SARS-CoV-2感染後のCVDリスクはどのくらいなのか?
SARS-CoV-2感染後のCVDリスクについて、重症度を考慮しながら経時的に検討した系統的レビューはほとんどありません。
そこで今回は、SARS-CoV-2感染後の肺塞栓症(PE)、心筋梗塞(MI)、虚血性脳卒中(IS)、出血性脳卒中(HS)、動脈血栓症のリスクに関するすべてのエビデンスを評価したシステマティック・レビュー、メタ解析の結果をご紹介します。
プロトコルはPROSPEROに登録されました。Pubmed、Embase、MedRxivが検索され、タイトル/抄録および全文がスクリーニングされました。収録された研究が抽出され、質が評価され、感染後時間別および疾患の重症度別にプールリスクが推定されました。
試験結果から明らかになったことは?
プールされた相対リスク RR 急性期 | プールされた相対リスク RR 急性期後 | |
肺塞栓症(PE) | RR 27.1(95%CI 17.8〜41.10) | RR 2.9(95%CI 2.6〜3.3) |
心筋梗塞(MI) | RR 4.4(95%CI 1.6〜12.4) | RR 1.4(95%CI 1.1〜1.9) |
脳卒中 | RR 3.3(95%CI 2.1〜5.2) | RR 1.6(95%CI 0.9〜2.7) |
虚血性脳卒中(IS) | RR 5.6(95%CI 2.1〜14.8) | – |
出血性脳卒中(HS) | RR 4.0(95%CI 0.1〜326.2) | – |
リスクは急性期に最も高いことが示されました[PE:Pooled Relateve Risk 27.1(95%CI 17.8〜41.10);MI:RR 4.4(95%CI 1.6〜12.4);脳卒中:RR 3.3(95%CI 2.1〜5.2);IS:RR 5.6(95%CI 2.1〜14.8);HS:RR 4.0(95%CI 0.1〜326.2)] vs. 急性期後[PE:RR 2.9(95%CI 2.6〜3.3);MI:1.4(95%CI 1.1〜1.9);脳卒中:1.6(95%CI 0.9〜2.7)]。
最も高いリスクは感染確認後に観察され、感染後1ヵ月間では低下しました(例:PEの7日RR=31、1ヵ月RR=8.1)。
PEでは4.5ヵ月まで、MIでは1ヵ月まで、ISでは2ヵ月まで2倍のリスクが観察されました。
リスクは重症度の低下とともに減少しました。
コメント
SARS-CoV-2感染により、サイトカインストームが引き起こされ、心血管疾患(CardioVascular Desease, CVD)のリスク増加が引き起こされてることが報告されています。しかし、感染後の径時的なリスク評価については充分に行われていません。
さて、メタ解析の結果、CVD転帰のリスクが増加するため、重症のSARS-CoV-2感染症から生還した患者に対しては、特に感染後9ヵ月間の管理が必要であることが示されました。
抄録には記載されていませんが、入院患者のリスクは、感染後9か月経過しても2倍でした。非入院患者の場合、感染後3か月までリスクは2倍になり、その後は比較的一定のままでした。このため、COVID-19患者においては、少なくとも罹患後9ヵ月間のモニタリングが求められます。とはいえ、患者背景により、long-COVIDなどの併存も含めた評価が求められます。
また、CVDイベントのリスク低減を目的とした介入効果の検証も引き続き求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ メタ解析の結果、CVD転帰のリスクが増加するため、重症のSARS-CoV-2感染症から生還した患者に対しては、特に感染後9ヵ月間の管理が必要である。
根拠となった試験の抄録
目的:我々の知る限り、SARS-CoV-2感染後のCVDリスクについて、重症度を考慮しながら経時的に検討した系統的レビューはない。感染後の肺塞栓症(PE)、心筋梗塞(MI)、虚血性脳卒中(IS)、出血性脳卒中(HS)、動脈血栓症のリスクに関するすべてのエビデンスを評価した。
方法:プロトコルはPROSPEROに登録した。Pubmed、Embase、MedRxivを検索し、タイトル/抄録および全文をスクリーニングした。収録された研究を抽出し、その質を評価し、感染後時間別および疾患の重症度別にプールリスクを推定した。
結果:リスクは急性期に最も高かった[PE:Pooled Relateve Risk 27.1(95%CI 17.8〜41.10);MI:RR 4.4(95%CI 1.6〜12.4);脳卒中:RR 3.3(95%CI 2.1〜5.2);IS:RR 5.6(95%CI 2.1〜14.8);HS:RR 4.0(95%CI 0.1〜326.2)] vs. 急性期後[PE:RR 2.9(95%CI 2.6〜3.3);MI:1.4(95%CI 1.1〜1.9);脳卒中:1.6(95%CI 0.9〜2.7)]。最も高いリスクは感染確認後に観察され、感染後1ヵ月間は低下した(例:PEの7日RR=31、1ヵ月RR=8.1)。PEでは4.5ヵ月まで、MIでは1ヵ月まで、ISでは2ヵ月まで2倍のリスクが観察された。リスクは重症度の低下とともに減少した。
結論:CVD転帰のリスクが増加するため、重症のSARS-CoV-2感染症から生還した患者に対しては、特に感染後9ヵ月間の管理が必要である。
キーワード:COVID-19、動脈血栓症、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、心筋梗塞、肺塞栓症
引用文献
Cardiovascular disease risk after a SARS-CoV-2 infection: a systematic review and meta-analysis
Karla Romero Starke et al. PMID: 38971381 DOI: 10.1016/j.jinf.2024.106215
J Infect. 2024 Jul 4:106215. doi: 10.1016/j.jinf.2024.106215. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38971381/
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