HER2陽性乳がん患者におけるハーセプチン®️誘発心毒性はアーチスト®️やロンゲス®️で予防できますか?(RCT; JACC 2019)

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Randomized Trial of Lisinopril Versus Carvedilol to Prevent Trastuzumab Cardiotoxicity in Patients With Breast Cancer.

Guglin M, et al.
J Am Coll Cardiol. 2019.
PMID: 31171092

NCT01009918

【背景】

トラスツズマブはヒト上皮成長因子受容体2型(HER2)陽性乳がんに非常に有効であるが、左室駆出率の低下と関連している。

【目的】

本研究の目的は、アンギオテンシン変換酵素阻害薬またはβ遮断薬がトラスツズマブによる心毒性の発生率を低下させる時期(左腹側駆出率の低下率が10%を超える、または下限50%を下回った場合は5%)を決定することである。

【方法】

本二重盲検多施設共同プラセボ対照試験では、トラスツズマブで12か月間治療したHER2陽性乳がん患者における心毒性および治療中断を2年間にわたって評価した。試験参加者はリシノプリル群、カルベジロール群、またはプラセボ群にランダム化された。

【結果】

・研究には、51歳±10.7歳の468人の女性が含まれた。完全コホートでは、心毒性は3群で同程度であり、プラセボ投与群の32%、カルベジロール投与群の29%、およびリシノプリル投与群の30%で発生した。 ・アントラサイクリン治療の患者では、心毒性の発生率がリシノプリル群(37%)およびカルベジロール群(31%)よりもプラセボ群(47%)の方が高かった。 ・心毒性のない生存率は、カルベジロール(ハザード比 =0.49, 95%信頼区間 0.27〜0.89, p = 0.009)およびリシノプリル(ハザード比 =0.53, 95%信頼区間 0.30〜0.94, p = 0.015)の方がプラセボと比べて長かった。 ・全コホートにおけるアントラサイクリン治療中の患者では,アンジオテンシン変換酵素阻害剤またはβ遮断薬のいずれかを用いた積極的治療を受けている患者は、プラセボ投与群よりもトラスツズマブによる治療中断が少なかった。

【結論】

アントラサイクリン系薬剤で治療されたHER2陽性乳癌患者において、トラスツズマブ投与患者における心毒性に対しリシノプリルおよびカルベジロールともに予防的であった。 このような患者にとって、リシノプリルまたはカルベジロールは、トラスツズマブ投与中断を最小限とするために考慮されるべきである。

【コメント】

アブストのみ。

基本的にハーセプチン®️(トラスツズマブ)治療前にアントラサイクリン系薬剤で治療を受けていることが大半であると考えられます。

またアントラサイクリン系薬剤およびトラスツズマブは、副作用として心不全等を含む心毒性が報告されています。

しかし、トラスツズマブの副作用は可逆的なものが多く、アントラサイクリン系薬剤の治療歴の有無により心毒性の発現率が異なることも示唆されています(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/16495393/)。

さて、本研究ではリシノプリルやβ遮断薬が薬剤誘発の心毒性を予防できるか検討していました。結果としてはアントラサイクリン系薬剤を使用していた場合のトラスツズマブによる心毒性に対して予防的に作用している可能性が示唆された。

アントラサイクリン系薬剤による治療が必須なのか気になるところ。

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コメント

  1. […] HER2陽性乳がん患者におけるハーセプチン®️誘発心毒性はアーチスト®… […]

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