腎機能障害者に対するメトトレキサート使用は禁忌であるが、、、
メトトレキサートは腎機能障害を有する患者に対して禁忌です。eGFRなど腎機能に応じた投与量調節の基準等もありません。したがって低用量のメトトレキサート(LD-MTX)であっても進行した慢性腎障害(CKD)では禁忌です。しかし、腎機能が正常範囲内または軽度〜中等度のCKDにおける腎臓の安全性はあまり明らかではありません。
そこで今回は、LD-MTXを用いたランダム化二重盲検プラセボ対照Cardiovascular Inflammation Reduction Trialの二次解析の結果をご紹介します。
本試験では、心血管疾患と糖尿病および/またはメタボリックシンドロームを有する成人を対象に、LD-MTXの経口投与(目標量15~20mg/週)またはプラセボが投与されました。また、すべての参加者は葉酸1mgを6日/週摂取しました。
試験結果から明らかになったことは?
合計2,391例の参加者がLD-MTXに、2,395例がプラセボにランダムに割り付けられました。ベースライン時の平均年齢は66歳、19%が女性、平均eGFRは80.0mL/min/1.73m2(54%がCKDステージ2、18%がCKDステージ3)でした(追跡期間:中央値23ヵ月)。
LD-MTX vs. プラセボ | |
最小二乗平均ΔeGFRの差 | 0.93mL/min /1.73m2 (95%CI 0.45~1.40) P<0.001 |
LD-MTX群はプラセボ群に比べeGFR低下が少ないことが示されました(ベースラインから治療開始時までの最小二乗平均ΔeGFRの差 0.93mL/min /1.73m2、95%信頼区間[95%CI] 0.45~1.40、P<0.001)。
LD-MTX群 | プラセボ群 | |
腎関連の有害事象 | 138件 (発生率[IR] 2.97/100人・年) | 184件 (IR 3.99/100人・年) |
ハザード比[HR] | HR 0.73 (95%CI 0.59〜0.91) | – |
安全性検査モニタリング中における腎臓のAEは、LD-MTX群で138件(発生率[IR] 2.97/100人・年)、プラセボ群で184件(IR 3.99/100人・年)でした(ハザード比[HR]0.73、95%CI 0.59〜0.91)。
コメント
関節リウマチなどに使用されるメトトレキサートは、腎機能障害患者に対して禁忌です。しかし、eGFRがどの程度であれば禁忌であるのか、また低用量のメトトレキサートであればCKD患者に対して使用できるのかについては充分に検討されていません。
さて、本試験結果によれば、ベースライン時に腎機能が正常または軽度〜中等度のCKDを有する患者において、LD-MTXの使用は、プラセボと比較してeGFRの低下が少ないことが示されました。また、腎関連の有害事象の発生についてはプラセボ群よりも低いことが示されました。
本試験はランダム化比較試験の二次解析であることから、あくまでも仮説生成的な結果です。追試が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ ベースライン時に腎機能が正常または軽度〜中等度のCKDを有する患者において、LD-MTXの使用は安全かもしれない。
根拠となった試験の抄録
背景:低用量メトトレキサート(LD-MTX)は進行した慢性腎障害(CKD)では禁忌であるが、腎機能が正常または軽度〜中等度のCKDにおける腎臓の安全性はあまり明らかでない。
方法:ランダム化二重盲検プラセボ対照Cardiovascular Inflammation Reduction Trialを用いて、eGFRと腎臓のAEについて二次解析を行った。心血管疾患と糖尿病および/またはメタボリックシンドロームを有する成人を、LD-MTXの経口投与(目標量15~20mg/週)またはプラセボにランダムに割り付けた。すべての参加者は葉酸1mgを6日/週摂取した。除外基準は、全身性リウマチ性疾患とクレアチニンクリアランス<40mL/minであった。ベースラインからの最小二乗平均ΔeGFRは、各試験訪問時に計算され、LD-MTXとプラセボのeGFRの差が比較された。Cox比例ハザードモデルを用いて、LD-MTXとプラセボの腎臓の有害事象の発生率を比較した。
結果:合計2,391例の参加者がLD-MTXに、2,395例がプラセボにランダムに割り付けられた。ベースライン時の平均年齢は66歳、19%が女性、平均eGFRは80.0mL/min/1.73m2(54%がCKDステージ2、18%がCKDステージ3)であった。追跡期間中央値は23ヵ月であった。LD-MTX群はプラセボ群に比べeGFRの低下が少なかった(ベースラインから治療開始時までの最小二乗平均ΔeGFRの差 0.93mL/min /1.73m2、95%信頼区間[95%CI] 0.45~1.40、P<0.001)。安全性検査モニタリング中における腎臓のAEは、LD-MTX群で138件(発生率[IR] 2.97/100人・年)、プラセボ群で184件(IR 3.99/100人・年)だった(ハザード比[HR]0.73、95%CI 0.59〜0.91)。
結論:これらの結果は、ベースライン時に腎機能が正常または軽度〜中等度のCKDを有する患者におけるLD-MTXの腎臓に対する安全性を実証するものであった。
キーワード:慢性炎症、免疫学、メトトレキサート、ランダム化比較試験
引用文献
Effect of Low-Dose Methotrexate on eGFR and Kidney Adverse Events: A Randomized Clinical Trial
Jeffrey A Sparks et al. PMID: 34551998 PMCID: PMC8638389 (available on 2022-12-01) DOI: 10.1681/ASN.2021050598
J Am Soc Nephrol. 2021 Sep 22;32(12):3197-3207. doi: 10.1681/ASN.2021050598. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34551998/
関連記事
【メトトレキサートはファイザー・バイオンテック社製BNT162b2 mRNA COVID-19ワクチンの免疫原性を阻害する(後向きコホート研究; Ann Rheum Dis. 2021)】
【関節リウマチに対するTNF阻害薬あるいはcsDMARDsによる漸減療法は、2年間の費用対効果においてどちらが優れていますか?(費用対効果分析; TARA trial; Ann Rheum Dis. 2020)】
コメント