ケアホームの高齢者に対する薬剤師独立処方者による脱処方の障壁と実現要因には何がありますか?(クラスターRCT; CHIPPS試験; Res Social Adm Pharm. 2023)

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PIMs減処方の成否を左右する要因には何があるのか?

ケアホーム入居者の70%以上が、罹患率や死亡率に関連する不適切な薬剤(potentially inappropriate medications, PIMs)を処方されています。

イギリスにおいて、ケアホームで薬剤レビューを行う薬剤師による一般的な推奨事項として脱処方(減処方:deprescribing)があげられますが、処方者の承認が必要であることが障壁となっています。

Care home Independent Pharmacist Prescribing Study(CHIPPS)は、クラスターランダム化比較試験であり、薬剤師の独立処方者(PIP)をケアホームに統合し、服薬管理を改善するものです。

今回ご紹介するのは、CHIPPS試験のデータを用いて、PIPがケアホームで薬を処方する際の障壁と阻害要因、実現要因を明らかにした研究結果です。

CHIPPS試験におけるPIPとのインタビューについて二次的質的枠組み分析が行われました。プロセス評価に含まれる14人のPIPから、PIPの文脈的要因(例えば、ケアホームでの以前の経験など)の多様性を達成するために、最大変動サンプリング法を活用し選択されました。記録は、脱処方の障壁と実現要因について帰納(誘導)的にコード化され、理論的領域フレームワーク(TDF)にマッピングされました。

試験結果から明らかになったことは?

11人のPIPのインタビューが抽出されました。結果は、以下の5つの理論的領域フレームワークに分類されました。

  1. 社会的影響:PIPと一般開業医(GP)、ケアホームスタッフ、入居者/家族との関係、PIPの役割に対する認識、PIPの脱処方活動に対する家族の信頼
  2. 能力に関する信念:PIPの独立した処方に対する自信、これまでの経験、入居者の薬を扱う能力
  3. 社会的/職業的役割とアイデンティティ:PIPの役割の理解と独立した処方者としての役割に対するPIPの自信
  4. 環境的背景と資源:入居者の記録へのアクセス、非処方の意思決定支援、ケアホームスタッフからの定期的なフォローアップ、入居者の服薬困難、チームワーク、時間的制約
  5. 結果に関する信念:特定の薬に関して、脱処方のマイナス面がメリットを上回ると考えている(障壁)

本研究は、ケアホームにおけるPIPの脱処方の障壁と促進要因に関する理論的理解を提供するものです。PIPによって説明された主な実現要因は、GP、入居者、ケアホームスタッフとの事前の関係であり、これが薬剤処方の可能性を促進しました。

安全に薬剤処方を行う自信を高める要因は、お互いの役割を知ることであり、これによりPIPが薬剤処方を行う自信を高めることができました。

さらに、PIPが入居者の記録にアクセスしやすいこと、PIPが不在の間にケアホームスタッフが入居者のフォローアップを行えること、入居者が薬を飲みにくいことが、PIPが脱処方の役割を果たす自信を高めました。

特定された主な障壁は、上記の主な促進要因の反意語でした。その他の障壁としては、神経系薬剤のような一部の薬剤カテゴリーに関する知識の欠如、疾患の退行性による患者の意思決定への関与能力の欠如、時間不足、PIPの当事者意識の欠如、リスクが潜在的利益を上回ると考えることなどが挙げられました。

コメント

国によっては薬剤師の独立処方権が認められています。しかし、減処方(減薬)を実現できないケースがあることから、どのような障壁があるのか検証が求められています。

さて、クラスターランダム化比較試験の結果、ケアホーム内での薬剤師独立処方権による減処方への関与は、複数の障壁と成功要因に影響されていることが明らかとなりました。具体的には、ケアホーム内のスタッフとの関係性や役割の把握、入居者の情報の把握しやすさ、ケアホームスタッフによる入居者のフォローアップなどが挙げられます。また、入居者が薬を飲みにくいことも挙げられました。

要因の大半が人間関係の影響であることを示唆していることから、どのような関わり方をするのかが重要であると考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ クラスターランダム化比較試験の結果、ケアホーム内での薬剤師独立処方権による減処方への関与は、複数の障壁と成功要因に影響されていることが明らかとなった。

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