COVID-19ワクチンを接種していないCOVID-19既往を有する成人におけるCOVID-19再感染率はどのくらいなのか?
SARS-CoV-2感染の収束はみられず、世界各地でロックダウンが繰り返されています。米国では感染者数の推移や国民のワクチン接種率などのデータから、公共交通機関および構内におけるマスク着用義務を撤廃しました(TSA)。一方、CDCはマスク着用義務を5月3日まで延長しました(CDC)。このような状況の中、COVID-19ワクチン未接種者がSARS-CoV-2に再感染するリスクは議論の的となっています(PMID: 34302458、PMID: 34762853)。
そこで今回は、ワクチン未接種者の自然免疫に関連する防御の程度と期間を評価するために、米国の大規模集団において生存解析を実施したコホート研究の結果をご紹介します。このコホート研究では、2020年10月1日から2021年11月21日の間に、Providence医療システムの米国西部6州の1,300箇所の医療機関でSARS-CoV-2の検査を受けた患者のデータを使用しました。検査時にCOVID-19のワクチン未接種であり、COVID-19と一致する症状があった患者が対象となりました。最初のSARS-CoV-2核酸増幅検査(NAAT)の90日後より、症状のある状態でSARS-CoV-2 NAATの結果が陽性であることにより判断し、その後のCOVID-19について患者をモニターしました。
試験結果から明らかになったことは?
24,043例の症例と97,572例の対照を同定し、対照群2,762例(2.8%)がCOVID-19を発症したのに対し、症例群では98例(0.4%)でした。生存モデルにおいて、症例におけるCOVID-19発症のHRは0.15(95%CI 0.13〜0.18)、COVID-19による入院は0.12(95%CI 0.08〜0.18)、入院を必要としないCOVID-19は0.17(95%CI 0.13〜0.21)でした。
症例群 (24,043例) | 対照群 (97,572例) | |
COVID-19発症 | 98例(0.4%) | 2,762例(2.8%) |
COVID-19発症リスク | HR 0.15 (95%CI 0.13〜0.18) | – |
COVID-19による入院リスク | HR 0.12 (95%CI 0.08〜0.18) | – |
入院を必要としないCOVID-19発症リスク | HR 0.17 (95%CI 0.13〜0.21) | – |
COVID-19の発症歴は、COVID-19の再発に対して85%、COVID-19による入院に対して88%、入院を必要としないCOVID-19に対して83%の予防効果を有していました。予防効果は試験期間中安定しており、初感染から9ヵ月まで減衰は認められませんでした。
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COVID-19既往を有するCOVID-19ワクチン未接種者がSARS-CoV-2に再感染するリスクは議論の的となっています。
さて、本試験結果によれば、COVID-19ワクチン未接種かつCOVID-19既往歴を有する集団では、COVID-19再発に対して85%、COVID-19による入院に対して88%、入院を必要としないCOVID-19の発症に対して83%の予防効果を有していました。予防効果は試験期間中安定しており、初感染から9ヵ月まで減衰は認められませんでした。
COVID-19既往歴は、COVID-19発症に対してワクチンと同等以上の効果を有していることが示されました。とはいえ流行株によっては、COVID-19発症による自然免疫の獲得前に死亡する可能性があることから、やはりワクチン接種により感染予防効果(獲得免疫)を得る必要があると考えられます。
✅まとめ✅ COVID-19既往を有するワクチン未接種者では、COVID-19既往を有さないワクチン未接種者に比べてCOVID-19の感染リスクが85%低いことが示された。
根拠となった試験の抄録
はじめに:COVID-19のワクチン未接種者がSARS-CoV-2に再感染するリスクは議論の的となっている(PMID: 34302458、PMID: 34762853)。我々は、ワクチン未接種者の自然免疫に関連する防御の程度と期間を評価するために、米国の大規模集団において生存解析を実施した。
方法:このコホート研究では、2020年10月1日から2021年11月21日の間に、Providence医療システムの米国西部6州の1,300箇所の医療機関でSARS-CoV-2の検査を受けた患者のデータを使用した。検査時にCOVID-19のワクチン未接種であり、COVID-19と一致する症状があった患者を対象とした。最初のSARS-CoV-2核酸増幅検査(NAAT)の90日後より、症状のある状態でSARS-CoV-2 NAATの結果が陽性であることにより判断し、その後のCOVID-19について患者をモニターした。
COVID-19既往を有する患者(最初の検査でSARS-CoV-2が陽性[症例])と、最初の検査でSARS-CoV-2が陰性の患者(対照)を比較し、年齢、性別、人種および民族(医療記録文書に基づく)を調整し、Cox比例ハザード回帰でCOVID-19無症候生存率を解析した。患者は、研究期間中の最後のプライマリケアまたは入院患者の診察(臨床医が電子カルテと外部データを用いてワクチン接種状況を一貫して確認した診察)、あるいは COVID-19ワクチンを受けたとき、死亡したとき、またはSARS-CoV-2 が陽性となったときに打ち切りとした。COVID-19接種歴に関連する予防レベルを、症例と対照のCOVID-19のハザード比(HR)を1から引いた値として算出した。保護レベルの50日間のローリング平均を計算し、1,000×ブートストラップサンプリングで95%CIを推定することによって、経時的な保護レベルを測定した。この研究はProvidenceの機関審査委員会の承認を得ており、リスクは最小限と考えられるため、インフォームドコンセントの要件は免除された。報告ガイドライン(STROBE)に従い、統計解析にはR, version 4.1.2(R Foundation for Statistical Computing)を使用した。
結果:24,043例の症例と97,572例の対照を同定し、対照群2,762例(2.8%)がCOVID-19を発症したのに対し、症例群98例(0.4%)でした。生存モデルにおいて、症例におけるCOVID-19発症のHRは0.15(95%CI 0.13〜0.18)、COVID-19による入院は0.12(95%CI 0.08〜0.18)、入院を必要としないCOVID-19は0.17(95%CI 0.13〜0.21)であった。COVID-19既往歴は、COVID-19の再発に対して85%、COVID-19による入院に対して88%、入院を必要としないCOVID-19に対して83%の予防効果を有していた。予防効果は試験期間中安定しており、初感染から9ヵ月まで減衰は認められなかった。
考察:1,000万日以上の追跡調査を行った121,615例の患者のうち、COVID-19既往のあるワクチン未接種者は、COVID-19既往のないワクチン未接種者に比べてCOVID-19の感染リスクが85%低いことが示された。SARS-CoV-2の再感染に対する防御を調査した先行研究では、自然免疫に関連する防御は80.5%から100%であり、同様の結果だった(PMID: 34762853、PMID: 33743221、PMID: 33718968)。この防御レベルは、mRNAワクチンについて報告されたものと同様であった(PMID: 34192428)。COVID-19の既往がある患者のCOVID-19による入院に対する防御率は88%であり、入院を必要としないCOVID-19に対する防御率は83%であるという結果は、自然免疫が軽症および重症に対する同様の防御と関連していることを示唆している。mRNAワクチンは、軽症COVID-19に対するワクチン関連の防御が6ヵ月で低下することが示されているが、我々の研究で認められたように重症COVID-19に対する長期の保護と関連している(PMID: 34619098)。
試験の限界:外部の医療施設でのCOVID-19検査やワクチン接種の可能性があるが、未検出の感染は症例と対照の間でバランスが取れているはずである。COVID-19から回復した患者は、免疫のない患者とは異なる行動をとる可能性があり、結果を混乱させる可能性がある。強いて言えば、サンプルサイズが大きいこと、追跡期間が長いこと、症状のあるCOVID-19のワクチン未接種者のみを対象としていることである。この研究結果は、ワクチン政策や公衆衛生に重要な示唆を与える可能性がある。
引用文献
Rates of COVID-19 Among Unvaccinated Adults With Prior COVID-19
Jessica P Ridgway et al. PMID: 35442459 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2022.7650
JAMA Netw Open. 2022 Apr 1;5(4):e227650. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2022.7650.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35445690/
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