アストラゼネカ社製COVID-19ワクチンの有効性・安全性はどのくらいか?
これまでの臨床試験で、アストラゼネカ社製 AZD1222(ChAdOx1 nCoV-19)ワクチンの安全性と有効性が、ブラジルや英国などの多様な疫学的環境におけるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の予防に示されています(PMID: 33617777、PMID: 33306989、PMID: 33798499)。AZD1222は、6大陸の100ヵ国以上でワクチン接種のために配布されており、数億人に投与されています(COVID-19 Vaccine Tracker)。
そこで今回は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)試験で確認された症候性COVID-19の予防を目的として、AZD1222を4週間間隔で2回投与し、安全性、有効性、免疫原性を評価した重要な第3相二重盲検プラセボ対照試験の一次解析の結果をご紹介します。本試験は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)への曝露リスクが高く、COVID-19の合併症のリスクが高い多様な集団を対象としています。
試験結果から明らかになったことは?
合計32,451例の参加者が、AZD1222(21,635例)またはプラセボ(10,816例)を投与するために、2:1の割合でランダム化を受けました。その結果、AZD1222の安全性は高く、重篤な有害事象、医学的に問題のある有害事象、特別な関心がある有害事象の発生率は低く、その発生率はプラセボ群と同程度でした。局所および全身の自発的な反応は、両群とも概ね軽度または中等度でした。
推定ワクチン有効率 | |
全体集団 | 74.0%(95%CI 65.3~80.5;P<0.001) |
65歳以上の集団 | 83.5%(95%CI 54.2~94.1) |
全体の推定ワクチン有効率は74.0%(95%信頼区間[CI]65.3~80.5;P<0.001)であり、65歳以上の参加者における推定ワクチン有効率は83.5%(95%CI 54.2~94.1)でした。高いワクチン有効性は、さまざまな人口統計学的サブグループで一貫していました。
完全にワクチンを接種した解析サブグループでは、AZD1222群の1万7,662人に重症または重篤な症状のCOVID-19症例は認められませんでしたが、プラセボ群の8,550例には8症例が認められました(0.1%未満)。
SARS-CoV-2感染の予防(ヌクレオカプシド抗体のセロコンバージョン)に対するワクチンの推定有効率は64.3%(95%CI 56.1~71.0;P<0.001)でした。SARS-CoV-2 スパイク蛋白結合抗体および中和抗体は、1回目の投与後に増加し、2回目の投与から28日後に測定するとさらに増加しました。
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アストラゼネカ社製COVID-19ワクチンの有効性・安全性を検証した第3相試験の結果が報告されました。その結果、全体の推定ワクチン有効率は74.0%(95%信頼区間[CI]65.3~80.5;P<0.001)であり、65歳以上の参加者における推定ワクチン有効率は83.5%(95%CI 54.2~94.1)でした。やや区間推定値の幅が広いと考えられます。とは言え、ワクチン有効率は70%以上であり、リスクとベネフィットを鑑みるとワクチン接種によるベネフィットが大きいと考えられます。
ワクチン接種は自身のためだけでなく、家族や周囲の人々への感染拡大予防のための手段の一つです。マスクや三密回避、手洗いなどの感染対策と併用することが求められます。
✅まとめ✅ AZD1222は、高齢者を含む多様な集団において、症候性および重症のCOVID-19を予防する上で安全かつ有効であったが、区間推定値の幅が広いと考えられる。
根拠となった試験の抄録
背景:米国、チリ、ペルーの重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染のリスクが高まっている大規模かつ多様な集団におけるAZD1222(ChAdOx1 nCoV-19)ワクチンの安全性と有効性は明らかになっていない。
方法:現在進行中の二重盲検ランダム化プラセボ対照第3相臨床試験において、米国、チリ、ペルーの高齢者を含む成人を対象に、2回目の投与から15日以上経過した後の症候性・重症コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の発症を予防する上で、AZD1222の2回投与の安全性、ワクチン効果、免疫原性をプラセボと比較して検討した。
結果:合計32,451例の参加者が、AZD1222(21,635例)またはプラセボ(10,816例)を投与するために、2:1の割合でランダム化を受けた。その結果、AZD1222の安全性は高く、重篤な有害事象、医学的に問題のある有害事象、特別な関心がある有害事象の発生率は低く、その発生率はプラセボ群と同程度であった。局所および全身の自発的な反応は、両群とも概ね軽度または中等度であった。全体の推定ワクチン有効率は74.0%(95%信頼区間[CI]65.3~80.5;P<0.001)であり、65歳以上の参加者における推定ワクチン有効率は83.5%(95%CI 54.2~94.1)であった。高いワクチン有効性は、さまざまな人口統計学的サブグループで一貫していた。完全にワクチンを接種した解析サブグループでは、AZD1222群の1万7,662人に重症または重篤な症状のCOVID-19症例は認められなかったが、プラセボ群の8,550例には8症例が認められた(0.1%未満)。SARS-CoV-2感染の予防(ヌクレオカプシド抗体のセロコンバージョン)に対するワクチンの推定有効率は64.3%(95%CI 56.1~71.0;P<0.001)であった。SARS-CoV-2 スパイク蛋白結合抗体および中和抗体は、1回目の投与後に増加し、2回目の投与から28日後に測定するとさらに増加した。
結論:AZD1222は、高齢者を含む多様な集団において、症候性および重症のCOVID-19を予防する上で安全かつ有効であった(資金提供:AstraZeneca社など、ClinicalTrials.gov番号:NCT04516746)。
引用文献
Phase 3 Safety and Efficacy of AZD1222 (ChAdOx1 nCoV-19) Covid-19 Vaccine
Ann R Falsey et al. PMID: 34587382 DOI: 10.1056/NEJMoa2105290
N Engl J Med. 2021 Sep 29. doi: 10.1056/NEJMoa2105290. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34587382/
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【アストラゼネカ社製のCOVID-19ワクチンの安全性と有効性はどのくらいですか?(RCT 中間解析; Lancet. 2020)】
【アストラゼネカ社製ワクチン接種後の異常な血栓症や血小板減少症リスクはどのくらいですか?(症例シリーズ; N Engl J Med. 2021)】
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