看護師とプライマリ・ケア医による高齢患者への不適切な処方頻度の違いは?(データベース研究; Ann Intern Med. 2023)

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米国における看護師とプライマリ・ケア医の不適切処方頻度に差はあるのか?

米国等では、医師の指示を受けずに一定レベルの診断や治療などを行うことができる「Nurse Practitioner(ナース・プラクティショナー, 診療看護師)」という看護の資格があり、医療現場で活躍しています。具体的には、医師の指示によらず独自に薬剤を処方できるよう法制化されている制度です。

ナース・プラクティショナーは、1965年にアメリカで始まった制度であり、現在、約25万人以上のNPが自律的に活動しています(5年ごとに免許更新が行われている)。しかし、ナース・プラクティショナー制度はケアの質に悪影響を及ぼすという批判があります。

そこで今回は、ナース・プラクティショナーとプライマリケア医の不適切な処方率を比較したデータベース研究の結果をご紹介します。

本研究では、年間100例以上の患者に処方箋を書いた23,669例のナース・プラクティショナーと50,060例のプライマリケア医について、不適切な処方の割合を算出し、診療経験、患者数とリスク、臨床環境、年、州について調整した上で比較検討されました。

試験設定は、2019年までにナース・プラクティショナーに処方権限を認めた29の州、対象は2013年から2019年の65歳以上のメディケアパートD受給者でした。

不適切な処方は、米国老年医学会のビアーズ基準に従って、通常65歳以上の成人に処方すべきでない薬剤と定義されました。

試験結果から明らかになったことは?

調整オッズ比
(95%CI)
ナース・プラクティショナー vs. プライマリケア医
不適切処方の平均率 0.99(0.97~1.01

ナース・プラクティショナーとプライマリケア医による不適切処方の平均率はほぼ同じでした(調整オッズ比 0.99、95%CI 0.97~1.01;処方100件あたりの粗率 1.63 vs. 1.69;調整率 1.66 vs. 1.68)。

しかし、不適切な処方の割合が最も高かった臨床医と最も低かった臨床医では、ナース・プラクティショナーの割合が高いことが示されました。

いずれのタイプの開業医においても、州をまたがる不適切処方率の相違は、州内のこれらの開業医間の相違よりも大きい傾向が示されました。

コメント

日本とは異なり、米国をはじめとする国々では、診療看護師(ナース・プラクティショナー)が一部の薬剤の処方を行うことができます。高齢者における不適切処方は、患者転帰に影響することから、発生要因と対策の立案が求められます。

さて、本試験結果によれば、ナース・プラクティショナー(診療看護師)が高齢患者に不適切な処方を行う可能性は、医師よりも高くありませんでした。

医師の過重労働については、米国でも問題視されています。タスクシフトが進んでいる国々での研究結果を参考にすることで、日本に活かせる対策が立てやすくなるのではないでしょうか。

続報に期待。

woman in medical frontliner uniform

✅まとめ✅ ナース・プラクティショナー(診療看護師)が高齢患者に不適切な処方を行う可能性は、医師よりも高くなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:米国の多くの州では、ナース・プラクティショナー(NP)が独自に薬剤を処方できるよう法制化している。このような動きはケアの質に悪影響を及ぼすという批判がある。

目的:NPとプライマリケア医の不適切な処方率を比較すること。

試験デザイン:年間100例以上の患者に処方箋を書いた23,669例のNPと50,060例のプライマリケア医について、不適切な処方の割合を算出し、診療経験、患者数とリスク、臨床環境、年、州について調整した上で比較した。

試験設定:2019年までにNPに処方権限を認めた29の州。

患者:2013年から2019年の65歳以上のメディケアパートD受給者。

測定:不適切な処方(米国老年医学会のBeers Criteria ビアーズ基準に従って、通常65歳以上の成人に処方すべきでない薬剤と定義)。

結果:NPとプライマリケア医による不適切処方の平均率はほぼ同じであった(調整オッズ比 0.99、95%CI 0.97~1.01;処方100件あたりの粗率 1.63 vs. 1.69;調整率 1.66 vs. 1.68)。しかし、不適切な処方の割合が最も高かった臨床医と最も低かった臨床医では、NPの割合が高かった。いずれのタイプの開業医においても、州をまたがる不適切処方率の相違は、州内のこれらの開業医間の相違よりも大きい傾向があった。

限界:Beers Criteriaは、選択された薬剤のサブセットの妥当性を扱うものであり、臨床環境によっては有効でない可能性がある。

結論:ナース・プラクティショナーが高齢患者に不適切な処方を行う可能性は、医師よりも高くなかった。処方を行うすべての臨床医のパフォーマンスを改善するための広範な努力は、医師に独立した処方権限を制限するよりも効果的である可能性がある。

主な資金源:ロバート・ウッド・ジョンソン財団および全米科学財団

引用文献

Inappropriate Prescribing to Older Patients by Nurse Practitioners and Primary Care Physicians
Johnny Huynh et al. PMID: 37871318 DOI: 10.7326/M23-0827
Ann Intern Med. 2023 Oct 24. doi: 10.7326/M23-0827. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37871318/

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