医療従事者におけるCOVID-19予防のための医療用マスクとN95マスク、どちらが優れていますか?(RCT; Ann Intern Med. 2022)

healthcare worker in a mask putting on gloves 09_感染症
Photo by Gustavo Fring on Pexels.com
この記事は約6分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

COVID-19予防に対する医療用マスク vs. N95マスク

医療用マスクがN95マスクと比較してCOVID-19に対して同程度の防御効果を示すかどうかは不明です。そこで今回は、日常ケアを行う医療従事者において、医療用マスクがN95マスクと比較してCOVID-19の予防効果が劣らないかどうかを明らかにしたランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本試験は、多施設、ランダム化、非劣性試験であり、2020年5月4日から2022年3月29日まで、カナダ、イスラエル、パキスタン、エジプトの29の医療施設で実施されました。本試験の対象は、COVID-19が疑われる、または確認された患者に直接ケアを提供した医療従事者1,009例でした。

本試験の主要評価項目は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)試験で確認されたCOVID-19でした。

試験結果から明らかになったことは?

ITT解析医療用マスク群N95マスク群ハザード比 HR
(95%CI)
RT-PCRで確認されたCOVID-19発生497例中52例
(10.46%)
507例中47例
(9.27%)
HR] 1.14
0.77~1.69

Intention-to-treat解析では、医療用マスク群497例中52例(10.46%)に対してN95マスク群507例中47例(9.27%)でRT-PCRで確認されたCOVID-19が発生しました(ハザード比[HR] 1.14、95%CI 0.77~1.69)。

国別の予定外のサブグループ解析では、医療用マスク群とN95マスク群で、RT-PCRで確認されたCOVID-19は、カナダでは131例中8例(6.11%) vs. 135例中3例(2.22%)(HR 2.83、CI 0.75〜10.72)、イスラエルでは17例中6例(35.29%) vs. 17例中4例(23.53%)(HR 1.54、CI 0.43〜5.49)、パキスタンでは92例中3例(3.26%) vs. 94例中2例(2.13%)(HR 1.50、CI 0.25〜8.98)、エジプトでは257例中35例(13.62%) vs. 261例中38例(14.56%)(HR 0.95、CI 0.60〜1.50] )であり、N95マスク群に比べ、医療用マスク群での発生が多いことが示されました。

介入に関連する有害事象は、医療用マスク群で47件(10.8%)、N95マスク群で59件(13.6%)報告されました。

コメント

SARS-CoV-2によるCOVID-19発症は世界的な流行を示しており、終息は見込めません。そのため、基本的な感染予防対策の実施が求められます。感染予防対策としてマスク着用が求められますが、そのマスクの比較検討は充分に行われていません。

さて、本試験ん結果によれば、COVID-19患者に日常的なケアを提供した医療従事者において、COVID-19発生の全体の推定値は、N95マスクと、医療用マスクで差は認められませんでした。しかし、COVID-19発生数は医療用マスクで多いことが示されました。

医療資源が限られていることから、感染リスクの低い環境では医療用マスクで充分なのかもしれません。N95マスクを必要とする場面についての検証が求められます。

続報に期待。

covid test in hand

✅まとめ✅ COVID-19患者に日常的なケアを提供した医療従事者において、COVID-19発生の全体の推定値は、N95マスクと、医療用マスクで差は認められなかったが、COVID-19発生数は医療用マスクの方が多かった。

根拠となった試験の抄録

背景:医療用マスクがN95マスクと比較してCOVID-19に対して同程度の防御効果を示すかどうかは不明である。

目的:日常ケアを行う医療従事者において、医療用マスクがN95マスクと比較してCOVID-19の予防効果が劣らないかどうかを明らかにすること。

試験デザイン:多施設、ランダム化、非劣性試験(ClinicalTrials.gov:NCT04296643)

試験設定:2020年5月4日から2022年3月29日まで、カナダ、イスラエル、パキスタン、エジプトの29の医療施設

試験参加者:COVID-19が疑われる、または確認された患者に直接ケアを提供した医療従事者1,009例。

介入:医療用マスク vs. フィットテスト済みN95レスピレータの10週間の使用、および各施設で実施された方針であるユニバーサルマスクの使用。

測定方法:主要評価項目は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)試験で確認されたCOVID-19であった。

結果:intention-to-treat解析では、医療用マスク群497例中52例(10.46%)に対してN95マスク群507例中47例(9.27%)でRT-PCRで確認されたCOVID-19が発生した(ハザード比[HR] 1.14、95%CI 0.77~1.69)。国別の予定外のサブグループ解析では、医療用マスク群とN95マスク群で、RT-PCRで確認されたCOVID-19は、カナダでは131例中8例(6.11%) vs. 135例中3例(2.22%)(HR 2.83、CI 0.75〜10.72)、イスラエルでは17例中6例(35.29%) vs. 17例中4例(23.53%)(HR 1.54、CI 0.43〜5.49)、パキスタンでは92例中3例(3.26%) vs. 94例中2例(2.13%)(HR 1.50、CI 0.25〜8.98)、エジプトでは257例中35例(13.62%) vs. 261例中38例(14.56%)(HR 0.95、CI 0.60〜1.50] )であり、N95マスク群に比べ、医療用マスク群での発生が多かった。介入に関連する有害事象は、医療用マスク群で47件(10.8%)、N95マスク群で59件(13.6%)報告された。

試験の制限:家庭や地域社会での曝露によるSARS-CoV-2の獲得の可能性、国による不均一性、効果の推定値の不確実性、自己申告のアドヒアランスの違い、ベースライン抗体の違い、循環変異体およびワクチン接種の国による違い。

結論:COVID-19患者に日常的なケアを提供した医療従事者において、全体の推定値は、N95マスクに対するRT-PCRで確認されたCOVID-19のHRと比較して、医療用マスクに対する2倍のハザードが除外された。サブグループの結果は国によって異なり、治療効果の異質性により、全体の推定値は個々の国に適用できない可能性がある。

主な資金源:カナダ保健研究所、世界保健機関、Juravinski Research Institute

引用文献

Medical Masks Versus N95 Respirators for Preventing COVID-19 Among Health Care Workers : A Randomized Trial
Mark Loeb et al. PMID: 36442064 PMCID: PMC9707441 DOI: 10.7326/M22-1966
Ann Intern Med. 2022 Nov 29;M22-1966. doi: 10.7326/M22-1966. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36442064/

コメント

タイトルとURLをコピーしました