妊婦に対するmRNA COVID-19ワクチンはどのくらい安全ですか?(データベース研究; NEJM 2021)

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妊婦におけるmRNA COVID-19ワクチンの安全性は?

米国で最初に販売されたコロナウイルス感染症2019(COVID-19)ワクチンは、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンであり、BNT162b2(Pfizer-BioNTech)とmRNA-1273(Moderna)でした。

これらのmRNA COVID-19ワクチンの有効性・安全性を検証した臨床試験では、妊婦は除外されており、認可時には妊娠中の安全性に関する限られたヒトデータしか入手できませんでした。しかし、COVID-19に罹患した妊婦は、非妊娠者と比較して、重篤な疾患(例:集中治療室への入院、体外式膜灌流、人工呼吸など)や死亡のリスクが高くなることが報告されています(CDC Morbidity and Mortality Weekly Report :リンク)。さらに、COVID-19に罹患した妊婦では、COVID-19に罹患していない妊婦に比べて、早産などの妊娠中の合併症のリスクが高くなる可能性があります(BMJ 2020)。米国疾病予防管理センター(CDC)およびACIPは、米国産科婦人科学会および米国小児科学会と協力して、COVID-19ワクチンを妊婦に接種してはならないとするガイダンスを発表しました(CDCおよびACIP米国産科婦人科学会米国小児科学会)。

mRNA COVID-19ワクチンの安全性を明らかにするためには、妊婦を対象とした承認後のモニタリングが必要であり、ワクチンの安全性プロファイルを確立することが重要です。

そこで今回は、米国のワクチン安全性監視システムを利用して得られた妊娠中のmRNA COVID-19ワクチンの安全性に関する研究結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

米国の3つのワクチン安全性監視システム(「v-safe after vaccination health checker」サーベイランスシステム、「v-safe pregnancy registry」、「Vaccine Adverse Event Reporting System(VAERS)」)を利用した本研究では、16~54歳の参加者のデータのうち、合計35,691例が妊婦でした。

注射部位の痛みは、妊娠していない女性よりも妊婦の方が多く報告され、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱の報告頻度は低いことが示されました。

データベース「v-safe妊婦レジストリ」に登録された3,958例のうち、827例が妊娠を完了し、そのうち115例(13.9%)が妊娠喪失、712例(86.1%)が生児を出産しました(ただし、ほとんどが妊娠第3期にワクチンを接種)。

新生児の有害なアウトカムには、早産(9.4%)、妊娠期間に対して体格が小さい(3.2%)などがあったが、新生児死亡は報告されなかった。

直接的な比較はできませんが、COVID-19のワクチンを接種して妊娠を完了した人の妊娠および新生児の有害事象の割合の計算値は、COVID-19のパンデミック以前に実施された妊娠中の女性を対象とした研究で報告された発生率と同様でした。

VAERSに報告された妊娠関連有害事象221件のうち、最も頻繁に報告された事象は自然流産(46例)でした。

コメント

COVID-19のパンデミックは一向に終息する気配がありません。有効性が示されている治療薬も限られているため、罹患しないよう予防的戦略の構築が求められています。この予防戦略の一つとしてワクチン接種が重要であり、すべてのヒトを対象とした安全性の検証が急務です。

特に妊婦への安全性の検証は必須ですが、倫理的側面から前向きの臨床試験を実施することは困難です。そこでデータベース研究によるコホート研究の利用が多くなされてきました。

さて、今回の試験結果によれば、あくまでも予備的な報告ではありますが、妊婦に対するmRNA COVID-19ワクチンの安全性の懸念は認められませんでした。ただし、本研究に登録された妊婦は、ほとんどが妊娠第3期にワクチンの接種を受けていました。安全性の懸念が最も高まるのは妊娠第1期であることから、更なる検証が必要ではありますが、少なくとも妊娠第3期においては、mRNA COVID-19ワクチン非接種の妊婦と同様な安全性プロファイルであると考えられます。

過度にmRNA COVID-19ワクチンを恐れる必要はなさそうです。

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✅まとめ✅ 予備的な調査結果では、mRNAのCOVID-19ワクチンを接種した妊婦に明らかな安全性のシグナルは見られなかった。しかし、そのほとんどが妊娠第3期にワクチンを接種した参加者であった。

根拠となった論文の抄録

背景:米国では多くの妊婦がメッセンジャーRNA(mRNA)コロナウイルス感染症2019(COVID-19)ワクチンを接種しているが、妊娠中の安全性に関するデータは限られている。

方法:2020年12月14日から2021年2月28日まで、「v-safe after vaccination health checker」サーベイランスシステム、「v-safe pregnancy registry」および「Vaccine Adverse Event Reporting System(VAERS)」のデータを用いて、妊婦におけるmRNA COVID-19ワクチンの初期安全性の特徴を明らかにした。

結果:16~54歳のv-safe参加者のうち、合計35,691例が妊婦だった。注射部位の痛みは、妊娠していない女性よりも妊婦の方が多く報告され、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱の報告頻度は低かった。
v-safe妊婦登録に登録された3,958例のうち、827例が妊娠を完了し、そのうち115例(13.9%)が妊娠喪失、712例(86.1%)が生児を出産した(ほとんどが妊娠第3期にワクチンを接種した参加者)。
新生児の有害な転帰には、早産(9.4%)、妊娠期間に対して体格が小さい(3.2%)などがあったが、新生児死亡は報告されなかった。
直接的な比較はできないが、COVID-19のワクチンを接種して妊娠を完了した人の妊娠および新生児の有害事象の割合の計算値は、COVID-19のパンデミック以前に実施された妊娠中の女性を対象とした研究で報告された発生率と同様でした。VAERSに報告された妊娠関連有害事象221件のうち、最も頻繁に報告された事象は自然流産(46例)であった。

結論:予備的な調査結果では、mRNAのCOVID-19ワクチンを接種した妊婦に明らかな安全性のシグナルは見られなかった。しかし、母体、妊娠、乳児の転帰を知るためには、妊娠初期にワクチンを接種した多数の女性の追跡調査を含む、より縦断的な追跡調査が必要である。

引用文献

Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons – PubMed
Tom T Shimabukuro et l.
N Engl J Med. 2021 Apr 21. doi: 10.1056/NEJMoa2104983. Online ahead of print.
— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33882218/

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