重度COVID-19患者に対する通常ケアへのルキソリチニブ追加の効果はどのくらいですか?(単盲検RCT; Phase 2; J Allergy Clin Immunol. 2020)

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Ruxolitinib in Treatment of Severe Coronavirus Disease 2019 (COVID-19): A Multicenter, Single-Blind, Randomized Controlled Trial

Yang Cao et al.

J Allergy Clin Immunol. 2020 May 26;S0091-6749(20)30738-7. doi: 10.1016/j.jaci.2020.05.019. Online ahead of print.

PMID: 32470486

PMCID: PMC7250105

DOI: 10.1016/j.jaci.2020.05.019

Keywords: COVID-19; Ruxolitinib; cytokine storm; efficacy; randomized controlled trial; safety.

背景

蓄積されたエビデンスから、JAK阻害薬は迅速な調査が必要な治療標的として提案されている。

目的

本研究の目的は,JAK 阻害薬の有効性と安全性を評価することである。本研究では、JAK1/2 阻害剤である ルキソリチニブの COVID-19 に対する有効性と安全性を検討した。

方法

重度の COVID-19 患者を対象に、前向き、多施設、単盲検、ランダム化比較第 II 相試験を実施した。

主要評価項目:ランダム化(Day 0)から臨床的改善までの時間とし、ランダム化(Day 0)から順序尺度7項目で2ポイントの改善または本番の退院(Day end)までの時間と、Day 14時のフォローアップCT検査の改善率と定義した。

結果

・重度のCOVID-19患者を対象とした前向き多施設共同単盲検比較第II相試験を実施した。

・患者43例を、通常ケア+ルキソリチニブ群(22例)または通常ケア+プラセボ(21例)にランダム(1:1)に割り付けた。

・ルキソリチニブ群から2例(不適格1例、同意撤回1例)を除外した後、介入群20例、対照群21例を本試験に組み入れた。

・COVID-19の重症患者において、通常ケア+ルキソリチニブによる治療は、臨床的改善が数値的に早かったものの、臨床的改善の有意な促進とは関連していなかった。

・ラキソリチニブ投与群の患者18例(90%)は、対照群の患者13例(61.9%)と比較して、14日時点でCT所見の改善を示した(P = 0.0495)。

・対照群では患者3例が呼吸不全で死亡し、28日時点での全死亡率は14.3%であったが、ルキソリチニブ群では死亡した患者はいなかった。

・ルキソリチニブは低毒性で忍容性が高く、新たな安全性のシグナルは認められなかった。

・サイトカイン7種類のレベルは、対照群と比較してルキソリチニブ群で有意に低下していた。

結論

統計的な差は認められなかったが、ルキソリチニブ投与群では数値的に臨床改善の早さが認められた。

胸部 CT の有意な改善、リンパ球減少からの早期回復、良好な副作用プロファイルは、より大きな集団でのルキソリチニブの有効性を試験するための将来の試験に向けての励みとなり、有益な情報となった。

コメント

JAK1/2は炎症カスケードに関与しており、COVID-19において活性化している可能性が報告されています。したがって、JAK阻害薬であるルキソリチニブ(ジャカビ®️)はCOVID-19に対する有効な治療薬である可能性が考えられます。

さて、本試験結果によれば、COVID-19に対して、標準治療へのルキソリチニブ追加は、プラセボ追加と比較して、臨床的改善までの時間を短縮したものの、統計的な差は認められなかったようです。ただし、サンプルサイズが小さかった可能性があります。本試験では、アウトカムによりプラセボと比較して、改善が認められている部分もあり、特に呼吸不全による死亡については、ルキソリチニブで減少している可能性があります。第2相試験ですので、第3相を実施する可能性は充分にあります。むしろ、本当に効果があるのかないのか明らかにするためにも、充分な試験規模かつ前向きの二重盲検試験を実施した方が良いと思います。

ちなみに今回、用いられたルキソリチニブの用量は、日本で承認されている用量範囲内です。ただし、COVID-19の適応はありませんので、日本国内で使用する場合は適応外使用(あるいは人道的使用)となります。

日本におけるジャカビ®️の用法及び用量

骨髄線維症の場合

通常、成人には本剤を1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。用量は、ルキソリチニブとして1回5mg〜25mgの範囲とし、患者の状態により適宜増減する。

真性多血症の場合

通常、成人にはルキソリチニブとして1回10mgを開始用量とし、1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。患者の状態により適宜増減するが、1回25mg1日2回を超えないこと。

✅まとめ✅ COVID-19に対する治療において、標準治療へのルキソリチニブ追加は、プラセボと比較して統計的な差は認められなかったが、数値的な臨床改善の早さが認められた

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