コリンエステラーゼ阻害薬と認知障害患者における転倒、失神、外傷との関連性は?(SR&MA; Age Ageing. 2023)

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コリンエステラーゼ阻害薬と転倒、失神、骨折、偶発的外傷との関連性はどのくらい?

コリンエステラーゼ阻害薬は、転倒リスクが高いことが多い神経認知障害患者の治療によく用いられています。これらの薬剤を効果的に使用するには、リスクとベネフィットを慎重に評価する必要がありますが、充分に検討されていません。

そこで今回は、神経認知障害患者におけるコリンエステラーゼ阻害薬と転倒、失神、骨折、偶発的外傷との関連性について明らかにすることを目的に実施されたメタ解析の結果をご紹介します。

本試験では、Embase、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index of Nursing and Allied Health Literature、AgeLineが2023年3月まで体系的に検索され、認知障害患者におけるコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)の安全性を検証したすべてのランダム化比較試験が特定されました。

メタ解析に必要な追加データについては、対応する著者に連絡しました。組み入れ基準は、認知症、パーキンソン病、軽度認知障害、外傷性脳損傷と診断された19歳以上の成人でした。データは前述の主要アウトカムについて重複して抽出され、すべてのアウトカムはランダム効果メタ解析を用いて解析されました。

試験結果から明らかになったことは?

53件の研究(ドネペジル30件、ガランタミン14件、リバスチグミン9件)が25,399例のデータを提供しました。

リスク比 RR
(95%信頼区間 CI)
転倒リスクの減少RR 0.84
0.73〜0.96
P=0.009
失神リスクの増加RR 1.50
1.02〜2.21
P=0.04

コリンエステラーゼ阻害薬はプラセボと比較して、転倒リスクの減少(リスク比[RR]0.84[95%信頼区間[CI]0.73〜0.96、P=0.009])および失神リスクの増加(RR 1.50[95%CI 1.02〜2.21、P=0.04])と関連していました。事故による負傷や骨折との関連はみられませんでした。

コメント

神経認知障害患者においては転倒リスクが高いことが報告されています。コリンエステラーゼ阻害薬が転倒リスクを低下できる可能性があることから実臨床で使用されていますが、安全性については充分に検討されていません。

さて、ランダム化比較試験53件のメタ解析の結果、神経認知障害を有する患者において、コリンエステラーゼ阻害薬は転倒リスクの低下、失神リスクの上昇と関連しており、事故による外傷や骨折との関連はみられませんでした。

そもそも失神とは、意識消失が長くても1、2分で、意識を取り戻すと完全に意識消失前の状態に戻る場合と定義されています。アルツハイマー型認知症に使用されるドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬は、中枢性と末梢性のコリン作動性神経に作用しますが、末梢性の副交感神経系の活性化の方が優位であり、徐脈や血圧低下が起こる可能性があります。事実、コリンエステラーゼ阻害薬を服用中の認知症患者を対象としたコホート研究において、コリンエステラーゼ阻害薬服用中の患者は、服用していない場合と比較して、失神が1.76倍、徐脈が1.69倍と有意に高いことが示されています。

以上を踏まえると、コリンエステラーゼ阻害薬の使用に伴い失神リスクが増加したとしても、全体的な転倒リスクは低下すると解釈できます。とはいえ、失神リスク増加に伴う転倒や外傷リスクの増加は継続的なモニタリング項目に該当すると考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ RCTのメタ解析の結果、神経認知障害を有する患者において、コリンエステラーゼ阻害薬は転倒リスクの低下、失神リスクの上昇と関連しており、事故による外傷や骨折との関連はみられなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:コリンエステラーゼ阻害薬は、転倒リスクが高いことが多い神経認知障害患者の治療によく用いられる。これらの薬剤を効果的に使用するには、リスクとベネフィットを慎重に評価する必要がある。

目的:神経認知障害患者におけるコリンエステラーゼ阻害薬と転倒、失神、骨折、偶発的外傷との関連を明らかにすること。

方法:Embase、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index of Nursing and Allied Health Literature、AgeLineを2023年3月まで体系的に検索し、認知障害患者におけるコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)のすべてのランダム化比較試験を特定した。メタ解析に必要な追加データについては、対応する著者に連絡した。組み入れ基準は、認知症、パーキンソン病、軽度認知障害、外傷性脳損傷と診断された19歳以上の成人であった。データは前述の主要アウトカムについて重複して抽出され、すべてのアウトカムはランダム効果メタ解析を用いて解析された。

結果:53件の研究(ドネペジル30件、ガランタミン14件、リバスチグミン9件)が25,399例のデータを提供した。コリンエステラーゼ阻害薬はプラセボと比較して、転倒リスクの減少(リスク比[RR]0.84[95%信頼区間[CI]0.73〜0.96、P=0.009])および失神リスクの増加(RR1.50[95%CI 1.02〜2.21、P=0.04])と関連していた。事故による負傷や骨折との関連はみられなかった。

結論:神経認知障害を有する患者において、コリンエステラーゼ阻害薬は転倒リスクの低下、失神リスクの上昇と関連しており、事故による外傷や骨折との関連はみられなかった。これらの知見は、臨床医がコリンエステラーゼ阻害薬のリスクとベネフィットをより適切に評価するのに役立つであろう。

キーワード:コリンエステラーゼ阻害薬、認知症、転倒、高齢者、失神、系統的レビュー。

引用文献

Cholinesterase inhibitors and falls, syncope and injuries in patients with cognitive impairment: a systematic review and meta-analysis
Manan Ahuja et al. PMID: 37993407 DOI: 10.1093/ageing/afad205
Age Ageing. 2023 Nov 2;52(11):afad205. doi: 10.1093/ageing/afad205.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37993407/

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