標準的なDAPT vs. 短期間のDAPT後にP2Y12阻害薬(P2Y12i)単剤療法
最近の研究では、標準的な抗血小板二重療法(DAPT)と比較して、短期間のDAPT後にP2Y12阻害薬(P2Y12i)単剤療法を行うことの安全性と有効性が同等であることが示されています。しかし、経皮的冠動脈インターベンションを受けた急性冠症候群(ACS)患者における最適なDAPT期間とレジメンはまだ明らかとなっていません。
そこで今回は、ACS患者を対象に、短期DAPT(3ヵ月以下)後のP2Y12i単剤療法と標準DAPT(12ヵ月以上)を比較評価したメタ解析の結果をご紹介します。
解析対象であるランダム化比較試験についてオンラインデータベースで検索されました。対象としたアウトカムは、全死亡、心血管死、心筋梗塞、ステント血栓症、標的血管血行再建術、大出血でした。プールのオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)の算出にはランダム効果モデルが用いられました。
試験結果から明らかになったことは?
合計23,884例の患者を対象とした6件のランダム化比較試験(n=11,904:P2Y12i単剤療法、n=11,980:標準DAPT)が組み入れられました。
(3ヵ月以下の短期間DAPT後のP2Y12i単剤療法 vs. 12ヵ月以上の標準DAPT) | オッズ比 (95%CI) |
1年後の全死因死亡 | OR 0.86 (0.65~1.12) p=0.26 |
心血管死 | OR 0.75 (0.43~1.29) p=0.29 |
心筋梗塞 | OR 1.09 (0.83~1.43) p=0.53 |
ステント血栓症 | OR 1.09 (0.71~1.67)p=0.70 |
標的血管血行再建術 | OR 0.81 (0.65~1.01) p=0.07 |
大出血 | OR 0.49 (0.38〜0.64) p<0.001 |
標準的DAPTと比較して、短期間DAPT後のP2Y12i単剤療法は、1年後の全死因死亡(OR 0.86、95%CI 0.65~1.12、p=0.26)および心血管死(OR 0.75、95%CI 0.43~1.29、p=0.29)の同程度のオッズと関連していました。同様に、心筋梗塞(OR 1.09、0.83~1.43、p=0.53)、ステント血栓症(OR 1.09、95%CI 0.71~1.67、p=0.70)、標的血管血行再建術(OR 0.81、95%CI 0.65~1.01、p=0.07)の発生率もP2Y12i単剤療法群と標準的DAPT群との間に有意差はありませんでした。
P2Y12i単剤療法群では標準的DAPT群と比較して大出血が有意に少ないことが示されました(OR 0.49、95%CI 0.38〜0.64、p<0.001)。
コメント
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた急性冠症候群(ACS)患者における最適なDAPT期間とレジメンについては、充分に明らかとなっていません。
さて、メタ解析の結果、PCIを受けたACS患者において、短期間DAPT後のP2Y12i単剤療法は、標準的DAPT療法と比較して、虚血リスクを増加させることなく出血を有意に減少させました。
短期間DAPTの期間は3ヵ月未満、標準DAPTの期間は12ヵ月以上でした。また具体的な薬剤名については抄録で触れられていません。ランダム化比較試験6件に使用された薬剤がどれであったのか気にかかるところです。また、患者背景についても慎重に把握した方が、より目の前の患者に活かせる情報になると考えられます。
続報に期待。
✅まとめ✅ メタ解析の結果、経皮的冠動脈インターベンションを受けたACS患者において、短期間DAPT後のP2Y12i単剤療法は、標準的DAPT療法と比較して、虚血リスクを増加させることなく出血を有意に減少させた。
根拠となった試験の抄録
背景:最近の研究では、標準的なDAPTと比較して、短期間の抗血小板二重療法(DAPT)後にP2Y12阻害薬(P2Y12i)単剤療法を行うことの安全性と有効性が同等であることが示されている。しかし、経皮的冠動脈インターベンションを受けた急性冠症候群(ACS)患者における最適なDAPT期間とレジメンはまだ明らかではない。
方法:ACS患者において、短期DAPT(3ヵ月以下)後のP2Y12i単剤療法と標準DAPT(12ヵ月以上)を比較評価したランダム化比較試験をオンラインデータベースで検索した。対象としたアウトカムは、全死亡、心血管死、心筋梗塞、ステント血栓症、標的血管血行再建術、大出血であった。プールのオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)の算出にはランダム効果モデルを用いた。
結果:合計23,884例の患者を対象とした6件のランダム化比較試験(n=11,904:P2Y12i単剤療法、n=11,980:標準DAPT)が組み入れられた。標準的DAPTと比較して、短期間DAPT後のP2Y12i単剤療法は、1年後の全死因死亡(OR 0.86、95%CI 0.65~1.12、p=0.26)および心血管死(OR 0.75、95%CI 0.43~1.29、p=0.29)の同程度のオッズと関連していた。同様に、心筋梗塞(OR 1.09、0.83~1.43、p=0.53)、ステント血栓症(OR 1.09、95%CI 0.71~1.67、p=0.70)、標的血管血行再建術(OR 0.81、95%CI 0.65~1.01、p=0.07)の発生率もP2Y12i単剤療法群と標準的DAPT群との間に有意差はなかった。P2Y12i単剤療法群では標準的DAPT群と比較して大出血が有意に少なかった(OR 0.49、95%CI 0.38〜0.64、p<0.001)。
結論:経皮的冠動脈インターベンションを受けたACS患者において、短時間DAPT後のP2Y12i単剤療法は、標準的DAPT療法と比較して、虚血リスクを増加させることなく出血を有意に減少させた。
キーワード:P2Y12阻害薬単剤療法、急性冠症候群、二重抗血小板療法
引用文献
P2Y12 Inhibitor Monotherapy After Short-Term Dual Antiplatelet Therapy in Acute Coronary Syndrome
Sahib Singh et al. PMID: 38734399 DOI: 10.1016/j.amjcard.2024.05.004
Am J Cardiol. 2024 May 10:224:1-8. doi: 10.1016/j.amjcard.2024.05.004. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38734399/
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