2型糖尿病の高齢者においてもGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬は有効なのか?
GLP-1受容体作動薬及びSGLT2阻害薬は、比較的新しい糖尿病治療薬です。これらの薬剤は、脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベント、死亡リスクを低下させることが明らかとなっています。しかし、いずれの試験においても患者層は中高年であり、高齢患者においても同様の効果が得られるのかについては不明です。
そこで今回は、65歳以上の高齢の2型糖尿病患者を対象としたメタ解析の結果をご紹介します。
試験結果から明らかになったことは?
合計11の研究(患者 93,502例)が含まれました。その結果、GLP-1受容体作動薬は、65歳以上の高齢者において、主要心血管系有害事象(MACE)を減少させ、MACEの構成要素である心血管死、脳卒中、心筋梗塞をも減少させました。
同じ年齢のサブグループでは、SGLT2阻害剤はMACEを減少させましたが、MACEの構成要素には影響を与えませんでした。また、SGLT2阻害剤は、心不全による入院を減少させ(HR 0.62、95%CI 0.51〜0.76)、65歳未満の患者では明らかではありませんでしたが、腎不全の複合エンドポイントを減少させました(HR 0.57、95%CI 0.43〜0.77)。75歳以上の患者を対象としたメタアナリシスでも、同様の結果が得られました。
GLP-1受容体作動薬 ハザード比(95%CI) | SGLT2阻害薬 ハザード比(95%CI) | |
MACE | 0.86(0.80〜0.92) | 0.90(0.83〜0.98) |
本試験はメタ解析であることから、個々の患者背景が考慮されていません。また白人は、日本人と比較して体格が大きいだけでなく、心血管イベントの発生リスクが高いことも報告されています。したがって、本試験結果を日本人へ外挿するには、やや結果を割り引いた方が良いと考えられます。
とはいえ、高齢者層においても、GLP-1受容体作動薬あるいはSGLT2阻害薬により心血管イベントの発生リスクが低下する結果は評価に値すると考えます。どのような患者で利益が最大化するのか個別化を慎重に行う必要があると考えます。
✅まとめ✅ 65歳以上の高齢の糖尿病患者において、GLP-1受容体作動薬はMACEとその構成要素を減少させ、SGLT2阻害薬はMACEおよび心不全と腎臓のアウトカムを減少させた
根拠となった論文の抄録
目的:高齢の2型糖尿病患者において,グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)およびナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害薬の心血管への影響を評価する。
方法:PubMed、Embase、Cochrane libraryを2020年11月までに検索し、高齢の2型糖尿病患者を対象としたGLP-1 RAまたはSGLT2阻害薬の心血管アウトカム試験の結果を報告した。異なる年齢のサブグループカテゴリーに対してランダム効果メタアナリシスを行った。
結果:合計11の研究(患者 93,502例)が含まれた。その結果、GLP-1 RAは、65歳以上の高齢者において、主要心血管系有害事象(MACE)(ハザード比0.86、95%CI 0.80〜0.92)、心血管死、脳卒中、心筋梗塞を減少させた。同じ年齢のサブグループでは、SGLT2阻害薬はMACEを減少させたが(HR 0.90、95%CI 0.83〜0.98)、MACEの構成要素には影響を与えなかった。また、SGLT2阻害薬は、心不全による入院を減少させ(HR 0.62、95%CI 0.51〜0.76)、65歳未満の患者では明らかではなかったが、腎不全の複合エンドポイントを減少させた(HR 0.57、95%CI 0.43〜0.77)。75歳以上の患者を対象としたメタアナリシスでも、同様の結果が得られた。
結論:高齢の糖尿病患者において、GLP-1 RAはMACEとその構成要素を減少させた。SGLT2阻害薬は、MACEおよび心不全と腎臓のアウトカムを減少させた。
引用文献
GLP-1 receptor agonists and SGLT2 inhibitors for older people with type 2 diabetes: A systematic review and meta-analysis
Thomas Karagiannis et al. PMID: 33705820 DOI: 10.1016/j.diabres.2021.108737
Diabetes Res Clin Pract. 2021 Mar 8;174:108737. doi: 10.1016/j.diabres.2021.108737. Online ahead of print.
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