2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害剤と網膜静脈閉塞症のリスク (PSマッチコホート研究; Diabetes Care. 2021)

business child money doctor 05_内分泌代謝系
Photo by Pavel Danilyuk on Pexels.com

2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬と網膜静脈閉塞症の発症リスクは?

網膜静脈閉塞症は、主に高血圧や糖尿病による動脈硬化を原因として起こります。 網膜静脈閉塞症になると、眼底出血や黄斑浮腫のリスクも高まることが知られています。

SGLT2阻害薬は、尿中にグルコースを排泄することから、尿量を増加させることが知られていますが、これに伴い体内で虚血状態を引き起こす可能性があります。

そこで、SGLT2阻害薬と網膜静脈閉塞症の発症リスクを検討したコホート研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

2.57年の追跡期間中、SGLT2阻害剤とoGLDで治療を受けた患者における網膜静脈閉塞症の発症率は、それぞれ1,000人年あたり2.19人と1.79人でした。

SGLT2阻害剤その他の血糖低下薬
oGLD)
網膜静脈閉塞症の発症率2.19人 /1,000人年1.79人 /1,000人年
HR 1.264
(95%CI 1.056〜1.513)

SGLT2阻害剤の新規使用は、oGLD使用と比較して、網膜静脈閉塞症のリスク増加と関連していました。
☆HR 1.264 、95%CI 1.056〜1.513

サブグループ解析では、年齢と推定糸球体濾過量(eGFR)について、SGLT2阻害剤との有意な交互作用が認められました。網膜静脈閉塞症のHRは、60歳以上の患者とeGFRが60 mL/min/1.73m2未満の患者で、その他の患者よりも高いことが示されました。

コメント

糖尿病は心血管リスクが高いことから、このリスクを低下させる薬剤の使用が求められます。血糖降下薬としては、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体刺激薬あるいはナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬による心血管リスク低下作用が示されていることから、米国や欧州など海外の診療ガイドラインにおいては、これらの薬剤の使用が推奨されています。

以前からSGLT2阻害薬は、その作用機序から体内虚血による脳卒中リスク増加の懸念に関心が寄せられていますが、明確なリスクとしての報告はなされていません。これと同様に、網膜静脈閉塞症についてもリスク増加の懸念がありますが、相関関係についての報告はほとんどありません。

さて、本試験結果によれば、SGLT2阻害薬の新規使用は、他の血糖降下薬の使用開始と比較して、網膜静脈閉塞症のリスクを有意に増加させる事が明らかとなりました。コホート研究であることから、あくまでも仮説生成的な結果ではありますが、作用機序からもリスク増加について矛盾はないように捉えられます。とはいえ、網膜静脈閉塞症のリスク増加は、HR 1.264 (95%CI 1.056〜1.513)であることから、リスク増加の程度はそこまで大きくないのかもしれません。

photo of gray cat looking up against black background

✅まとめ✅ 2.57年の追跡期間中、SGLT2阻害薬の新規使用は、他の血糖低下薬と比較して、網膜静脈閉塞症のリスクを増加させるかもしれない

根拠となった試験の抄録

目的:韓国の国民健康保険サービスのデータを用いて、ナトリウム-グルコース・コトランスポーター2(SGLT2)阻害剤の使用と網膜静脈閉塞症との関連を評価すること。

研究デザインと方法:実薬対照、新規ユーザーデザイン、2014年から2017年の全国データを用いた。1:1の傾向スコアマッチに基づき、SGLT2阻害薬の新規ユーザー47,369例と他の血糖低下薬(oGLD)のユーザー47,369例を対象とした。
マッチさせたサンプルでは、Cox比例ハザードモデルを用いて、網膜静脈閉塞症発症のハザード比(HR)と95%CIを推定した。主要なアウトカムに基づいて、探索的なサブグループ解析を行った。

結果:2.57年の追跡期間中、SGLT2阻害剤とoGLDで治療を受けた患者における網膜静脈閉塞症の発症率は、それぞれ1,000人年あたり2.19人と1.79人であった。
SGLT2阻害剤の新規使用は、oGLD使用と比較して、網膜静脈閉塞症のリスク増加と関連していた。
☆HR 1.264 、95%CI 1.056〜1.513
サブグループ解析では、年齢と推定糸球体濾過量(eGFR)について、SGLT2阻害剤との有意な交互作用が認められた。網膜静脈閉塞症のHRは、60歳以上の患者とeGFRが60 mL/min/1.73m2未満の患者で、その他の患者よりも高かった。

結論:マッチドコホート研究において、SGLT2阻害薬は網膜静脈閉塞症のリスクを有意に増加させることがわかった。高齢者と慢性腎臓病患者は網膜静脈閉塞症のリスクが高かった。

引用文献

Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors and Risk of Retinal Vein Occlusion Among Patients With Type 2 Diabetes: A Propensity Score-Matched Cohort Study
Min-Kyung Lee et al. PMID: 34301735 DOI: 10.2337/dc20-3133
Diabetes Care. 2021 Jul 22;dc203133. doi: 10.2337/dc20-3133. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34301735/

関連記事

【アジア2型糖尿病患者における白内障手術後の糖尿病性網膜症リスクはどのくらいですか?(人口ベース後向きコホート研究; JAMA Netw Open. 2020)】

【1型糖尿病患者における厳格な血糖コントロールにより網膜症を防げますか?(RCT; DCCT trial; Arch Ophthalmol. 1998)】

【DPP4阻害薬は糖尿病性網膜症のリスクとなりますか?(Diabetes Metab. 2018)】

【2型糖尿病患者における眼関連アウトカムに対するSGLT2阻害薬の効果はどのくらいですか?(SR&MA; Diabetes Obes Metab. 2020)】

コメント

タイトルとURLをコピーしました