド(Retatrutide)による2型糖尿病患者に対する有効性が示されています。しかし、用量依存性や、より大規模な検証は行われていません。

さて、米国の二重盲検ランダム化比較試験の結果によれば、2型糖尿病患者において、レタトルチドは臨床的に意義のある血糖コントロールの改善と強固な体重減少を示し、安全性プロファイルはGLP-1受容体作動薬、GIPおよびGLP-1受容体作動薬と一致していました。実薬対象であるデュラグルチドの用量は1.5mgであり、体重減少効果を得るためには用量が少ないと考えられますが、この点や参加者のBMI 25〜50kg/m2であることを踏まえてもレタトルチドの体重減少効果は大きいです。日本においても過体重の2型糖尿病患者が増えてきていることからも期待がかかります。また心血管疾患に対する安全性の検証結果も待たれるところです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 2型糖尿病患者において、レタトルチドは臨床的に意義のある血糖コントロールの改善と強固な体重減少を示し、安全性プロファイルはGLP-1受容体作動薬、GIPおよびGLP-1受容体作動薬と一致した。

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