オミクロン出現後のニューヨークにおける5〜11歳および12〜17歳におけるBNT162b2ワクチンの有効性は?(プレプリント; コホート研究; medRxiv 2022)

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17歳以下の小児および青年に対するCOVID-19 mRNAワクチンの有効性は?

ニューヨーク州では、約85万人の小児および青年(17歳以下)がCOVID-19と診断されています。デルタ型およびそれ以前の変異株が優勢な時期に実施されたランダム化試験および観察研究において、オリジナル株を防ぐために開発されたCOVID-19 mRNAワクチン(BNT162b2)は、5〜17歳以上のCOVID-19転帰の予防に安全かつ有効であることが示されています(PMID: 34670036CDCPMID: 34379915PMID: 34043894PMID: 35021004CDCCDCPMID: 34942067NYSofDHPMID: 34752019)。

30μgを2回投与する12〜17歳児に比べ、10μgを2回投与する5〜11歳児では、特にオミクロン変種出現後、実際のワクチンの感染・入院効果についてあまり知られていません(PMID: 35118481medRxiv)。

今回ご紹介するのは、2021年12月初旬に始まったオミクロン変種株急増時のワクチン接種が、12~17歳と比較して5~11歳児の感染・入院に及ぼす効果をニューヨーク州全体のサーベイランスシステムを用いて検討した試験です。

試験結果から明らかになったことは?

2021年12月13日から2022年1月30日まで、12〜17歳の852,384例と5〜11歳の365,502例の完全ワクチン接種児において、ワクチン接種による有効性(VE)は12〜17歳で66%(95%CI 64〜67%) から51%(95%CI 48〜54%)に、5〜11歳では68%(95%CI 63〜72%) から12%(95%CI 6〜16%)に低下していました。

1月24日から30日の週では、11歳におけるVEは11%(95%CI -3 〜 23%)、12歳で67%(95%CI 62〜71%)でした。入院に対するVEは、12~17歳で85%(95%CI 63〜95%)から73%(95%CI 53〜87%)、5~11歳で100%(95%CI -189〜100%)から48%(95%CI -12 〜 75%)に減少しました。

2021年12月13日から2022年1月2日に新たに完全接種した小児および青年では、12~17歳の完全接種後2週間以内の症例に対するVEは76%(95%CI 71〜81%)、28~34日までは56%(95%CI 43〜63%)であり、5~11歳において28~34日までは65%(95%CI 62〜68%)から12%(95%CI 8〜16%)に低下していることが分かりました。

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オミクロン流行期においては、小児の感染も一般的にみられ、家庭内感染が増加してきています。感染予防策としては成人と同様に、三密の回避、手洗い・手指消毒、マスク、ワクチン接種などが求められます。しかし、小児に対するワクチン接種の有効性について、径時的変化を検証した試験は限られています。

さて、本試験結果によれば、2021年12月13日から2022年1月2日に新たに完全接種した小児および青年では、12~17歳の完全接種後2週間以内の症例に対するVEは76%、28~34日までは56%であり、5~11歳において28~34日までは65%から12%に低下していることが分かりました。ただし、こちらはプレプリントであるため、正式にPublishされるまでは、あくまでも参考程度に捉えておいた方が良さそうです。また小児では、成人と比較してワクチン接種量が少ないことから、今回のような結果になったものと考えられます。さらにCDCなどが報告している別の研究では、ワクチン接種1ヵ月後にここまでの有効性低下は示されていません。ワクチン接種量の再検討も含めて続報を待ちたいと思います。

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✅まとめ✅ オミクロン流行期には、小児、特に5〜11歳において、BNT162b2の症例に対する有効性は、完全接種2週間以内と比較して、28~34日で急速に低下するかもしれない。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:小児、特に5〜11歳およびオミクロン変異株出現後の小児に対するBNT162b2ワクチンの有効性に関するエビデンスは限られている。

目的:2021年12月および2022年1月の5〜11歳および12〜17歳の小児におけるCOVID症例および入院に対するBNT162b2ワクチンの有効性を推定する。

試験デザイン:州全体の予防接種、検査、入院のデータベースをリンクして構築したコホートの分析

試験設定・参加者:ニューヨーク州の5~17歳の小児。

主要アウトカム・測定法:実験室で確認されたCOVID-19の新規感染症例と入院。比較は、発生率比(IRR)、ワクチン接種状況による転帰の比較、推定ワクチン効果(VE:1-[1/IRR])で行った。

結果:2021年12月13日から2022年1月30日まで、12〜17歳の852,384例と5〜11歳の365,502例の完全ワクチン接種児において、ワクチン接種による有効性(VE)は12〜17歳で66%(95%CI 64〜67%) から51%(95%CI 48〜54%)に、5〜11歳では68%(95%CI 63〜72%) から12%(95%CI 6〜16%)に低下していました。
1月24日から30日の週では、11歳におけるVEは11%(95%CI -3 〜 23%)、12歳で67%(95%CI 62〜71%)であった。入院に対するVEは、12~17歳で85%(95%CI 63〜95%)から73%(95%CI 53〜87%)、5~11歳で100%(95%CI -189〜100%)から48%(95%CI -12 〜 75%)に減少した。
2021年12月13日から2022年1月2日に新たに完全接種した小児および青年では、12~17歳の完全接種後2週間以内の症例に対するVEは76%(95%CI 71〜81%)、28~34日までは56%(95%CI 43〜63%)であり、5~11歳において28~34日までは65%(95%CI 62〜68%)から12%(95%CI 8〜16%)に低下していることが分かった。

結論と関連性:オミクロン流行時代には、BNT162b2の症例に対する有効性は、小児、特に5〜11歳では急速に低下していた。しかし、5〜11歳の小児へのワクチン接種は重症化に対して予防的であり、推奨される。これらの結果から、小児へのワクチンの代替投与法の研究の必要性と、感染と伝播を防ぐためにマスク着用などの多層防御が引き続き重要であることが強調された。

引用文献

Effectiveness of theBNT162b2vaccineamong children 5-11 and 12-17 years in New Yorkafter the Emergence of the Omicron Variant
Vajeera Dorabawila et al. doi: https://doi.org/10.1101/2022.02.25.22271454
medRxiv Posted February 28, 2022.
ー 続きを読む https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.02.25.22271454v1

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