DAPT実施患者における消化性潰瘍に対するレバミピドの効果は?(小規模DB-RCT; J Gastroenterol Hepatol. 2019)

04_消化器系
この記事は約6分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

DAPT関連の消化性潰瘍に対するレバミピドの効果は?

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の血栓予防のために二重抗血小板薬(DAPT)が用いられています。DAPTの適切な実施期間については結論が得られておらず、患者背景によりますが、少なくとも1〜2年間以上の実施が求められます。

このような背景からDAPTの長期使用は増加しており、ほとんどの患者は一次的な消化性潰瘍予防を必要としています。消化性潰瘍の予防策として、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が用いられますが、PPIの長期使用は様々な有害事象と関連していることが報告されていることから、レバミピドの消化性潰瘍予防の有効性評価が求められます。

そこで今回は、1年以上DAPTを受けており、消化性潰瘍出血または穿孔の既往がない患者を対象に、レバミピドの予防効果を検証したランダム化比較試験(実施期間:2014年7月〜2017年11月)の結果をご紹介します。本試験の対象患者では、レバミピド(300mg/日)群またはプラセボ群にランダムに割り付けられました。また、プロトンポンプ阻害剤(PPI)を使用している患者は除外されました。

本試験の主要評価項目は、治療開始後3ヵ月または12ヵ月の食道胃十二指腸内視鏡検査における新たな粘膜障害(mucosal break)、副次的評価項目は、ベースラインからのヘマトクリット値の変化、消化管出血、胸痛でした。また、抗血小板機能も評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

合計で95例の適格患者が確認され、83例(12例が除外)がランダム化され、3ヵ月および12ヵ月後の追跡時にそれぞれ66例(79.5%)と59例(71.1%)が適格でした。

ベースラインの特性は両群間で同等でした。12ヵ月間の追跡期間中に、レバミピド投与群13例(43.3%)およびプラセボ投与群19例(65.5%)に粘膜障害が発生しました(P=0.07)。

レバミピド服用者2例(6.7%)、プラセボ服用者8例(27.6%)に色素斑を伴う5mm以上または5mm未満の消化性潰瘍が認められました(P=0.03)。ヘマトクリットの変化は両群間で差がなく、出血性潰瘍や胸痛は観察されませんでした。

コメント

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の血栓予防のために二重抗血小板薬(DAPT)が用いられています。PCIの実施数増加に伴いDAPTの件数も増加しています。DAPT実施における課題として消化性潰瘍があげられます。

さて、小規模な本試験結果によれば、DAPTを1年間投与した患者に対するレバミピド使用は、プラセボと比較して、直径5mm以上の消化性潰瘍または色素斑を有する潰瘍を予防する可能性が示されました。ただし本試験は小規模であること、服用回数、過去の報告からレバミピドよりもH2受容体拮抗薬やPPIの有効性が優れていることを考慮すると、まずは、これらの薬剤使用が一般的であると考えられます。個々の患者によっては、H2受容体拮抗薬やPPI使用によるリスクがベネフィットを上回ることが報告されていることから、その際の代替薬としてレバミピドが考慮できると考えられます。

possible written on a chalkboard

✅まとめ✅ 小規模なランダム化二重盲検比較試験において、DAPTを1年間投与した患者に対するレバミピド使用は、プラセボと比較して直径5mm以上の消化性潰瘍または色素斑を有する潰瘍を予防する可能性がある。

根拠となった試験の抄録

背景と目的:二重抗血小板薬(DAPT)の長期使用は増加しており、ほとんどの患者は一次的な消化性潰瘍予防を必要としている。プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期使用は有害事象と関連している。我々はレバミピドの消化性潰瘍予防の有効性を評価した。

方法:本ランダム化比較試験は、2014年7月から2017年11月にかけて実施した。1年以上DAPTを受けており、消化性潰瘍出血または穿孔の既往がない患者を募集し、レバミピド(300mg/日)群またはプラセボ群にランダムに割り付けた。プロトンポンプ阻害剤(PPI)を使用している患者は除外した。
主要評価項目は、治療開始後3ヵ月または12ヵ月の食道胃十二指腸内視鏡検査における新たな粘膜障害(mucosal break)とした。副次的評価項目は、ベースラインからのヘマトクリット値の変化、消化管出血、胸痛とした。また、抗血小板機能を評価した。

結果:合計で95例の適格患者が確認され、12例が除外され、83例がランダム化され、3ヵ月および12ヵ月後の追跡時にそれぞれ66例(79.5%)と59例(71.1%)が適格であった。ベースラインの特性は両群間で同等であった。12ヵ月間の追跡期間中に、レバミピド群13例(43.3%)およびプラセボ群19例(65.5%)に粘膜障害が発生した(P=0.07)。レバミピド群2例(6.7%)、プラセボ群8例(27.6%)に色素斑を伴う5mm以上または5mm未満の消化性潰瘍が認められた(P=0.03)。ヘマトクリットの変化は両群間で差がなかった。出血性潰瘍や胸痛は観察されなかった。

結論:レバミピドは安全であり、2種類の抗血小板薬を1年間投与した患者において、直径5mm以上の消化性潰瘍または色素斑を有する潰瘍を予防する可能性がある(NCT02166008)。

キーワード:二重抗血小板薬(DAPT)、消化性潰瘍、予防

引用文献

Cytoprotective agent for peptic ulcer prevention in patients taking dual antiplatelet agents: A randomized, double-blind placebo-controlled trial
Rapat Pittayanon et al. PMID: 30919492 DOI: 10.1111/jgh.14671
J Gastroenterol Hepatol. 2019 Sep;34(9):1517-1522. doi: 10.1111/jgh.14671. Epub 2019 May 8.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30919492/

関連記事

【NSAIDs使用者の潜伏性消化管出血のリスク低減における酸抑制剤 vs. その他の粘膜保護剤(後向きコホート研究; Sci Rep. 2019)】

【NSAIDs誘発胃潰瘍に対するムコスタ®とサイトテック®の効果はどのくらいですか?(RCT; STORM STUDY; J Clin Biochem Nutr. 2007)】

【ピロリ菌除菌後にすぐ検査すると偽陰性となるのはなぜですか?(H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2009-2016)】

コメント

タイトルとURLをコピーしました