尿酸降下療法で安全性に違いはあるのか?
高尿酸血症は、痛風、腎障害、心血管イベントを引き起こす可能性のある一般的な疾患です。高尿酸血症患者に対しては、生活習慣への介入(プリン体を多く含む飲食の摂取制限など)がうまくいかない場合、経口薬が主な治療法となります。
様々な尿酸降下療法の安全性を評価することは、臨床上の意思決定に不可欠です。
そこで今回は、経口尿酸降下療法の安全性を評価したネットワークメタ解析(NMA)の結果をご紹介します。
試験結果から明らかになったことは?
参加者23,868例を登録した試験32件が対象となりました。
治療関連の有害事象については、尿酸降下薬5剤とプラセボの間に統計学的な有意差は認められませんでした。
治療関連の有害事象の リスク比(95%Crl) | |
アロプリノール | 1.08(0.91〜1. 29) |
フェブキソスタット | 1.05(0.89〜1.25) |
レシヌラド | 1.19(0.85〜1.67) |
レシヌラド +キサンチンオキシダーゼ阻害剤 | 1.05(0.83〜1.32) |
トピロキソスタット | 1.01(0.83〜1.23) |
アロプリノール(リスク比(RR)1.08、95%信頼区間(CrI) 0.91〜1. 29)、フェブキソスタット(RR 1.05、95%CrI 0.89〜1.25)、lesinuradレシヌラド(RR 1.19、95%CrI 0.85〜1.67)、レシヌラドとキサンチンオキシダーゼ阻害剤の併用(RR 1.05、95%CrI 0.83〜1.32)、トピロキソスタット(RR 1.01、95%CrI 0.83〜1.23)でした。
トピロキソスタットは、プラセボと比較して肝障害リスクを増加させる可能性が高いことが示されました(RR 2.65、95%CI 1.24〜5.70、NNH 33.40)。
MACEの リスク比(95%Crl) | |
アロプリノール | 0.63(0.36〜1.34) |
フェブキソスタット | 0.69(0.38〜1.66) |
レシヌラドとXOIの併用 | 0.56(0.23〜1.85) |
MACEに関しては、アロプリノール(RR 0.63、95%CrI 0.36〜1.34)、フェブキソスタット(RR 0.69、95%CrI 0.38〜1.66)、レシヌラドとXOIの併用(RR 0.56、95%CrI 0.23〜1.85)の3つの尿酸降下薬とプラセボの間に統計的に有意な差は認められませんでした。
コメント
以前からフェブキソスタットによる心血管イベントのリスク増加の可能性が報告されています。しかし、研究によってはリスクは増加しないとする報告もあり、結果は一貫していません。
さて、本ネットワークメタ解析によれば、主要有害心血管イベント(MACE)に関して、アロプリノール、フェブキソスタット、レシヌラド(本邦未承認)+キサンチンオキシダーゼ阻害薬の併用、3つの尿酸降下薬とプラセボとの間に統計的な有意差は認められませんでした。全体的な有害アウトカムのリスク増加はない、あるいは少ないのかもしれません。
一方で、トピロキソスタットについては、心血管イベントを検証した試験はほぼありませんので、MACEリスクについては不明ですが、プラセボと比較して肝障害リスクを増加させる可能性が高いことが示されました。
これまでの報告から、フェブキソスタット使用によるMACEリスクの増加は認められていませんが個々のアウトカムを見ていくと、全死亡および心血管死亡でのリスク増加の可能性が認められています。論文の抄録からは詳細が分かりませんが、どのような患者で、いずれかのアウトカム発生が増加するのか検証した方が良いように思います。
✅まとめ✅ 治療関連の有害事象やMACEに対する効果には、統計的に有意な差は認められなかった。しかし、トピロキソスタットは肝障害のリスクを増加させる可能性が高いと考えられた。
根拠となった試験の抄録
目的:高尿酸血症は、痛風、腎障害、心血管イベントを引き起こす可能性のある一般的な疾患である。高尿酸血症患者に対しては、生活習慣への介入がうまくいかない場合、経口薬が主な治療法となる。様々な尿酸降下療法の安全性を評価することは、臨床上の意思決定に不可欠である。
我々はネットワークメタアナリシス(NMA)を構築し、経口尿酸降下療法の安全性を評価した。
方法:MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを2021年4月1日までに検索し、尿酸降下療法の安全性を検討したランダム化対照試験を検索した。言語制限は英語とした。尿酸降下薬の安全性を評価するために用いたアウトカムは、治療関連有害事象、肝障害、主要有害心血管イベント(MACE)の3つであった。
結果:参加者23,868例を登録した32件の試験が対象となった。治療関連の有害事象については、尿酸降下薬5剤とプラセボの間に統計学的な有意差は認められなかった。
アロプリノール(リスク比(RR)1.08、95%信頼区間(CrI) 0.91〜1. 29)、フェブキソスタット(RR 1.05、95%CrI 0.89〜1.25)、lesinuradレシヌラド(RR 1.19、95%CrI 0.85〜1.67)、レシヌラドとキサンチンオキシダーゼ阻害剤の併用(XOI、RR 1.05、95%CrI 0.83〜1.32)、トピロキソスタット(RR 1.01、95%CrI 0.83〜1.23)であった。
トピロキソスタットは、プラセボと比較して肝障害リスクを増加させる可能性が高かった(RR 2.65、95%CI 1.24〜5.70、NNH 33.40)。MACEに関しては、アロプリノール(RR 0.63、95%CrI 0.36〜1.34)、フェブキソスタット(RR 0.69、95%CrI 0.38〜1.66)、レシヌラドとXOIの併用(RR 0.56、95%CrI 0.23〜1.85)の3つの尿酸降下薬とプラセボの間に統計的に有意な差はなかった。介入の違いによる順位は、累積順位曲線(SUCRA)で描かれた。
結論:NMAを通じて、尿酸降下療法の安全性に関するいくつかのエビデンスを提供した。治療関連の有害事象やMACEに対する効果には、統計的に有意な差は認められなかった。しかし、トピロキソスタットは肝障害のリスクを増加させる可能性が高いと考えられた。
キーワード:肝障害、心血管主要有害事象、ネットワークメタアナリシス、治療関連有害事象、尿酸降下療法、キサンチンオキシダーゼ阻害剤
引用文献
The association between urate-lowering therapies and treatment-related adverse events, liver damage, and major adverse cardiovascular events (MACE): A network meta-analysis of randomized trials
Siliang Zhang et al. PMID: 34170566 DOI: 10.1002/phar.2609
Pharmacotherapy. 2021 Jun 25. doi: 10.1002/phar.2609. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34170566/
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