COVID-19パンデミックにおける高齢者の呼吸器感染症に対するBCGワクチン接種の有効性は?(RCT; Clin Infect Dis. 2022)

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高齢者におけるBCGワクチン接種とCOVID-19発症との関連性は?

高齢化は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含む呼吸器感染症の重症度や死亡率の上昇と関連しています。感染流行初期において、結核ワクチンBacille Calmette-Guérin(BCG)を接種する地域では、接種しない地域と比較して、COVID-19発症率が低い可能性が報告されました。このため、BCGワクチン接種は、非結核性感染症に対して異種防御を行う可能性があり、COVID-19に対する予防戦略として提案されています。しかし、あくまでも相関性が示されたに過ぎず、BCGワクチン接種によりCOVID-19発症が抑制されるのかについては明らかとなっていません。

そこで今回は、高齢者を対象にBCG皮内接種とCOVID-19を含む呼吸器感染症の発生率との関連性について検証したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本試験は多施設共同プラセボ対照試験であり、高齢者(60歳以上、n=2,014)をBCGの皮内接種(n=1,008)またはプラセボ(n=1,006)にランダム割り付けしました。主要評価項目は、12ヵ月間の追跡期間中に医療介入を必要とした呼吸器感染症の累積発生率でした。副次的評価項目は、COVID-19の発生率、細胞性・液性免疫反応に対するBCG接種の影響でした。

試験結果から明らかになったことは?

BCGワクチン接種群プラセボ群亜分布ハザード比[SHR]
(98.2%信頼区間[CI])
医療介入を必要とした
呼吸器感染症の累積発生率
0.0290.024SHR 1.26
(98.2%CI 0.65~2.44
PCR法によるSARS-CoV-2陽性51例48例SHR 1.053
(95%CI 0.71~1.56

医療介入を必要とした呼吸器感染症の累積発生率は、BCGワクチン接種群で0.029、対照群で0.024でした(亜分布ハザード比[SHR] 1.26、98.2%信頼区間[CI] 0.65~2.44)。BCG群とプラセボ群でそれぞれ51例と48例がPCR法によるSARS-CoV-2陽性と判定されました(SHR 1.053、95%CI 0.71~1.56)。

有害事象の発生頻度に差は認められませんでした。

BCG接種は、インフルエンザ刺激後、および部分的にSARS-CoV-2刺激後のサイトカイン反応の増強と関連していました。COVID-19と診断された患者では、過去にBCG接種を受けたことがある場合、感染後の抗体反応は有意に強いことが示された。

コメント

新型コロナウイルス感染症の流行初期にBCGワクチンが有効である可能性が報告されました。しかし、あくまでも相関関係であることから、質の高い前向き研究の実施が求められます。

さて、本試験結果によれば、60歳以上の高齢者にBCGワクチンを接種したところ、プラセボと比較して、SARS-CoV-2感染を含む呼吸器感染症の発生率に影響を及ぼしませんでした。

COVID-19発症予防に対してBCG接種は推奨できなそうです。

vaccine sticker on bare shoulder

✅まとめ✅ BCG接種は、高齢者におけるSARS-CoV-2感染を含む呼吸器感染症の発生率に影響を及ぼさなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:高齢化は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含む呼吸器感染症の重症度や死亡率の上昇と関連している。結核ワクチンBacille Calmette-Guérin(BCG)は、非結核性感染症に対して異種防御を行う可能性があり、COVID-19に対する予防戦略として提案されている。

方法:この多施設共同プラセボ対照試験において、高齢者(60歳以上、n=2,014)をBCGの皮内接種(n=1,008)またはプラセボ(n=1,006)にランダムに割り付けた主要評価項目は、12ヵ月間の追跡期間中に医療介入を必要とした呼吸器感染症の累積発生率であった。副次的評価項目は、COVID-19の発生率、細胞性・液性免疫反応に対するBCG接種の影響であった。

結果:医療介入を必要とした呼吸器感染症の累積発生率は、BCGワクチン接種群で0.029、対照群で0.024であった(亜分布ハザード比[SHR] 1.26、98.2%信頼区間[CI] 0.65~2.44)。BCG群とプラセボ群でそれぞれ51例と48例がPCR法によるSARS-CoV-2陽性と判定された(SHR 1.053、95%CI 0.71~1.56)。有害事象の発生頻度に差は認められなかった。BCG接種は、インフルエンザ刺激後、および部分的にSARS-CoV-2刺激後のサイトカイン反応の増強と関連していた。COVID-19と診断された患者では、ボランティアでBCGを受けたことがある場合、感染後の抗体反応は有意に強かった。

結論:BCG接種は、高齢者ボランティアにおけるSARS-CoV-2感染を含む呼吸器感染症の発生率に影響を及ぼさなかった。しかし、BCG接種により、インフルエンザおよびSARS-CoV-2で刺激されるサイトカイン応答が改善し、COVID-19感染後に強い抗体価が誘導されることが確認された.

キーワード:BCG接種、COVID-19、SARS-CoV-2、自然免疫記憶

引用文献

Efficacy of Bacillus Calmette-Guérin vaccination against respiratory tract infections in the elderly during the Covid-19 pandemic
Simone J C F M Moorlag et al. PMID: 35247264 DOI: 10.1093/cid/ciac182
Clin Infect Dis. 2022 Mar 5;ciac182. doi: 10.1093/cid/ciac182. Online ahead of print.
— 読み進める academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciac182/6543010

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