院内蘇生または医療緊急対応イベントにおける薬剤師の影響はどのくらい?(システマティックレビュー; Am J Emerg Med. 2023)

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薬剤師は救急外来患者の転帰を好転させられるのか?

病院において蘇生や救急隊による治療を必要とする重症患者の救急管理において、しばしば医師・看護師の影響力が検証されています。一方、薬剤師の存在が薬物療法や患者関連の転帰に及ぼす影響については充分に検証されていません。

そこで今回は、救急外来における薬剤師の影響力を明らかにしようとしたシステマティックレビューの結果をご紹介します。

Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(システマティックレビューとメタアナリシスのための優先報告項目)ガイドラインに従ってシステマティックレビューが実施されました。1995年1月から2023年4月までのデータベースの文献検索が行われ、現代の薬剤師の実践に関する研究が特定されました。その結果、蘇生または医療緊急対応チームのケアを必要とする重症入院患者の緊急管理中に、薬剤師の存在が薬物療法および患者関連の転帰に及ぼす影響を評価する研究が含まれ、抽出および分析が行われました。

バイアスのリスクを判定するため、非ランダム化試験にはNewcastle-Ottowa Quality Assessment scaleを、ランダム化試験にはRevised Cochrane risk-of-bias toolが用いられました。

試験結果から明らかになったことは?

システマティックレビューの結果は、蘇生または医療緊急対応チームのケアにおける薬剤師の存在と介入が有益な影響を与えることを支持するものでした(。

具体的には、薬剤師の存在あるいは介入が、一刻を争う投薬の開始までの時間、投薬の適切性、診療ガイドラインの遵守などのアウトカムにおいて有意な改善を示しました。しかし、研究は小規模でレトロスペクティブなものが多く、在院日数や死亡率などの患者関連指標における差を検出するための検出力は示されませんでした。

コメント

重症患者の救急管理における薬剤師の影響力については充分に検証されていません。

さて、システマティックレビューの結果、蘇生または医療緊急対応チームのケアにおける薬剤師の存在と介入が有益な影響を与えることが支持されました。

一刻を争う投薬の開始までの時間、投薬の適切性、ガイドラインの遵守などのアウトカムにおいて有意な改善が認められたものの、サンプルサイズが小さいことから更なる検証が求められます。

有料論文であることから詳細が確認できていないことも大きなリミテーションであると考えられます。どのくらいの確実性で結果が示されたのか、統合しても差し支えない差異なのかなど結果の解釈に注意を要します。

続報に期待。

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✅まとめ✅ システマティックレビューの結果、蘇生または医療緊急対応チームのケアにおける薬剤師の存在と介入が有益な影響を与えることを支持するものであり、一刻を争う投薬の開始までの時間、投薬の適切性、ガイドラインの遵守などのアウトカムにおいて有意な改善が認められた。しかし、サンプルサイズが小さいことから更なる検証が求められる。

根拠となった論文の抄録

背景:われわれは、病院において蘇生や救急隊による治療を必要とする重症患者の救急管理において、薬剤師の存在が薬物療法や患者関連の転帰に及ぼす影響を明らかにしようとした。

方法:Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(システマティックレビューとメタアナリシスのための優先報告項目)ガイドラインに従ってシステマティックレビューを実施した。
1995年1月から2023年4月までのデータベースの文献検索を行い、現代の薬剤師の実践に関する研究を特定した。その結果、蘇生または医療緊急対応チームのケアを必要とする重症入院患者の緊急管理中に、薬剤師の存在が薬物療法および患者関連の転帰に及ぼす影響を評価する研究が含まれ、抽出および分析が行われた。
バイアスのリスクを判定するため、非ランダム化試験にはNewcastle-Ottowa Quality Assessment scaleを、ランダム化試験にはRevised Cochrane risk-of-bias toolを用いた。

結果:同定された1,345件の研究のうち、54件が全文レビュー用に選択され、30件が最終解析に含まれた。29件のコホート研究と1件のランダム化比較試験があった。これらの研究は、様々な患者像に対する薬剤師の影響を報告していた。研究チームは、各研究を8つの患者コホート(急性脳卒中、心停止、迅速対応コール、ST上昇型心筋梗塞、急性出血、大外傷蘇生、敗血症、てんかん状態)のいずれかに割り当てた。最も頻繁に報告されたアウトカムは、23件の研究で統計学的に有意な利益と関連しており、薬物投与までの時間であった。死亡率などの患者の転帰指標に有意差を報告した研究はほとんどなかった。30件の研究のうち、バイアスリスクが低いと評価されたのは8件のみであった。

結論:このシステマティックレビューの結果は、蘇生または医療緊急対応チームのケアにおける薬剤師の存在と介入が有益な影響を与えることを支持するものであり、一刻を争う投薬の開始までの時間、投薬の適切性、ガイドラインの遵守などのアウトカムにおいて有意な改善が認められた。しかし、研究は小規模でレトロスペクティブなものが多く、在院日数や死亡率などの患者関連指標における差を検出するための検出力はなかった。今後の研究では、ED蘇生環境における薬剤師の臨床的影響について、しっかりとしたサンプリング方法を用いた対照前向き研究で調査すべきである。

キーワード:急性虚血性脳卒中、急性重症出血、救急救命、薬剤師、蘇生、敗血症

引用文献

Impact of pharmacists during in-hospital resuscitation or medical emergency response events: A systematic review
Elizabeth M Currey et al. PMID: 37939522 DOI: 10.1016/j.ajem.2023.10.020
Am J Emerg Med. 2023 Oct 22:75:98-110. doi: 10.1016/j.ajem.2023.10.020. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37939522/

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