非弁膜症性心房細動患者における経口抗凝固薬投与用量と治療アドヒアランスの関連性は?(後向き研究; JAMA Netw Open. 2023)

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出血リスクの高いNVAF患者におけるDOACの適応外用量は服薬アドヒアランスの低さと関連する?

出血リスクの高い非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に対しては、直接経口抗凝固薬(DOAC)の減量投与が承認されているます。しかし、特に腎機能障害患者における投与量の正確性についてはほとんど知られていない。

そこで今回は、DOAC過少投与が長期的な抗凝固療法アドヒアランスと関連するかどうかを明らかにsた後向き研究の結果をご紹介します。

このレトロスペクティブコホート解析では、Symphony Health請求データセットのデータが使用されました。この全国的な医療・処方データセットは、米国の2億8,000万人の患者と180万人の処方者から構成されています。対象患者は、2015年1月~2017年12月の間にNVAFに関する請求が2件以上ありました。本論文の解析対象期間は2021年2月~2022年7月でした。

本試験では、CHA2DS2-VAScスコアが2以上の患者で、DOACの投与量を減量した患者と減量しなかった患者のうち、承認時(ラベル)に指定された基準を満たした患者と満たさない患者が対象となりました。

本試験の主要アウトカムはロジスティック回帰モデルにより、適応外投与(すなわち、米国食品医薬品局(FDA)の添付文書で推奨されていない投与)に関連する因子クレアチニンクリアランスと推奨DOAC投与量との関連DOACの過少投与および過剰投与と1年間のアドヒアランスとの関連を検討しました。

試験結果から明らかになったことは?

対象となった患者86,919例(年齢中央値 74[IQR 67〜80]歳;男性 43,724例[50.3%];白人 82,389例[94.8%])のうち、7,335例(8.4%)が適切な減量を受け、10,964例(12.6%)がFDAの推奨と一致しない過少用量を受け、減量を受けた患者の59.9%(18,299例中10,964例)が不適切な用量を受けたことになります。

適応外用量のDOACを投与された患者は、適切な用量(FDAの添付文書で推奨されている用量)を投与された患者と比較して、年齢が高く(年齢中央値 79[IQR 73〜85]歳 vs. 73[66〜79]歳)、CHA2DS2-VAScスコアが高かいことが明らかとなりました(中央値 5[IQR 4〜6] vs. 4[IQR 3〜6])。腎機能障害、年齢、心不全、および処方した臨床医が外科専門医であることは、FDAの添付文書で推奨されていない投与量と関連していました。クレアチニンクリアランスが毎分60mL未満のDOAC服用患者(9,792例[31.9%])のほぼ3分の1は、FDAの推奨に合致しない過小投与または過剰投与を受けていました。

過少用量適正用量過少用量DOACの調整オッズ比
(95%CI)
vs. 適正用量
服薬アドヒアランスの低さ23.0%25.2%0.88(0.83〜0.94
1年後までに抗凝固療法を中止するリスク26.1%21.4%1.20(1.13〜1.28
過剰用量適正用量過剰用量DOACの調整オッズ比
(95%CI)
vs. 適正用量
服薬アドヒアランスの低さ23.7%25.2%0.87(0.79〜0.96
1年後までに抗凝固療法を中止するリスク26.0%21.3%1.16(1.05〜1.28
用量用量適正用量DOACの調整オッズ比
(95%CI)
vs. 適正最大用量
服薬アドヒアランスの低さ25.2%25.3%0.92(0.85〜1.01)
1年後までに抗凝固療法を中止するリスク25.3%20.9%1.06(0.98〜1.17)

クレアチニンクリアランスが10単位低下するごとに、患者が適切な用量のDOACを投与される確率は21%低下しました。過少用量のDOACは服薬アドヒアランスの低さと関連し(調整オッズ比 0.88、95%CI 0.83〜0.94)、1年後までに抗凝固療法を中止するリスクが高いことが示されました(調整オッズ比 1.20、95%CI 1.13〜1.28)。

コメント

DOACは効果発現時間の速さや食事に影響されないことから、ビタミンK拮抗薬であるワルファリンに代わり使用されるようになっています。しかし、DOACはモニタリング指標が限られることから、エンピリックに減量や増量が行われることがあります。

出血リスクの高い患者においては、適応外の過度な減量が行われる可能性が高く、ベネフィットが小さいとする報告が多くなされています。しかし、服薬アドヒアリンスや治療中止リスクとの関連性については明らかになっていません。

さて、米国のデータベースを利用した後向き研究の結果、FDAの添付文書勧告に従わないDOAC投与用量(過剰あるいは過少)は、相当数のNVAF患者で認められ、腎機能の悪い患者ほど頻度が高く、長期抗凝固療法の一貫性の低さと関連していました。過剰用量であっても過少用量であっても服薬アドヒアランスの低下リスク、治療中止リスクと相関が示されています。

あくまでも仮説生成的な結果ではありますが、やはり承認用量内の適正用量による投与設計が求められます。とはいえ、まだまだ過少投与が行われている現状があるから、クリニカルプラクティスに影響を与えるような試験結果を提示する必要があると考えられます。具体的にはモニタリング指標の検証、ランダム化比較試験による過少投与が患者予後に与える影響について検証した結果などが有用でしょう。

続報に記載。

chess pieces on a scale

✅まとめ✅ 経口抗凝固薬の投与用量に関する本試験において、FDAの添付文書勧告に従わないDOAC投与用量(過剰あるいは過少)は、相当数のNVAF患者で認められ、腎機能の悪い患者ほど頻度が高く、長期抗凝固療法の一貫性の低さと関連していた。

次のページに根拠となった論文情報を掲載しています。

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