COVID-19が妊婦と新生児に与える影響は?
COVID-19が流行し始めた頃、妊娠中のリスクの正確な把握は不確かであり、それが妊婦の精神的健康に影響を与えていました。この問題は、妊娠前の他のコロナウイルス感染症(重症急性呼吸器症候群や中東呼吸器症候群など)の有害な影響が知られていることから、重要な意味を持っています。
そこで今回、INTERCOVIDと名付けられたコホート研究の結果をご紹介します。INTERCOVID試験では、COVID-19の診断を受けた妊婦と、COVID-19の診断を受けていない妊婦が同時に登録され、COVID-19と母子および新生児の転帰との関連性を評価されました。
試験結果から明らかになったことは?
18ヵ国の43病院が参加する前向き縦断的観察研究(INTERCOVID)において、COVID-19と診断された妊婦 706例とCOVID-19と診断されなかった妊婦 1,424例が登録されました。
本試験結果によれば、COVID-19診断を受けた女性は、下表のように様々なイベント発生のリスク増加と関連していました。
COVID-19の妊婦 (vs. 非COVID-19の妊婦) | |
子癇前症/子癇症 | RR 1.76、95%CI 1.27〜2.43 |
重症感染症 | RR 3.38、95%CI 1.63〜7.01 |
集中治療室入室 | RR 5.04、95%CI 3.13〜8.10 |
母体死亡率 | RR 22.3、95%CI 2. 88〜172 |
早産 | RR 1.59、95%CI 1.30〜1.94 |
医学的適応早産(治療的早産) | RR 1.97、95%CI 1.56〜2.51 |
重度新生児罹患率 | RR 2.66、95%CI 1.69〜4.18 |
重度周産期罹患率・死亡率 | RR 2.14、95%CI 1.66〜2.75 |
重度の母体合併症 | RR 2.56、95%CI 1.92〜3.40 |
新生児合併症 | RR 4.97、95%CI 2.11〜11.69 |
COVID-19の診断を受けた無症候性の女性では、母体の罹患率(RR 1.24、95%CI 1.00〜1.54)と子癇前症(RR 1.63、95%CI 1.01〜2.63)のリスクのみが高いままでした。
陽性と判定された女性(PCRで98.1%)のうち、54例(13%)の新生児が陽性でした。母乳育児(RR 1.10、95%CI 0.66〜1.85)ではなく、帝王切開分娩(RR 2.15、95%CI 1.18〜3.91)が新生児の検査陽性のリスク増加と関連していました。
コメント
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックは、終息する気配がありません。COVID-19により、特に高齢者では死亡リスクの増加が報告されていますが、妊婦に対する影響についての報告は充分ではありません。
さて、本試験結果によれば、妊娠中のCOVID-19は、重度の母体罹患率・死亡率および新生児合併症のリスク増加と関連していました。あくまでも相関関係ではありますが、母体だけでなく子供にも影響が示されていることから、妊娠している方は、より感染予防対策を実施することが良いのかもしれません。
✅まとめ✅ 妊娠中のCOVID-19は、重度の母体罹患率・死亡率および新生児合併症の一貫した大幅な増加と関連していた。
根拠となった論文の引用
試験の重要性:COVID-19と転帰との関連について、非感染の妊娠者と比較した詳細な情報が求められている。
目的:妊娠中のCOVID-19が母体および新生児のアウトカムに及ぼすリスクを、非感染の妊娠者と比較して評価すること。
試験設計、設定、および参加者:2020年3月から10月にかけて実施されたこのコホート研究では、18ヵ国の43施設が参加し、偏りを最小限にするために、各感染女性が確認された直後に、妊娠・出産のどの段階でも、同じレベルの医療機関で、2人のマッチしない連続した非感染女性が併合登録された。女性と新生児は退院まで追跡調査された。
曝露:妊娠中のCOVID-19は、COVID-19および/または放射線による肺所見の確認、または2つ以上の定義済みのCOVID-19症状によって決定された。
主要アウトカムと評価:主要アウトカム指標は、(母体および重度の新生児・周産期の)罹患率および死亡率の指標であり、これらの指標の個々の構成要素は副次的アウトカムであった。これらのアウトカムのモデルは、国、研究開始月、母親の年齢、および罹患歴で調整した。
結果:COVID-19と診断された妊婦 706例とCOVID-19と診断されなかった妊婦1,424例が登録され、全員がほぼ同様の人口統計学的特性を有していた(平均[SD]年齢 30.2[6.1]歳)。
妊娠初期の過体重は、COVID-19診断を受けた女性323例(48.6%)と、COVID-19診断を受けていない女性554例(40.2%)に認められた。
COVID-19診断を受けた女性は、子癇前症/子癇症(相対リスク[RR] 1.76、95%CI 1.27〜2.43)、重症感染症(RR 3.38、95%CI 1.63〜7.01)、集中治療室入室(RR 5.04、95%CI 3.13〜8.10)、母体死亡率(RR 22.3、95%CI 2. 88〜172)、早産(RR 1.59、95%CI 1.30〜1.94)、医学的適応早産(治療的早産:RR 1.97、95%CI 1.56〜2.51)、重度新生児罹患率(RR 2.66、95%CI 1.69〜4.18)、重度周産期罹患率・死亡率(RR 2.14、95%CI 1.66〜2.75)などであった。発熱と息切れの持続時間を問わず、重度の母体合併症(RR 2.56、95%CI 1.92〜3.40)および新生児合併症(RR 4.97、95%CI 2.11〜11.69)のリスク増加と関連していた。
COVID-19の診断を受けた無症候性の女性は、母体の罹患率(RR 1.24、95%CI 1.00〜1.54)と子癇前症(RR 1.63、95%CI 1.01〜2.63)のリスクのみが高いままであった。陽性と判定された女性(PCRで98.1%)のうち、54例(13%)の新生児が陽性であった。母乳育児(RR 1.10、95%CI 0.66〜1.85)ではなく、帝王切開分娩(RR 2.15、95%CI 1.18〜3.91)が新生児の検査陽性のリスク増加と関連していた。
結論と関連性:この多国間コホート研究では、COVID-19の診断を受けた妊婦と受けていない妊婦を比較すると、妊娠中のCOVID-19は、重度の母体罹患率・死亡率および新生児合併症の一貫した大幅な増加と関連していた。今回の知見は、推奨されるすべてのCOVID-19予防策を厳密に実施するよう、妊娠中の人や臨床医に注意を促すものである。
引用文献
Maternal and Neonatal Morbidity and Mortality Among Pregnant Women With and Without COVID-19 Infection: The INTERCOVID Multinational Cohort Study
José Villar et al.
JAMA Pediatr. 2021 Apr 22. doi: 10.1001/jamapediatrics.2021.1050. Online ahead of print.
— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33885740/
関連記事
【妊婦におけるCOVID-19の特徴とは?】
【妊婦に対するmRNA COVID-19ワクチンはどのくらい安全ですか?】
【ドンペリドンは妊婦へ安全に使用できますか?】
【第一期妊娠期間におけるH1抗ヒスタミン薬の使用は有害事象リスクとなりますか?】
【妊婦によるフェキソフェナジンの使用は胎児にどのような影響を与えますか?】
【妊婦へのデスロラタジン使用による胎児への副作用リスクはどのくらいですか?】
コメント