ピロリ菌除菌後にすぐ検査すると偽陰性となるのはなぜですか?(H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2009-2016)

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⌘ 背景

Helicobacter pyloriH. pylori)感染の診断と治療のガイドラインに以下の記載がある。またネット上では偽陰性を生じる薬剤として下記の薬剤が掲載されていた。情報が確からしいものか検証したい。

⌘ 目的

原著論文にあたることで「検査前後の薬剤投与中止 2 週間の根拠」を明らかにする

⌘ 方法

Pubmed での論文検索

⌘ 結果および総論

診療ガイドラインに記載されている 3件の文献結果を検討した。 ▶️尿素呼気検査あるいは迅速ウレアーゼ試験でのピロリ菌除菌効果を検討する場合、プロトンポンプ阻害薬(Proton pump inhibitor: PPI)については少なくとも 14日間以上の休薬が必要である。ただし、より正確な試験結果を得るために 28日間以上あける方が好ましい。

⌘ 新薬であるボノプラザン(タケキャブ®︎)は?

▶️静菌作用を有していない*)ため休薬の必要はないが、H.pylori感染の診断と治療ガイドライン2016では、現時点では静菌作用を有している可能性もあるため、休薬するように “推奨” している。 *)Labenz J et al. Current role of acid suppressants in Helicobacter pylori eradication therapy. Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2001; 15(3): 413-31. [PMID: 11403536]
  ▶️まずは診療ガイドラインを参照した。以下、H.pylori感染の診断と治療ガイドライン2009より一部抜粋(最新版は 2016です)   ▶️「PPI や一部の防御因子増強薬等、H. pylori に対する静菌作用を有する薬剤が投与されている場合、除菌前後の感染診断の実施にあたっては、当該静菌作用を有する薬剤投与を少なくとも 2 週間は中止することが望ましい1-3」   ▶️迅速ウレアーゼ試験および尿素呼気検査が特に影響を受ける。従って他の検査方法であれば影響は受けない。  

偽陰性を生じる可能性のある薬剤(静菌作用を有す薬剤)

①プロトンポンプ阻害剤 (PPI)

 ランソプラゾール、オメプラゾール ▶️他の PPI も影響する。これはウレアーゼ活性抑制作用に起因している。  

②抗生物質全般

▶️でしょうね。  

③胃粘膜保護剤

 スクラルファート、エカベト ▶️知らなかった。そこで論文検索したら、エカベトとレバミピドは尿素呼気検査において低値を示す可能性があるが、有意ではないとのこと。つまりPPI ほど気にしなくて良いのでは?というのが個人的見解。ちなみにランソプラゾール(PPI)、ニザチジン(H2-RA)、エカベトナトリウム、レバミピド、テプレノン、塩酸セトラキサートおよびスクラルファート(防御因子増強薬)について検討されているが、有意に偽陰性を示したのはランソプラゾールのみ(PMID:14614600)。  

④ビスマス製剤

 次硝酸ビスマス ▶️2016 年、ピロリ菌除菌における 4 剤併用療法の論文が発表された。 結果はこちらで紹介→【準備中です】    

⌘ 診療ガイドラインに引用されている文献

▶️1) Chey WD. Proton pump inhibitors and the urea breath test: how long is long enough?   Am J Gastroenterol 1997; 92: 720-721. [PMID: 9128344]   →全文は読めなかった。そこで Am J Gastroenterol 1996; 91: 2120-2124. [PMID: 8855733]に対するコメント文献を検証した。こちらは、十二指腸潰瘍患者におけるオメプラゾールのピロリ菌移行について検討した文献。以下、まずは PICOから  P:4 週間オメプラゾールを投与された十二指腸潰瘍患者  I :投与後 4-6 週間後に肛門生検(Genta染色:鍍銀法)の培養および組織学的検査  C:なし  O:H.pylori の有無または生検当たりの H.pylori コロニー数   結果:尿素呼気検査で false-negative となる可能性と、オメプラゾールによってピロリ菌が幽門洞から胃底部に移動するという説を否定する結果であった。   結論: オメプラゾール(PPI)は静菌作用を有しており、休薬 0〜2 週間後の尿素呼気検査では休薬不十分であるとする根拠の一つを示した。     ▶️2) Laine L, Estrada R, Trujillo M, et al. Effect of proton-pump inhibitor therapy on diagnostic testing for Helicobacter pylori. Ann Intern Med 1998; 129: 547-550. [PMID: 9758575] →Abstract のみ読めた。 目的:PPI 投与患者の尿素呼気検査結果の陽性から陰性への変換の頻度および期間を決定するための試験  P:尿素呼気検査で陽性結果を示したH.pyloriに感染した患者  I :ランソプラゾール 30 mg /日、28 日間  C:なし  O:尿素呼気試験を 28 日間実施。結果が陰性であった場合、治療完了後、 3、7、14 および 28 日後に試験を繰り返し、結果が陽性に戻った。  T:2つの都市大学胃腸科クリニック 結果:H. pylori感染のある 93 人のうち 31 人(33%)が呼気検査結果で陰性ランソプラゾール治療終了後の呼気検査結果が陽性であった患者の割合は、3日目で 91%(95%CI:83%〜96%)、7 日目で 97%(90%〜99%)、14 日目で 100%(96%〜100%)であった。   結論:H.pylori 感染者が尿素呼気検査を受ける前にはランソプラゾールを 2 週間休薬する必要がある。     ▶️3) Graham DY, Opekun AR, Hammoud F, et al. Studies regarding the mechanism of false negative urea breath tests with proton pump inhibitors. Am J Gastroenterol 2003; 98:1005-1009. [PMID: 12809820] →全文フリーで読めた。まずは PICOから。    P:30 人(男 53.3%;平均 42.5 歳  37–55)の H.pylori 感染のボランティア患者  I :オメプラゾール 20 mg を 1 日 2 回、13.5 日間投与  C:なし  O:(クエン酸を含む)尿素呼気検査は、オメプラゾール投与前 1、2、4、7 および 14日目、そして投与後 6.5 日目に行った。また培養および組織学的検証については、5 ヶ月以上の wash-out期間を設けた後、被験者のうち 9 人がオメプラゾール投与後 6.5 日目について再検討された。 組織学および培養のための腹腔およびコーパス生検を、オメプラゾール投与前および投与に実施した。   結果:6.5 日目の尿素呼気検査では有意に陰性を示した(P = 0.031)。10人の被験者(全体の 33%)が尿素呼気検査において一過性の陰性を示した。 尿素呼気検査において、オメプラゾール投与後、4 日目では 1 人を除くすべての被験者で、14 日目には全ての被験者で回復が認められた(陰性から陽性に転じた)。 培養および組織学的検証において、オメプラゾール再検討時に 9 人の被験者のうち 3 人(33%)が尿素呼気検査で陰性を有した。ピロリ菌の密度については 、幽門洞生検で 5 例、胃底部生権で 3例がオメプラゾール投与陰性となった。   結論:オメプラゾール服用後の尿素呼気検査は、最低でも 3 日休薬後、可能であれば 14 日休薬後の実施が望ましい。  


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