SARS-CoV-2伝播を効果的に予防できる方法とは？
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2（SARS-CoV-2）の全拡散には、特にエアロゾルと呼ばれる小さな粒子を介した空気感染が重要であることを示唆する証拠が増えつつあります。しかし、SARS-CoV-2の伝播に対する学生の寄与は不明です。
そこで今回は、空気感染による呼吸器感染症の伝播と学校における感染対策との関連を、複数測定法を用いて評価したモデリング研究の結果をご紹介します。
本試験では、2022年1月から3月までの7週間（オミクロン流行期）、スイスの中等教育学校2校（n＝90、平均生徒数18人/教室）において、疫学的データ（コロナウイルス疾患2019（COVID-19）の症例）、環境データ（CO2、エアロゾル、粒子濃度）、分子データ（バイオエアロゾル、唾液サンプル）が収集されました。
異なる調査条件（介入なし、マスク着用、空気清浄機）間での環境および分子特性の変化が分析されました。環境変化の解析は、異なる換気、クラスの生徒数、学校、平日の影響について調整、半機械論的ベイズ階層モデルを用いて疾病伝播をモデル化し、欠席生徒および地域伝播について調整されました。
試験結果から明らかになったことは？
唾液（陽性率 21/262）および空気中サンプル（10/130）の分子生物学的分析により、調査期間中SARS-CoV-2（週平均ウイルス濃度0.6コピー/L）および時折他の呼吸器系ウイルスが検出されました。全体の1日平均CO2濃度は1,064±標準偏差232ppmでした。
| 平均エアロゾル濃度/日の減少 vs. 無介入 | 調整オッズ比 （95%CrI） | |
| マスク着用義務 | 69％ （95％CrI 42％～86％） | 調整オッズ比 0.19 （0.09～0.38） |
| 空気清浄機 | 39％ （95％CrI 4％～69％） | 調整オッズ比 1.00 （0.15～6.51） |
無介入の1日平均エアロゾル濃度は177±109 1/cm3であり、マスク着用義務により69％（95％CrI 42％～86％）、空気清浄機により39％（95％CrI 4％～69％）減少しました。
無介入と比較して、伝播リスクはマスク義務化では低く（調整オッズ比 0.19、95％CrI 0.09～0.38）、空気清浄機では同程度でした（1.00、95％CrI 0.15～6.51）。
研究の限界としては、感受性のある生徒の数が時間の経過とともに減少したため、期間による交絡の可能性があることが挙げられます。さらに、空気中からの病原体の検出は、曝露の記録にはなるものの、必ずしも伝播の記録にはなりません。
コメント
SARS-CoV-2の伝播において、エアロゾルの関与が示唆されています。エアロゾルは大きさにより飛沫感染の他に空気感染を引き起こすことも示唆されています。しかし、SARS-CoV-2伝播に対する学校が講じる対策の効果については充分に検証されていません。
さて、モデリング研究の結果によれば、空気感染およびヒトSARS-CoV-2の分子生物学的検出により、学校における持続的伝播が示唆されました。マスクの着用は、空気清浄機よりもエアロゾル濃度の減少につながり、伝播の減少につながりました。
COVID-19発生数については検証されていないため、マスクの着用が空気清浄機よりも優れているのか否かについては不明です。少なくともマスク着用によりエアロゾル発生を抑制できることは間違いないでしょう。COVID-19発生予防におけるマスクや空気清浄機の効果検証が求められます。
続報に期待。
コメント