救急外来を受診した成人におけるSARS-CoV-2オミクロン変異株感染の転帰と季節性インフルエンザおよびRSウイルス感染との比較(多施設コホート研究; Clin Infect Dis. 2023)

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SARS-CoV-2感染による人類への影響度はどのくらいか?

SARS-CoV-2感染の影響については、病原性の低い亜種が出現し、集団免疫力が増加している時代において議論が残っています。

そこで今回は、オミクロン、インフルエンザ、または呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染で救急外来(ED)を受診した成人の転帰を比較したコホート研究の結果をご紹介します。

本研究は、2021~22年と2015~19年にスウェーデンのストックホルム郡にある6つの急性期病院の救急外来にオミクロン変異株、インフルエンザ、RSV感染症を理由に受診した成人を含むレトロスペクティブ多施設コホート研究です。2021~22年の間に、患者は多重PCR検査により3つのウイルスすべてについて検査されました。

本試験の主要転帰は30日全死因死亡率でした。副次的転帰は90日全死因死亡、入院、集中治療室(ICU)入室でした。

試験結果から明らかになったことは?

2021~22年の合計6,385例が主要解析の対象となりました:オミクロン4,833例、インフルエンザ1,099例、RSV453例。

30日死亡率オッズ比 OR
(95%CI)
オミクロン変異株群7.9%(n=381)2.36(1.60〜3.62) vs. インフルエンザ
1.42(0.94〜2.21) vs. RSウイルス 
インフルエンザ群2.5%(n=28)
RSウイルス群6.0%(n=27)

30日死亡率はオミクロン群で7.9%(n=381)、インフルエンザ群で2.5%(n=28)、RSV群で6.0%(n=27)でした。オミクロンに罹患した患者の調整後30日死亡オッズ比(OR)は、インフルエンザと比較して2.36(95%信頼区間[CI] 1.60〜3.62)、RSVと比較して1.42(95%CI 0.94〜2.21)でした。

ワクチン未接種のオミクロン変異株感染患者では、インフルエンザ(OR 5.51、95%CI 3.41〜9.18)およびRSV(OR 3.29、95%CI 2.01〜5.56)と比較して、より強い関連が観察されました。

副次的転帰についても同様の傾向が認められました。パンデミック前のインフルエンザ患者5,709例とRSV患者995例との比較においても、結果は一貫していました。

コメント

SARS-CoV-2感染によるCOVID-19患者数は増減を繰り返し、終息は期待できません。基本的な感染予防対策の一つにワクチン接種があり、集団免疫を獲得した場合における感染症による死亡リスクについては充分に検証されていません。

さて、スウェーデンのコホート研究の結果、救急外来を受診した患者において、オミクロン変異株への感染は、インフルエンザやRSウイルスと比較して、特にワクチン未接種患者において、より一般的であり、より重篤な転帰と関連していました。

あくまでもスウェーデンの後向きコホート研究の結果であり、さらにアップルtoアップルの比較ではないため、研究結果の重要性は低いと考えられます。とはいえ、以前としてSARS-CoV-2の感染力、ワクチン未接種者における死亡リスク増加は比較的大きいことから、感染予防及び感染後の治療戦略の確率が求められます。

続報に期待。

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まとめ:スウェーデンのコホート研究の結果、救急外来を受診した患者において、オミクロン変異株への感染は、インフルエンザやRSウイルスと比較して、特にワクチン未接種患者において、より一般的であり、より重篤な転帰と関連していた。

根拠となった試験の抄録

背景:SARS-CoV-2感染の影響については、病原性の低い亜種が出現し、集団免疫力が増加している時代において議論がある。我々は、オミクロン、インフルエンザ、または呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染で救急外来(ED)を受診した成人の転帰を比較した。

方法:本研究は、2021~22年と2015~19年にスウェーデンのストックホルム郡にある6つの急性期病院の救急外来にオミクロン変異株、インフルエンザ、RSV感染症で受診した成人を含むレトロスペクティブ多施設コホート研究。2021~22年の間に、患者は多重PCR検査により3つのウイルスすべてについて検査された。
主要転帰は30日全死因死亡率とした。副次的転帰は90日全死因死亡、入院、集中治療室(ICU)入室とした。

結果:2021~22年の合計6,385例が主要解析の対象となった:オミクロン4,833例、インフルエンザ1,099例、RSV453例であった。30日死亡率はオミクロン群で7.9%(n=381)、インフルエンザ群で2.5%(n=28)、RSV群で6.0%(n=27)であった。オミクロンに罹患した患者の調整後30日死亡オッズ比(OR)は、インフルエンザと比較して2.36(95%信頼区間[CI] 1.60〜3.62)、RSVと比較して1.42(95%CI 0.94〜2.21)であった。ワクチン未接種のオミクロン変異株感染患者では、インフルエンザ(OR 5.51、95%CI 3.41〜9.18)およびRSV(OR 3.29、95%CI 2.01〜5.56)と比較して、より強い関連が観察された。副次的転帰についても同様の傾向が認められた。パンデミック前のインフルエンザ患者5,709例とRSV患者995例との比較においても、結果は一貫していた。

結論:救急外来を受診した患者において、オミクロン変異株への感染は、インフルエンザやRSウイルスと比較して、特にワクチン未接種患者において、より一般的であり、より重篤な転帰と関連していた。

キーワード:急性転帰、救急外来、インフルエンザ、オミクロン、呼吸器合胞体ウイルス、SARS-CoV-2

引用文献

Outcomes of SARS-CoV-2 Omicron Variant Infections Compared with Seasonal Influenza and Respiratory Syncytial Virus Infections in Adults Attending the Emergency Department: A Multicentre Cohort Study
Pontus Hedberg et al. PMID: 37883521 DOI: 10.1093/cid/ciad660
Clin Infect Dis. 2023 Oct 26:ciad660. doi: 10.1093/cid/ciad660. Online ahead of print.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37883521/

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