症候性心室頻拍に対する基質アブレーションと抗不整脈薬療法どちらが優れていますか?(RCT; SURVIVE-VT; J Am Coll Cardiol. 2022)

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症候性心室頻拍に対するカテーテルアブレーション vs. 抗不整脈薬

心室頻拍とは、連続で3拍以上にわたり心拍数が120/分以上となる状態です(通常は60〜100/分)。症状は持続時間に依存し、無症状から動悸、血行動態の破綻、さらには死に至ることもある状態です。

虚血性心筋症で植え込み型除細動器(ICD)を装着している患者において、カテーテルアブレーションと抗不整脈薬はICDショックを軽減することが示されていますが、最も有効な方法は未だ不明です。

そこで今回は、症候性心室頻拍(VT)を有するICD患者の第一選択治療として、カテーテルアブレーションと抗不整脈薬の有効性と安全性を比較検討したSURVIVE-VT試験の結果をご紹介します。

SURVIVE-VT(Substrate Ablation vs Antiarrhythmic Drug Therapy for Symptomatic Ventricular Tachycardia)は、適切なICDショックと虚血性心筋症を有する患者を含む多施設の前向きランダム化試験です。対象患者は、心内膜基質ベースの完全カテーテルアブレーションと抗不整脈療法(アミオダロン+β遮断薬、アミオダロン単独、ソタロール±β遮断薬)に1対1でランダムに割り付けられました。本試験の主要アウトカムは、心血管死、適切なICDショック、心不全悪化による予定外の入院、重度の治療関連合併症の複合でした。

試験結果から明らかになったことは?

本試験では、144例の患者(年齢中央値70歳、男性96%)が、カテーテルアブレーション(71例)または抗不整脈薬(73例)にランダムに割り付けられました。

アブレーション群抗不整脈薬群ハザード比
[HR]
主要アウトカム
(以下のアウトカムの複合)
心血管死
適切なICDショック
心不全悪化による予定外の入院
重度の治療関連合併症
28.2%46.6%HR 0.52
(95%CI 0.30〜0.90
P=0.021
心血管死HR 0.93
(95%CI 0.19〜4.61
P=0.929
心不全悪化による予定外の入院8例13例HR 0.56
(95%CI 0.23〜1.35
P=0.198
重度の治療関連合併症9.9%28.8%HR 0.30
(95%CI 0.13〜0.71)P=0.006

24ヵ月後、主要アウトカムはアブレーション群28.2%、抗不整脈薬群46.6%で発生しました(ハザード比[HR] 0.52、95%CI 0.30〜0.90、P=0.021)。この差は、重度の治療関連合併症の有意な減少によってもたらされました(9.9% vs. 28.8%、HR 0.30、95%CI 0.13〜0.71; P=0.006)。心不全悪化による予定外の入院はアブレーション群で8例、抗不整脈薬群で13例でした(HR 0.56、95%CI 0.23〜1.35; P=0.198)。心疾患による死亡率に差はありませんでした(HR 0.93、95%CI 0.19〜4.61; P=0.929)。

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心室から発生する頻脈には、心室頻拍と心室細動の2つがあります。心室頻拍は、脈が突然180/分など急激に速くなっているものの、心電図の波形が一定のものです。これに対し、心室細動は脈のかたちが一定ではなく不規則で、心室がけいれんを起こし脈拍数が300/分など数えられないくらい速くなった状態です。心室頻拍は血圧が保たれ、すぐには意識を失わないこともありますが、心室細動になると、発症から5~10秒で意識がなくなって失神し、その状態が続くとそのまま死亡してしまいます。心室頻拍の場合も、未治療の場合、心室細動に移行して、意識がなくなって突然死を起こすことがあります。

これまで心房細動患者、心不全合併の心房細動患者において、抗不整脈薬を用いた薬物治療よりもカテーテルアブレーションの方が優れている可能性が示されていますが、心室頻拍に対する治療比較は充分に行われていません。

さて、本試験結果によれば、虚血性心筋症で症候性心室頻拍を有するICD患者において、カテーテルアブレーションは抗不整脈薬と比較して、複合エンドポイント(心血管死、適切なICDショック、心不全による入院、重度の治療関連合併症)を減少させ、なかでも重度の治療関連合併症を大きく減少させました。

やや症例数が少なく、重度の治療関連合併症以外のアウトカムに群間差がなさそうであることから、追試が求められます。どのような患者でカテーテルアブレーションによる利益が最大化するのか検証が求められます。

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✅まとめ✅ 虚血性心筋症で症候性心室頻拍を有するICD患者において、カテーテルアブレーションは抗不整脈薬と比較して、複合アウトカムを有意に減少させた。なかでも重度の治療関連合併症を大きく減少させた。

根拠となった試験の抄録

背景:虚血性心筋症で植え込み型除細動器(ICD)を装着している患者において、カテーテルアブレーションと抗不整脈薬(AAD)はICDショックを軽減するが、最も有効な方法は未だ不明である。

目的:本試験では、症候性心室頻拍(VT)を有するICD患者の第一選択治療として、カテーテルアブレーションとAADの有効性と安全性を比較検討した。

方法:SURVIVE-VT(Substrate Ablation vs Antiarrhythmic Drug Therapy for Symptomatic Ventricular Tachycardia)は虚血性心筋症と適切なICDショックを有する患者を含む多施設の前向きランダム化試験である。患者は、心内膜基質ベースの完全カテーテルアブレーションと抗不整脈療法(アミオダロン+β遮断薬、アミオダロン単独、ソタロール±β遮断薬)に1対1でランダムに割り付けられた。
主要アウトカムは、心血管死、適切なICDショック、心不全悪化による予定外の入院、重度の治療関連合併症の複合とした。

結果:この試験では、144例の患者(年齢中央値70歳、男性96%)が、カテーテルアブレーション(71例)またはAAD(73例)にランダムに割り付けられた。24ヵ月後、主要アウトカムはアブレーション群28.2%、AAD群46.6%で発生した(ハザード比[HR] 0.52、95%CI 0.30〜0.90、P=0.021)。この差は、重度の治療関連合併症の有意な減少によってもたらされた(9.9% vs. 28.8%、HR 0.30、95%CI 0.13〜0.71; P=0.006)。心不全による入院はアブレーション群で8例、AAD群で13例であった(HR 0.56、95%CI 0.23〜1.35; P=0.198)。心臓疾患による死亡率に差はなかった(HR 0.93、95%CI 0.19〜4.61; P=0.929)。

結論:虚血性心筋症で症候性VTを有するICD患者において、カテーテルアブレーションはAADと比較して、心血管死、適切なICDショック、心不全による入院、重度の治療関連合併症という複合エンドポイントを減少させた。

Substrate Ablation vs. Antiarrhythmic Drug Therapy for Symptomatic Ventricular Tachycardia [SURVIVE-VT]: NCT03734562

キーワード:抗不整脈薬、基板アブレーション、心室性頻拍

引用文献

Substrate Ablation vs Antiarrhythmic Drug Therapy for Symptomatic Ventricular Tachycardia
Ángel Arenal et al. PMID: 35422240 DOI: 10.1016/j.jacc.2022.01.050
J Am Coll Cardiol. 2022 Apr 19;79(15):1441-1453. doi: 10.1016/j.jacc.2022.01.050.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35422240/

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