血液透析患者において血清リン値が高いとスタチン治療の有効性が低下する?(事後解析; Clin J Am Soc Nephrol. 2022)

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透析患者における血清リン酸値とスタチン使用により得られる恩恵は逆相関する?

透析患者におけるスタチンの心血管系疾患リスク低減効果は、一般人口に比べ低いことが報告されています。最近の実験データでは、リン酸塩過剰が3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル・コエンザイムA(HMG-CoA)還元酵素の活性化を通じて細胞のデノボコレステロール合成を促進することが示されました。したがって、リン酸値が高値の場合、HMG-CoA還元酵素阻害薬であるスタチンの脂質低下等の効果が減弱する可能性があります。しかし、このメカニズムが、透析患者におけるスタチン抵抗性を説明できるかどうかについて、充分な検証は行われていません。

そこで今回は、リン酸塩が主要有害心血管イベント(MACE)および全死因死の発生を調節するか否かを検証したポストホック解析(事後解析)の結果をご紹介します。

今回のポストホック解析では、AURORA試験(A Study to Evaluate the Use of Rosuvastatin in Subjects on Regular hemodialysis)、4D(Deutsche Diabetes Dialyse Studie)試験が用いられた。

試験結果から明らかになったことは?

2型糖尿病を有さない血液透析患者が参加したAURORA試験において、多変量解析を用いたMACEと全死亡に対するスタチンの治療効果は、血清リン酸値が低い患者において有意であり、リン酸値が5mg/dLを超えると徐々に保護効果が薄れることが見いだされました。ベースラインのリン酸値が高い場合(>5mg/dL)にも同様に、両アウトカムに対するスタチン治療効果の欠如が観察されました。

糖尿病合併の血液透析患者を対象とした4D試験では、MACEと全死亡、両アウトカムともに血清リン酸値が高値である場合に治療効果が失われる傾向が認められましたが、有意ではありませんでした。

コメント

リン酸がHMG-CoA還元酵素を活性化し、コレステロール合成を促進することが報告されています。しかし、血液透析患者における高リン酸血症が心血管イベントの発生に影響するのかについて検証されていませんでした。

さて、本試験結果によれば、2型糖尿病を有さない血液透析患者では、2型糖尿病を有さない血液透析患者が参加したAURORA試験において、多変量解析を用いたMACEと全死亡に対するスタチンの治療効果は、血清リン酸値が低い患者において有意であり、リン酸値が5mg/dLを超えると徐々に保護効果が薄れることが示され、さらにベースラインのリン酸値が高い場合(>5mg/dL)にも同様に、両アウトカムに対するスタチン治療効果の欠如が観察されました。抄録からはLDL-Cの値が読み取れませんが、リン酸値と相関するのであれば、より根拠情報として強固なものになると考えられます。一方、糖尿病合併の血液透析患者では、リン酸値の影響は大きくないようでした。

これまで透析患者を対象にリン酸吸着薬を用いた試験において、MACEや死亡リスクの有意な低下は示されておらず、血管の石灰化の進行抑制のみが示されています。また血管の石灰化とMACEや死亡リスクの相関関係においても、明確に示されている結果はありません。ここまでの情報を踏まえると、交絡因子の一つとして、スタチンが考えられます。今後は、リン酸吸着薬とスタチンの併用療法により、MACEや死亡リスクが低下するか検証すると良いのかもしれません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 高リン酸血症が存在する透析患者において、スタチンの治療効果は限定的であることが明らかになった。

根拠となった試験の抄録

背景:透析患者におけるスタチンの心血管系疾患リスク低減効果は、一般人口に比べ低い。最近の実験データでは、リン酸塩過剰が3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル・コエンザイムA(HMG-CoA)還元酵素の活性化を通じて細胞のデノボコレステロール合成を促進することが示された。このメカニズムが、透析患者のスタチン抵抗性を説明できるかどうかは、まだ検討されていない。

患者・方法:今回のポストホック解析では、AURORA試験(A Study to Evaluate the Use of Rosuvastatin in Subjects on Regular hemodialysis)の透析患者参加者において、血清リン酸値によるスタチン治療の有効性を検討した。まず、経時的に類似したリン酸塩の推移を有するグループによって患者を分類し、縦断的曝露としてのリン酸塩が主要有害心血管イベント(MACE)および全死因死の発生を調節するか否かを検証した。4D(Deutsche Diabetes Dialyse Studie)試験での解析を再現した。

結果:AURORA試験において、多変量解析を用いたMACEと全死亡に対するスタチンの治療効果は、血清リン酸値が低い患者において有意で、リン酸値が5mg/dLを超えると徐々に保護効果が薄れることを見いだした。ベースラインのリン酸値が高い場合(>5mg/dL)にも同様に、両アウトカムに対するスタチン治療効果の欠如が観察された。4D試験では、両アウトカムとも血清リン酸値が高い場合に治療効果が失われる傾向が認められたが、有意ではなかった。

結論:高リン酸血症が存在する透析患者において、スタチンの治療効果は限定的であることが明らかになった。

引用文献

Association of Serum Phosphate with Efficacy of Statin Therapy in Hemodialysis Patients
Ziad Massy et al. PMID: 35236715 DOI: 10.2215/CJN.12620921
Clin J Am Soc Nephrol. 2022 Mar 2;CJN.12620921. doi: 10.2215/CJN.12620921. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35236715/

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