小児におけるCOVID-19曝露が他の疾患の発症リスクを増加させる
小児は成人と比較して重度のCOVID-19の影響をほとんど受けていないことが報告されていますが、発症後に新たな病態を経験した可能性を示唆するデータがあります。
そこで今回は、COVID-19を経験した小児と健常対照者の転帰を比較したコホート内症例対照研究の結果をご紹介します。
レトロスペクティブネステッドコホート研究により、0~14歳の小児におけるCOVID-19後に新たに発症した疾患の発生率が評価されました。データは、ヴェネト州の登録とリンクしたイタリアの小児プライマリケアデータベースから検索されました。
鼻咽頭ぬぐい液が陽性の曝露児と陰性の非曝露児が1対1でマッチされ、条件付きCox回帰を適用し、共変量を調整した後の曝露と転帰の関連について、調整ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)が推定されました。
試験結果から明らかになったことは?
2020年2月1日から2021年11月30日までの曝露児 1,656例と非曝露児 1,656例が比較されました。COVID-19後に新たに発症した疾患の全体的な過剰リスクは、曝露児が非曝露児よりも78%高いことが示されました(aHR 1.7、95%CI 1.4〜2.3)。
被爆児では、精神的健康問題(aHR 1.8、95%CI 1.1〜3.0)、神経学的問題(aHR 2.4、95%CI 1.4〜4.1)など、いくつかの新規疾患のリスクが有意に高いことが明らかとなりました。
疾患カテゴリー | 発生数 | 患者・日 | 調整後ハザード比 aHR | (95%CI) | ||
---|---|---|---|---|---|---|
非曝露 | 曝露 | 非曝露 | 曝露 | |||
心血管疾患 | 8 | 12 | 477,934 | 476,217 | 1.62 | (0.66〜3.97) |
呼吸器疾患 | 11 | 14 | 478,099 | 475,395 | 1.26 | (0.57〜2.79) |
消化器疾患 | 9 | 14 | 477,767 | 475,063 | 1.65 | (0.72〜3.83) |
神経疾患 | 19 | 45 | 475,186 | 469,233 | 2.38 | (1.39〜4.07) |
精神疾患 | 24 | 42 | 474,444 | 471,707 | 1.81 | (1.10〜2.99) |
筋骨格系 | 7 | 11 | 478,112 | 476,715 | 1.65 | (0.64〜4.28) |
代謝性疾患 | 9 | 6 | 477,820 | 477,230 | 0.72 | (0.25〜2.02) |
その他 | 14 | 27 | 476,707 | 473,311 | 1.99 | (1.04〜3.79) |
コメント
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の終息は困難であり、どのように共存していくのか、また基本的な感染予防対策の構築など、さまざまな角度からの検証が求められています。小児は成人と比較して重度のCOVID-19の影響をほとんど受けていないことが報告されていますが、発症後に新たな病態を経験した可能性を示唆するデータがあることから、より詳細な検証が求められています。
さて、コホート内症例対照研究の後向き解析の結果、被爆児は非被爆児に比べて、COVID-19後に新たに注目すべき症状を発症するリスクが78%高いことが示されました。具体的には、精神的健康問題や神経学的問題のリスク増加が示されました。
今後は、ワクチン接種を含めて基本的な感染予防対策を実施した場合と対照とを比較して、各疾患の発症リスクが低減するか検証することが求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ コホート内症例対照研究の後向き解析の結果、被爆児は非被爆児に比べて、COVID-19後に新たに注目すべき症状を発症するリスクが78%高かった。
根拠となった試験の抄録
目的:小児は成人と比較して重度のCOVID-19の影響をほとんど受けていないが、発症後に新たな病態を経験した可能性を示唆するデータがある。我々はCOVID-19を経験した小児と健常対照者の転帰を比較した。
方法:レトロスペクティブネステッドコホート研究により、0~14歳の小児におけるCOVID-19後に新たに発症した疾患の発生率を評価した。データは、ヴェネト州の登録とリンクしたイタリアの小児プライマリケアデータベースから検索した。鼻咽頭ぬぐい液が陽性の曝露児と陰性の非曝露児を1対1でマッチさせた。条件付きCox回帰を適用し、共変量を調整した後の曝露と転帰の関連について、調整ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。
結果:2020年2月1日から2021年11月30日までの曝露児 1,656例と非曝露児 1,656例を比較した。COVID-19後に新たに発症した疾患の全体的な過剰リスクは、曝露児が非曝露児よりも78%高かった。被爆児では、精神的健康問題(aHR 1.8、95%CI 1.1〜3.0)、神経学的問題(aHR 2.4、95%CI 1.4〜4.1)など、いくつかの新規疾患のリスクが有意に高いことがわかった。
結論:被爆児は非被爆児に比べて、COVID-19後に新たに注目すべき症状を発症するリスクが78%高かった。
キーワード:COVID-19、新規発症症状、小児患者、集団ベース研究、実世界における証拠
引用文献
Comparative study showed that children faced a 78% higher risk of new-onset conditions after they had COVID-19
Costanza Di Chiara et al. PMID: 37688774 DOI: 10.1111/apa.16966
Acta Paediatr. 2023 Dec;112(12):2563-2571. doi: 10.1111/apa.16966. Epub 2023 Sep 9.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37688774/
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