COVID-19 mRNAワクチン接種後の有害事象モニタリング(安全性モニタリングデータの中間解析; JAMA. 2021)

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COVID-19 mRNAワクチン接種の安全性は?

SARS-CoV-2に対する「安全で効果的」なワクチンは、パンデミックの終息に不可欠です。2種類のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン(BNT162b2:Pfizer-BioNTech社製、mRNA-1273:Moderna社製)は、米国で認可された最初のSARS-CoV-2ワクチンです(PMID: 33332292PMID: 33382675)。BNT162b2とmRNA-1273の大規模な第3相試験では、症状のあるSARS-CoV-2感染に対して両ワクチンの有効性が94%以上であることが示されました(PMID: 33301246PMID: 33378609)。

BNT162b2ワクチンは202年12月11日に、mRNA-1273は2020年12月18日に、それぞれ緊急使用許可を取得しました(PMID: 33382675)。

第3相試験では、サンプル数が限られていること、組み入れ基準が制限されていること、追跡期間が限られていること、試験参加者が最終的にワクチンを受ける集団と異なる可能性があることなどから、ワクチンに関連するまれな、あるいは重篤な結果が特定できない場合があります。さらに、mRNAプラットフォームの使用経験は限られています(PMID: 32628244)。安全性を確保し、信頼を維持し、政策に反映させるためには、サーベイランスが重要です。

2006年以降、米国の医療機関と米国疾病対策センター(CDC)が協力して実施しているVaccine Safety Datalink(PMID: 21502240)では、rapid cycle analysisと呼ばれる毎週のワクチンサーベイランスが行われています(PMID: 17909389PMID: 20587679PMID: 24422678PMID: 31740498)。

今回は、2021年6月までのmRNA COVID-19ワクチン接種後の有害事象リスクに関する中間的な知見をまとめた報告についてご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

合計11,845,128回のmRNAワクチン(57%がBNT162b2、初回接種6,175,813回、2回目接種5,669,315回)が620万人(平均年齢49歳、女性54%)に接種されました。

重篤アウトカムリスク・比較区間および調整後RRにおける発生率
(1,000,000人・年当たり)
虚血性脳卒中RR 0.97
(95%CI 0.87〜1.08)
虫垂炎RR 0.82
(95%CI 0.73〜0.93)
急性心筋梗塞RR 1.02
(95%CI 0.89〜1.18)
静脈血栓塞栓症RR 1.16
(95%CI 1.00〜1.34)
ベル麻痺RR 1.00
(95%CI 0.86〜1.17)
原著より抜粋

2021年6月26日までの解析では、リスク・比較区間および調整後RRにおける1,000,000人年当たりの発生率は、播種性血管内凝固症候群の45 vs. 69(RR 0.70、95%CI 0.39〜1.28)から、血栓性血小板減少性紫斑病の9 vs. 6(RR 2.60、95%CI 0.47〜20.66)の範囲でした。

最も高い頻度の転帰について、虚血性脳卒中のリスク対比較区間における10万人・年当たりの発生率と調整後RRは1,612 vs. 1,781(RR 0.97、95%CI 0.87〜1.08)、虫垂炎は1,179 vs. 1,345(RR 0.82、95%CI 0.73〜0.93)、急性心筋梗塞は935 vs. 1,030(RR 1.02、95%CI 0.89〜1.18)、静脈血栓塞栓症は952 vs. 896(RR 1.16、95%CI 1.00〜1.34)、ベル麻痺は822 vs. 825(RR 1.00、95%CI 0.86〜1.17)でした。100万回投与あたりの過剰症例数の最も高い推定値は、静脈血栓塞栓症が7.5(95%CI -0.1~14.0)、急性心筋梗塞が1.2(95%CI -6.9~8.3)でした。脳静脈洞血栓症10例のうち、血小板減少症を伴うものはありませんでした。

投与1回目、投与2回目およびワクチン製剤の分析では、いずれも片側P<0.0048のシグナリング基準を満たしていませんでした。

ワクチン接種後0~21日目に、12~39歳の個人の間で心筋炎/心膜炎が確認された症例が合計34例あり、そのうち53%が12~24歳、85%が男性、82%が入院(入院期間の中央値は1日)し、記録を確認したところほぼ全員が回復していました。症例は、ワクチン接種後0~5日間に有意に集中していました(P<0.001)。ワクチン接種を受けた同時比較対象者を用いた補足解析では、リスク対比較区間における1,000,000人・年当たりの発生率および調整後RRは、ワクチン接種後0~7日目で321 vs. 35(RR 9.83、95%CI 3.35〜35.77)となり、100万回接種あたり6.3例の追加患者に相当しました(95%CI 4.9〜6.8)。2回目以降は、BNT162b2ワクチンとmRNA-1273ワクチンの両方でRR推定値が高いことが示されました。

ワクチンを接種していない比較対象者を用いた全年齢での補足的な解析では、主要なワクチンを接種した比較対象者の解析とほぼ一致していましたが、心筋炎/心膜炎については、リスク対比較区間における1,000,000人・年当たりの発生率と調整後RRは132 vs. 83(RR 1.39、95%CI 1.05〜1.82)でした。

事前に規定したシグナルの要件を満たすワクチンと結果の関連性は認められませんでした。確認されたアナフィラキシーの発生率は、BNT162b2では100万回投与あたり4.8(95%CI 3.2〜6.9)、mRNA-1273では100万回投与あたり5.1(95%CI 3.3〜7.6)でした。

コメント

ワクチン接種において、安全性評価に関心が集まっています。これは経口薬や注射剤などの医薬品についても同様に言えることですが、ゼロリスク(リスクの懸念が一切ない状態)が求められがちです。これはワクチンにおいて特に求められています。

さて、本試験結果によれば、mRNA COVID-19ワクチン接種後の重篤なアウトカム23項目のうち、事前に規定したシグナルの要件を満たすワクチンと結果の関連性は認められませんでした。あくまでも中間解析の結果ではありますが、現状では、COVID-19発症による症状や合併症の発生リスクと比較して、ワクチン接種による有害事象の発生リスクが上回ることはないと考えられます。

また確認されたアナフィラキシーの発生率は、ファイザー社製COVID-19ワクチン(BNT162b2)では100万回投与あたり4.8(95%CI 3.2〜6.9)、モデルナ社製(mRNA-1273)では100万回投与あたり5.1(95%CI 3.3〜7.6)でした。いずれも安全性が強く懸念される値ではないと考えられます。

今後の報告に期待。

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✅まとめ✅ 重篤な転帰の発生率は、接種後1~21日目と22~42日目を比較して有意に高くはなかった。多くのアウトカムでCIが広く、サーベイランスは継続中である。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性 COVID-19に対するワクチンの安全性サーベイランスは、安全性を確保し、信頼を維持し、政策に反映させるために重要である。

試験の目的:多種多様な人々の包括的な健康記録を用いて、23の重篤なアウトカムを毎週モニターすること。

試験デザイン、設定および参加者:本研究は、Vaccine Safety Datalinkによる安全性モニタリングデータの中間解析である。2020年12月14日から2021年6月26日まで、米国の8つのヘルスプランに参加している10,162,227例のワクチン適格者を対象に、毎週更新される管理データを用いてモニターし、選択された転帰について医療記録のレビューで補足した。

曝露:BNT162b2(Pfizer-BioNTech社製)またはmRNA-1273(Moderna社製)COVID-19ワクチンの接種を受けたこと、ワクチン1回目または2回目の接種後の個人のリスク間隔が21日であるのに対し、ワクチン1回目または2回目の接種後の同様の個人のリスク間隔は22~42日であったこと。

主要アウトカムと測定法:急性心筋梗塞、ベル麻痺、脳静脈洞血栓症、ギラン・バレー症候群、心筋炎・心膜炎、肺塞栓症、脳卒中、血小板減少症候群を伴う血栓症などの重篤なアウトカムの発生率。メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの1回目または2回目を接種してから1~21日後に発生したイベントの発生率を、同じ暦日に、22~42日前に最新のワクチンを接種した同時接種者と比較した。
ポアソン回帰法により、年齢、性別、人種、民族、医療制度、暦日で調整して、率比(RR)を推定した。シグナルについては、2年間の毎週の解析でI型誤差を0.05以下に抑えるために、片側P<0.0048が必要であった。アナフィラキシーを含む4つの追加アウトカムについては、記述的な解析のみを行った。

結果:合計11,845,128回のmRNAワクチン(57%がBNT162b2、初回接種6,175,813回、2回目接種5,669,315回)が620万人(平均年齢49歳、女性54%)に接種された。
虚血性脳卒中のリスク対比較区間における1,000,000人年あたりのイベント発生率は,1,612 vs. 1,781(RR 0.97、95%CI 0.87〜1.08)、虫垂炎は1,179 vs. 1,345(RR 0.82、95%CI 0.73〜0.93)、急性心筋梗塞は935 vs. 1,030(RR 1.02、95%CI 0.89〜1.18)であった。事前に規定したシグナルの要件を満たすワクチンと結果の関連性はなかった。確認されたアナフィラキシーの発生率は、BNT162b2では100万回投与あたり4.8(95%CI 3.2〜6.9)、mRNA-1273では100万回投与あたり 5.1(95%CI 3.3〜7.6)であった。

結論と関連性:mRNA COVID-19ワクチンのサーベイランスの中間解析では、選択された重篤な転帰の発生率は、接種後1~21日目と22~42日目を比較して有意に高くはなかった。多くのアウトカムでCIが広く、サーベイランスは継続中である。

引用文献

Surveillance for Adverse Events After COVID-19 mRNA Vaccination
Nicola P Klein et al. PMID: 34477808 DOI: 10.1001/jama.2021.15072
JAMA. 2021 Sep 3. doi: 10.1001/jama.2021.15072. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34477808/

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