慢性閉塞性肺疾患の慢性的な呼吸苦に対する低用量徐放性モルヒネの有効性はどのくらい?(RCT; BEAMS試験; JAMA 2022)

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モルヒネはCOPDの呼吸苦を改善するのか?

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では、慢性的な息切れ(呼吸苦)がよく見られます。定期的な低用量徐放性モルヒネが呼吸苦を緩和する可能性がありますが、充分に検討されていないため、その有効性と投与量に関するエビデンスが求められています。

そこで今回は、COPD患者において、1週間の治療後、異なる用量の徐放性モルヒネが最悪の呼吸苦に対してどのような影響を及ぼすかを明らかにしたBEAMS試験の結果をご紹介します。

本試験は、オーストラリアの20施設で実施されたCOPDおよび慢性的な呼吸苦(修正医療研究評議会スコア3~4と定義)を有する人々を含む多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化臨床試験であり、2016年9月1日から2019年11月20日の間に登録され、2019年12月26日までフォローアップされました。

試験参加者は、第1週に経口徐放性モルヒネ8mg/日、16mg/日またはプラセボに1:1:1にランダムに割り付けられました。第2週と第3週の開始時に、前週の投与量に追加する徐放性モルヒネ8mg/日、またはプラセボに1:1でランダムに割り付けられました。

本試験の主要アウトカムは、ベースライン(-3 ~ -1日目)の平均スコアと治療1週間後(5~7日目)の平均スコアを用いた数値評価スケール(スコア範囲:0[なし]~10[最悪または最も強い])での最悪の呼吸苦の強さの変化で、8mg/日および16mg/日の徐放性モルヒネ群とプラセボ群の比較でした。副次的評価項目として、アクチグラフを用いた1日の歩数のベースライン(-1日目)から3週目(19~21日目)の平均歩数までの変化を検討しました。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化された160例のうち、156例が一次解析に含まれ(年齢中央値 72歳[IQR 67~78歳]、48%が女性)、138例(88%)が第1週目の治療を完了しました(モルヒネ8mg/日群:48例、モルヒネ16mg/日群:43例、プラセボ群:47例)。

ベースラインから1週目における最悪の呼吸苦の強さの変化
モルヒネ8mg/日群 vs. プラセボ群平均差 -0.3(95%CI -0.9~0.4
モルヒネ16mg/日群 vs. プラセボ群平均差 -0.3(95%CI -1.0~0.4

1週目における最悪の呼吸苦の強さの変化は、モルヒネ8mg/日群とプラセボ群(平均差 -0.3、95%CI -0.9~0.4)、モルヒネ16mg/日群とプラセボ群(平均差 -0.3、95%CI -1.0~0.4)で有意差はありませんでした。

ベースラインから3週目における1日の平均歩数の変化
モルヒネ8mg/日群 vs. プラセボ群平均差 -1453(95%CI -3310 ~ 405)
モルヒネ16mg/日群 vs. プラセボ群平均差 -1312(95%CI -3220~596)
モルヒネ24mg/日群 vs. プラセボ群平均差 -692(95%CI -2553~1170)
モルヒネ32mg/日群 vs. プラセボ群平均差 -1924(95%CI -47 699~921)

3週目の副次的アウトカムである1日の平均歩数の変化は、モルヒネ8mg/日群とプラセボ群との間(平均差 -1453、95%CI -3310 ~ 405)、モルヒネ16mg/日群とプラセボ群との間(平均差 -1312、95%CI -3220~596)、モルヒネ24mg/日群とプラセボ群(平均差 -692、95%CI -2553~1170)、モルヒネ32mg/日群とプラセボ群(平均差 -1924、95%CI -47 699~921)で群間に有意な差は認められませんでした。

コメント

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では、慢性的な息切れ(呼吸苦)がよく見られますが、この呼吸苦に対してモルヒネが有効であるのかについては充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、COPDで重度の慢性的な呼吸苦を有する集団において、毎日の低用量徐放性モルヒネは、プラセボと比較して、治療1週間後の最悪の呼吸苦の強さを有意に減少させることはありませんでした。また、ベースラインから3週目における1日の平均歩数の変化についても、プラセボと差がありませんでした。

COPD患者の呼吸苦に対する低用量徐放性モルヒネのルーティン使用は臨床的意義が少ないようです。

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✅まとめ✅ COPDで重度の慢性的な呼吸苦を有する集団において、毎日の低用量徐放性モルヒネは、プラセボと比較して、治療1週間後の最悪の呼吸苦の強さを有意に減少させることはなかった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では、慢性的な息切れ(呼吸苦)がよく見られる。定期的な低用量徐放性モルヒネが呼吸苦を緩和する可能性があるが、その有効性と投与量に関するエビデンスが必要である。

目的:COPD患者において、1週間の治療後、異なる用量の徐放性モルヒネが最悪の呼吸苦に対してどのような影響を及ぼすかを明らかにする。

試験デザイン、設定、参加者:オーストラリアの20施設で実施されたCOPDおよび慢性的な呼吸苦(修正医療研究評議会スコア3~4と定義)を有する人々を含む多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化臨床試験。2016年9月1日から2019年11月20日の間に登録され、2019年12月26日までフォローアップされた。

介入:参加者は、第1週に経口徐放性モルヒネ8mg/日、16mg/日またはプラセボに1:1:1にランダムに割り付けられた。第2週と第3週の開始時に、前週の投与量に追加する徐放性モルヒネ8mg/日、またはプラセボに1:1でランダムに割り付けられた。

主要アウトカムと測定法:主要アウトカムは、ベースライン(-3 ~ -1日目)の平均スコアと治療1週間後(5~7日目)の平均スコアを用いた数値評価スケール(スコア範囲:0[なし]~10[最悪または最も強い])での最悪の呼吸苦の強さの変化で、8mg/日および16mg/日の徐放性モルヒネ群とプラセボ群の比較であった。副次的評価項目として、アクチグラフを用いた1日の歩数のベースライン(-1日目)から3週目(19~21日目)の平均歩数までの変化を検討した。

結果:ランダム化された160例のうち、156例が一次解析に含まれ(年齢中央値 72歳[IQR 67~78歳]、48%が女性)、138例(88%)が第1週目の治療を完了した(モルヒネ8mg/日群:48例、モルヒネ16mg/日群:43例、プラセボ群:47例)。第1週における最悪の呼吸苦の強さの変化は、モルヒネ8mg/日群とプラセボ群(平均差 -0.3、95%CI -0.9~0.4)、モルヒネ16mg/日群とプラセボ群(平均差 -0.3、95%CI -1.0~0.4)で有意差はなかった。3週目の副次的アウトカムである1日の平均歩数の変化は、モルヒネ8mg/日群とプラセボ群との間(平均差 -1453、95%CI -3310 ~ 405)、モルヒネ16mg/日群とプラセボ群との間(平均差 -1312、95%CI -3220~596)、モルヒネ24mg/日群とプラセボ群(平均差 -692、95%CI -2553~1170)、モルヒネ32mg/日群とプラセボ群(平均差 -1924、95%CI -47 699~921)で群間に有意な差は認められなかった。

結論と関連性:COPDで重度の慢性的な呼吸苦を有する集団において、毎日の低用量徐放性モルヒネは、治療1週間後の最悪の呼吸苦の強さを有意に減少させることはなかった。これらの知見は、呼吸苦を緩和するためにこの用量の徐放性モルヒネを使用することを支持しない。

臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier: NCT02720822

引用文献

Effect of Regular, Low-Dose, Extended-release Morphine on Chronic Breathlessness in Chronic Obstructive Pulmonary Disease: The BEAMS Randomized Clinical Trial
Magnus Ekström et al. PMID: 36413230 DOI: 10.1001/jama.2022.20206
JAMA. 2022 Nov 22;328(20):2022-2032. doi: 10.1001/jama.2022.20206.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36413230/

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