脳卒中および一過性脳虚血発作の患者における二重抗血小板療法とアスピリンの比較(RCTのメタ解析; Stroke. 2021)

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二重抗血小板療法(DAPT) vs. アスピリン単独療法

一過性脳虚血発作(TIA)や軽度の脳梗塞を発症した患者は、特に発症から3ヵ月以内に血栓性イベントを再発する危険性が高いことが知られています(PMID: 27096581EXPRESS試験PMID: 31268543)。

脳梗塞の再発を予防し、重症度を軽減するアスピリンの有効性と安全性は確立されています(EXPRESS試験PMID: 9186381PMID: 27209146)。ジピリダモール単独またはアスピリンとの併用による血小板阻害は、アスピリン単独よりも優れておらず(PMID: 27209146)、アスピリン、クロピドグレル、ジピリダモールによる抗血小板3剤併用療法は大出血のリスクを高めることが報告されています(TARDIS試験)。 アスピリンとP2Y12阻害剤を併用する二重抗血小板療法(DAPT)は、急性冠症候群患者における抗血栓療法の要となっていますが、脳梗塞やTIAを発症した患者におけるこの治療法の役割は、明確には確立されていません。

最近発表されたTHALES試験(Acute Stroke or Transient Ischaemic Attack Treated With Ticagrelor and Aspirin for Prevention of Stroke and Death)は、軽症の脳卒中患者を対象にアスピリンとDAPTを比較した最大規模のランダム化比較試験です。この試験では、アスピリン単独療法と、クロピドグレルではなくアスピリン+チカグレロルを比較しました。試験結果より、虚血性脳卒中やTIA後の抗血栓療法の最適化に対する関心が改めて高まりました。

そこで今回は、軽症の虚血性脳卒中またはハイリスクのTIA患者の脳卒中再発予防について、アスピリン+P2Y12阻害薬の安全性と有効性をアスピリン単独と比較したランダム化比較試験4件のメタ解析の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.120.033033より引用

4つの試験*、合計21,459例の患者が対象となった。DAPTはアスピリン単独投与と比較して、脳卒中再発のリスクは低いが(RR 0.76、95%CI 0.68〜0.83; P<0.001、I2=0%)、大出血イベントのリスクは高いことが明らかとなりました(RR 2.22、95%CI 1.14〜4.34、P=0.02、I2=46.5%)。

DAPTを受けた患者は、主要な心血管イベントの有害事象(RR 0.76、95%CI 0.69〜0.84、P<0.001、I2=0%)および虚血性イベントの再発(RR 0.74、95%CI 0.67〜0.82、P<0.001、I2=0%)のリスクが低いことが明らかとなりました。

*FASTER 2007、CHANCE 2013、POINT 2018、THALES 2020

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アスピリンとP2Y12阻害剤を併用する二重抗血小板療法(DAPT)は、急性冠症候群(ACS)患者における抗血栓療法の中心となっています。特にPCI後の血栓塞栓イベントの予防にDAPTが行われています。一方で、脳梗塞やTIA患者におけるDAPTについては、有効性や安全性が明確にされていません。

さて、患者21,459例を対象とした4件のランダム化比較試験のメタ解析の結果、DAPTはアスピリン単独投与と比較して、脳卒中再発のリスクを低下し、大出血イベントのリスクを増加させることが明らかとなりました。一方、出血性脳卒中(RR 1.82、95%CI 0.83〜3.98、P=0.13、I2=14.7%)および全死亡(RR 1.30、95%CI 0.90〜1.89、P=0.13、I2=14.7%)のリスクには差がありませんでした。とはいえ、リスクは増加傾向ですので、今後の試験結果によっては、出血性脳卒中や死亡リスクが増加するかもしれません。

出血リスクの高くない脳梗塞やTIA患者におけるDAPTは有益かもしれませんが、出血リスクの高い患者においては、リスクが益を上回るかもしれません。

今後の試験結果に期待。

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✅まとめ✅ 高リスクの一過性虚血発作または軽度・中等度の虚血性脳卒中の24時間以内の短期DAPTは、アスピリン単独投与と比較して、大出血のリスクを犠牲にして、脳卒中の再発リスクを減少させることがわかった。

根拠となった試験の抄録

背景と目的:一過性脳虚血発作や虚血性脳卒中後の血栓イベントを予防するには抗血小板療法が重要である。

方法:急性脳梗塞や一過性脳虚血発作の患者において、短期のDAPT(アスピリン+P2Y12阻害薬を大3ヵ月間投与)を早期に開始した場合とアスピリン単独投与の結果を比較したランダム化比較試験のシステマティックレビューと試験レベルのメタアナリシスを行った。
有効性の主要評価項目は脳卒中の再発リスク、安全性の主要評価項目は大出血の発生率でした。
副次評価項目は、あらゆる虚血性脳卒中、出血性脳卒中、主要心血管系有害事象、および全死亡のリスクであった。
プールされたリスク比(RR)とCIはrandom-effectsモデルを用いて算出された。

結果:4つの試験、合計21,459例の患者が対象となった。DAPTはアスピリン単独投与と比較して、脳卒中再発のリスクは低かったが(RR 0.76、95%CI 0.68〜0.83; P<0.001、I2=0%)、大出血イベントのリスクは高かった(RR 2.22、95%CI 1.14〜4.34、P=0.02、I2=46.5%)。
DAPTを受けた患者は、主要な心血管イベントの有害事象(RR 0.76、95%CI 0.69〜0.84、P<0.001、I2=0%)および虚血性イベントの再発(RR 0.74、95%CI 0.67〜0.82、P<0.001、I2=0%)のリスクが低かった。

結論:高リスクの一過性虚血発作または軽度・中等度の虚血性脳卒中の24時間以内の短期DAPTは、アスピリン単独投与と比較して、大出血のリスクを犠牲にして、脳卒中の再発リスクを減少させることがわかった。

引用文献

Dual Antiplatelet Therapy Versus Aspirin in Patients With Stroke or Transient Ischemic Attack: Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
Kirtipal Bhatia et al.
Stroke. 2021 Jun;52(6):e217-e223. doi: 10.1161/STROKEAHA.120.033033. Epub 2021 Apr 27.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33902301/

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