教育とフィードバックからなる多因子介入は一般開業医によるベンゾジアゼピン処方を減らせますか?(クラスターRCT; BENZORED試験; PLoS Med. 2022)

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教育とフィードバックからなる多因子介入は処方医に行動変容を促せるのか?

臨床医は主に、不安や不眠症の治療、またはうつ病の治療補助薬としてベンゾジアゼピン(BZDs)を処方しています(BNF 64 the edition)。 診療ガイドラインでは、BZDsの短期使用を推奨しています(NICE2004NICE2014)。これは、長期間のBZDs使用は耐性と依存につながり、傾眠、一日の眠気、記憶障害(PMID: 23045258PMID: 26016483PMID: 29273607)、大腿骨近位部骨折の原因となる転倒の増加(PMID: 24810612PMID: 22566242PMID: 28448593)、自動車事故などの多くの副作用と関連しているためです(PMID: 9802269PMID: 21368756)。 他の研究では、長期的なBZDの使用と死亡率との関連についての懸念が表明されています(PMID: 24647164PMID: 22371848)。 しかし、多くの臨床医はBZDsを過剰に処方し、慢性的な使用となるのが一般的です(PMID: 19100149PMID: 31088561)。BZDsおよびBZDs様薬剤(Z-Drugs, Zドラッグ)の全体的な処方数は、欧州では過去10年間で緩やかに減少しています(PMID: 23114457)。 BZDsの使用率は国によって大きく異なり、イギリス、オランダ、ドイツでは15DDDs*未満/人口1,000例/日、アイスランド、ポルトガル、スペインでは85DDDs以上/人口1,000例/日となっています(OECD)。 スペイン医療機関(AEMPS)は、2018年に平均87.6DDD/人口1,000例/日を報告しました(AEMPS)。最新のスペイン健康調査によると、スペインの人口の平均10%が調査前の2週間以内にBZDsを使用したこと、65歳以上の女性が最も多く使用していました(36%)(ENS)。ほとんどのBZDsは、主に開業医(general practioner, GP)によって処方されています。 BZDsの処方が診療所によって大きく異なること(PMID: 19520017)は、BZDsの処方に関する地域の医療政策、医療現場の内部状況、BZDsの利点とリスクに関するGPの信念と態度から説明することができます(PMID: 27282559PMID: 24330388PMID: 30606122)。 また、薬物依存が進行している患者はGPにとって大きな挑戦となる可能性があります(PMID: 27282559PMID: 24330388PMID: 20353661PMID: 31049408)。GPはBZDs長期使用者におけるBZDs使用量を徐々に減らしていくために様々な戦略をとることができます(PMID: 16946355PMID: 14609970PMID: 16838826PMID: 18983627PMID: 17132385PMID: 24526745PMID: 31985127)。
*1日定義用量(defined daily doses, DDDs:1日仮想平均維持量)

処方への最も一般的な対策としては、処方に適した患者の特定、GPと患者への教育および開発トレーニングの提供、BZDsの段階的減量による調整などがあります(PMID: 34489296PMID: 30345166)。 最も一般的な実施方法は、印刷された教育資料、教育会議、教育的アウトリーチ、地域のオピニオンリーダー、監査とフィードバック、コンピュータによるリマインダー、およびオーダーメイドの介入を使用して専門家の行動変容を目標とすることです(PMID: 22651257PMID: 19261953PMID: 17943742PMID: 19370580)。 監査とフィードバックと教育ミーティングは、品質向上策として臨床現場で広く利用されています。220件のランダム化比較試験を調査した2つの系統的レビューでは、これらが医療従事者の行動変容にわずかながら中程度の影響を与えたことが示されました。 しかし、その影響と実施された範囲には大きなばらつきがありました(PMID: 19370580PMID: 22696318)。一部の著者は、介入の開発中に効果と実施段階をブレンドすることで、研究結果の臨床実践への反映を改善できることを示唆しています(PMID: 19664226PMID: 22310560)。

そこで今回は、BZDsの適切な処方に関するワークショップ、およびBZDsの処方に関する毎月のフィードバックとサポートウェブサイトへのアクセスによる、個々の患者における段階的な減量による長期BZDs使用からの漸減を行い、700例のGP(対照群 351例、介入群 349例)を対象に、12ヵ月後の住民1,000例あたりの1日定義用量(defined daily doses, DDDs:1日仮想平均維持量)単位のBZD処方の変化を比較したBENZORED Phase IV試験の結果をご紹介します。本試験は、有効性と実施に関するハイブリッド試験で、BZDsの適切な使用に関するGPトレーニングワークショップにおいて、介入の有効性と実施について評価しました。 また、本研究は、一次医療現場における本介入の実施に影響を及ぼす障壁や要因についても明らかにすることを目的として実施されました。

試験結果から明らかになったことは?

49例のGP(介入群 21例、対照群 28例)がフォローアップから外れました。しかし、ITT解析にはすべてのGPが含まれました。

介入群
(vs. 対照群)
BZDsの総処方量平均差:-3.24DDD/住民1,000例/日
(95%CI -4.96 〜 -1.53)
p<0.001
BZDs長期使用者全体の調整済み絶対差:-0.36
(95%CI -0.55 〜 -0.16
p>0.001
65歳以上のBZDs長期使用者調整済み絶対差:-0.87
(95%CI -1.44 〜 -0.30
p=0.003)

12ヵ月後、介入群では対照群に比べ、BZDsの総処方量が統計的に有意に減少していました(平均差:-3.24DDD/住民1,000例/日、95%信頼区間(CI) -4.96 〜 -1.53、p<0.001)。また、介入群では長期使用者の数が少ないことが示されました。全体の調整済み絶対差は-0.36(95%CI -0.55 〜 -0.16、p>0.001)、65歳以上の長期使用者の調整済み絶対差は-0.87(95%CI -1.44 〜 -0.30、p=0.003)でした。

このクラスター計画臨床試験の主要な限界は、いくつかのベースライン特性のアンバランスでした。対照群ではベースラインのBZDs処方率が高く、介入群では女性、博士号取得のGP、GPレジデントのトレーナーがより多いことが示されました。

コメント

ベンゾジアゼピン系薬は、効果を実感しやすいことから、多くの患者で使用されています。しかし、副作用、依存性、耐性、長期使用の影響があることから、必要最小限の使用が求められます。そのため、ベンゾジアゼピン系薬の継続的な漸減が求められますが、患者および処方医の行動変容を促すことは容易ではありません。

さて、本試験結果によれば、BZDsの適切な処方に関するワークショップ、およびBZDsの処方に関する毎月のフィードバックとサポートウェブサイトへのアクセスによる段階的な減量による長期BZDs使用からの漸減の効果を検証したところ、介入群では対照群に比べ、12ヵ月後のBZDsの総処方量が統計的に有意に減少していました。平均差は-3.24DDD/住民1,000例/日でした。また、わずかではあるものの65歳以上を含むBZDs長期使用者の割合が有意に少ないことが示されました。

介入にはかなりのコストを要することが予想されますが、やはり、このぐらい厳格に実施しないとヒトに行動変容を促すのは困難なのかもしれません。

総処方量だけでなく長期使用者が減ることは評価できますが、患者の状態変化についても把握しておきたいところです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 一般開業医を対象とし、教育会議、ベンゾジアゼピン処方に関するフィードバック、支援ウェブページを含む多因子介入により、ベンゾジアゼピン処方の統計的有意な減少および長期使用者の減少につながった。

根拠となった試験の抄録

背景:現在のベンゾジアゼピン(BZD)処方ガイドラインでは、依存、認知障害、転倒・骨折のリスクを最小限に抑えるために短期間の使用を推奨している。しかし、多くの臨床医はBZDを過剰に処方しており、患者の慢性的な使用は一般的である。一般開業医(GP)による介入がBZDsの処方および長期使用を減らす効果に関するエビデンスは限られている。我々は、BZDの処方と長期使用者の有病率を減少させることを目的としたGP向けの多成分介入の有効性を評価することを目指した。

方法:2016年9月から2018年5月まで、スペインの3つの保健地区(バレアレス諸島、カタルーニャ、バレンシア共同体のプライマリーヘルスセンター[PHC])で多施設2群、クラスターランダム化対照試験を実施した。81施設のPHCは、介入群(GPs 41,372例)と対照群(GPs 40,377例)にランダムに割り付けられた。GPは割り付けに対して盲検化されていなかったが、薬剤師、研究者、試験統計学者は割り付け群に対して盲検化された。介入内容は、BZDsの適切な処方に関するワークショップ、およびBZDsの処方に関する毎月のフィードバックとサポートウェブサイトへのアクセスによる、段階的な減量による長期BZDs使用からの漸減であった。
教育会議は、専門家の実践と患者アウトカムを改善することを目的とした継続的な医学教育にのみ使用された。 試験期間中、介入グループのGPは、一次医療機関(primary health centers, PHC)で2時間の対面式教育ワークショップを受けた。これらの介入は、BZDsの処方および減処方に熟練したGPである研究者によって行われ、BZD s処方の適切な手順に関するトレーニングが提供された。このトレーニングには、BZDsの薬理特性(生物学的半減期と各種BZDsの等価用量)、処方の適応、推奨使用期間、副作用、依存性、耐性、普及、長期使用の影響に関する教育的情報が含まれた。また、BZDsの漸減と実際の臨床例に基づいたBZDs中止のための構造化されたトレーニングを受けた。この監査とフィードバックは、「フィードバック介入理論」に基づいており、特定期間の医療臨床パフォーマンスの要約を提供し、医療従事者の実務を変えることを目的としている。BZD処方のフィードバックは、各GPの1ヵ月のBZDs処方率(1,000例/日のDDD)を12ヵ月間プロットした線グラフと、PHCと健康地区のBZDs処方率をプロットした線グラフの2つで構成された。このウェブサイトには、ビデオ、実践的なケースの説明、BZDs、Z薬、睡眠衛生に関する患者向け情報リーフレット(http://benzored.es)などが含まれている。
700例のGP(対照群 351例、介入群 349例)を対象に、12ヵ月後の住民1,000例あたりの1日定義用量(defined daily doses, DDDs:1日仮想平均維持量)単位のBZD処方の変化を比較した。副次的アウトカムとして、長期使用者(6ヵ月以上)の割合と65歳以上の長期使用者の割合の2つを設定した。すべての臨床的アウトカムの評価には、Intention-to-treat(ITT)分析を用いた。

結果:49例のGP(介入群 21例、対照群 28例)がフォローアップから外れた。しかし、ITT解析にはすべてのGPが含まれた。12ヵ月後、介入群では対照群に比べ、BZDの総処方量が統計的に有意に減少していた(平均差:-3.24DDD/住民1,000例/日、95%信頼区間(CI) -4.96 〜 -1.53、p<0.001)。また、介入群では長期使用者の数が少なかった。全体の調整済み絶対差は-0.36(95%CI -0.55 〜 -0.16、p>0.001)、65歳以上の長期使用者の調整済み絶対差は-0.87(95%CI -1.44 〜 -0.30、p=0.003)であった。このクラスター計画臨床試験の主要な限界は、いくつかのベースライン特性のアンバランスである。対照群ではベースラインのBZD処方率が高く、介入群では女性、博士号取得のGP、GPレジデントのトレーナーがより多かった。

結論:GPを対象とし、教育会議、BZD処方に関するフィードバック、支援ウェブページを含む多因子介入により、BZD処方の統計的有意な減少および長期使用者の減少につながった。効果の大きさは小さいが、一般人口におけるBZDの高い使用率は、この介入の大規模な実施が多くの患者の健康に良い影響を与える可能性を示唆している。

試験登録:ISRCTN ISRCTN28272199

引用文献

Evaluation of a multicomponent intervention consisting of education and feedback to reduce benzodiazepine prescriptions by general practitioners: The BENZORED hybrid type 1 cluster randomized controlled trial
Caterina Vicens et al. PMID: 35522626 PMCID: PMC9075619 DOI: 10.1371/journal.pmed.1003983
PLoS Med. 2022 May 6;19(5):e1003983. doi: 10.1371/journal.pmed.1003983. eCollection 2022 May.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35522626/

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