プロキサルタミドは、軽度~中等度のCOVID-19患者におけるウイルスクリアランスを有意に促進し、臨床的寛解までの時間を短縮する?(DB-RCT; Cureus. 2021)

woman in blue long sleeve shirt sitting on white sofa chair 未分類
Photo by cottonbro on Pexels.com
この記事は約7分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

Proxalutamide(プロキサルタミド)とは?

Proxalutamide(プロキサルタミド)は、Kintor Pharmaceutical社が開発しているアンドロゲン受容体拮抗薬です。日本では承認されていません。

SARS-CoV-2感染により引き起こされるCOVID-19において、SARS-CoV-2は、膜貫通型プロテアーゼセリン2(TMPRSS2)によるウイルススパイクタンパク質の修飾に依存し、II型肺炎球へ侵入することが報告されています。

アンドロゲン性脱毛症(AGA)男性において、COVID-19が過剰発現していること、さらに抗アンドロゲン薬(例:5α還元酵素阻害薬)服用中の男性で重度COVID-19を発症する可能性が低いことが報告されています。

今回ご紹介するのは、軽度~中等度のCOVID-19患者におけるプロキサルタミドの効果を検証したランダム化比較試験です。

研究結果から明らかになったことは?

236例(女性108例、男性128例)を対象とした研究結果によれば、投与7日目において、SARS-CoV-2はrtPCR(cT>40)で非検出となり、プロキサルタミド群では82%、プラセボ群では31%の被験者で検出されませんでした(P<0.001)。
平均臨床寛解期間は、プロキサルタミド投与群 4.2±5.4日であり、プラセボ群の21.8±13.0日に対し、有意に短かいことが明らかになりました(P<0.001)。

結果の再現性の検証が待たれますが、これまでの仮説を検証した重要な試験であると捉えています。軽度から中等度COVID-19患者における有効や治療薬はほぼありません。レムデシビルやファビピラビル等の抗ウイルス薬による治療効果の結果は、臨床試験により異なり、一致していないからです。

現状ではワクチンによる集団免疫の獲得が待たれますが、ワクチンが普及するまでには年単位で時間がかかると考えられますので、COVID-19に対する治療薬の開発は必要です。今後の研究結果に期待。

photo of gray cat looking up against black background

✅まとめ✅ 軽度から中等度COVID-19患者に対するプロキサルタミド投与は、プラセボ群と比較して7日目のウイルスクリアランスを有意に促進し、臨床的寛解までの期間も有意に短縮された。

根拠となった論文の抄録

背景:II型肺炎球への重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)侵入は、ヒト細胞表面に発現する膜貫通型プロテアーゼセリン2(TMPRSS2)によるウイルススパイクタンパク質の修飾に依存している。
TMPRSS2はアンドロゲン受容体によって制御されており、SARS-CoV-2の感染性はアンドロゲンの状態と表現型に間接的に依存している。
以前、我々は、アンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia, AGA)の影響を受けた男性において、重症コロナウイルス疾患2019(COVID-19)が過剰発現していることを報告した。さらに、抗アンドロゲン薬、例えば5αリダクターゼ阻害薬(5-alpha-reductase inhibitors, 5ARis)を服用している男性では、重度のCOVID-19を発症する可能性が低いことを報告してきました。
ここでは、アンドロゲン受容体拮抗薬であるプロキサルタミドが、SARS-CoV-2 感染症の被験者に有益な治療法となるかどうかを検証することを目的とした。

方法:COVID-19 を対象としたプロキサルタミドの二重盲検ランダム化プロスペクティブ試験に男女の被験者を募集した。SARS-CoV-2の陽性が確認された軽度から中等度の非入院患者を対象に、プロキサルタミド200mg/日またはプラセボを投与した。試験のエンドポイントは寛解時間(日数)と、治療後7日目にSARS-CoV-2陰性が確認された被験者の割合とした。SARS-CoV-2陰性とは、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(rtPCR)により決定された濃度時間(Ct)が40を超えることで定義された。

結果:本試験では、236例(女性108例、男性128例)を対象とし、171例がプロキサルタミド群にランダム割り付けされ、65例がプラセボ群に割り付けられた。7日目に、SARS-CoV-2はrtPCR(cT>40)で非検出となり、プロキサルタミド群では82%、プラセボ群では31%の被験者で検出されなかった(P<0.001)。
プロキサルタミド投与群の平均臨床寛解期間は、プラセボ群21.8±13.0日に対し、4.2±5.4日であった(P<0.001)。

結論:軽度から中等度のCOVID-19患者では、プロキサルタミドはプラセボ群と比較して7日目のウイルスクリアランスを有意に促進した。さらに、プロキサルタミド投与群では、プラセボ群と比較して臨床的寛解までの期間が有意に短縮された。

引用文献

Proxalutamide Significantly Accelerates Viral Clearance and Reduces Time to Clinical Remission in Patients with Mild to Moderate COVID-19: Results from a Randomized, Double-Blinded, Placebo-Controlled Trial
Flavio A Cadegiani et al.

Cureus. 2021 Feb 22;13(2):e13492. doi: 10.7759/cureus.13492.
PMID: 33633920 PMCID: PMC7899267 DOI: 10.7759/cureus.13492

関連記事

【COVID-19入院患者におけるロピナビル/リトナビルの効果はどのくらいですか?】

【中等度から重度COVID-19に対する標準治療へのコルヒチン追加効果はどのくらいですか?】

中等度から重度COVID-19に対する標準治療へのコルヒチン追加効果はどのくらいですか?
コルヒチンによる抗炎症作用ここ数年、コルヒチンの抗炎症作用が見直され、心筋梗塞や脳卒中への応用について検証されています。COVID-19はサイトカインストームを引き起こす、強力な炎症生疾患の1つです。特に重症患者においてはサイトカインストー...

【COVID-19患者に対する治療への免疫グロブリン(IVIG)の上乗せ効果はどのくらいですか?】

COVID-19患者の支持療法への免疫グロブリン(IVIG)上乗せ効果はどのくらいですか?
COVID-19に対する免疫グロブリンの効果とは?COVID-19ではサイトカインストームと呼ばれる免疫の暴走化が引き起こされ、炎症症状が悪化します。その結果、体内で免疫細胞により正常な細胞が攻撃されてしまいます。静脈内免疫グロブリン(In...

【COVID-19予防のための予防的抗凝固療法の早期開始は有効ですか?】

【軽度~中等度COVID-19に対する経口RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬ファビピラビルの有効性と安全性はどのくらいですか?】

【COVID-19入院患者に対するヒドロキシクロロキンの効果はどのくらいですか?】

コメント

タイトルとURLをコピーしました