Effect of Suvorexant vs Placebo on Total Daytime Sleep Hours in Shift Workers: A Randomized Clinical Trial
Jamie M Zeitzer et al.
JAMA Netw Open. 2020 Jun 1;3(6):e206614. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2020.6614.
PMID: 32484552
DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2020.6614
Trial registration: ClinicalTrials.gov Identifier: NCT02491788.
試験の重要性
シフトワーカーの多くは、覚醒のためのサーカディアン駆動が不適切なタイミングで行われているために、日中に睡眠をとることが困難である。
目的
二重ヒポクレチン(オレキシン)受容体拮抗薬を投与することで、シフトワーカーの日中の睡眠時間を増やすことができるかどうかを検討する。
試験デザイン、設定、参加者
この二重盲検プラセボ対照ランダム化臨床試験には、2016年3月から2018年12月までの2週間のベースラインデータと3週間の介入データが含まれていた。
個人は、カリフォルニア州のサンフランシスコ湾岸地域の広い範囲でポスター広告を通じて募集した。シフト労働者38例の初期自主的な募集コホートから、夜勤シフト後の日中の睡眠困難を自己申告した個人19例が含まれた。
データは、2019年1月〜3月まで分析した。
介入
スボレキサント10mgまたはプラセボを1週間、さらに2週間、プラセボまたはスボレキサント20mgに漸増。
主なアウトカムおよび測定法
睡眠の客観的(すなわち、アクチグラフィ)および主観的(すなわち、睡眠ログ)測定。
結果
・試験を終了した19例(平均年齢[SD] 37.7[11.1]歳、男性 13例[68%])のうち、スボレキサント群が8例(42%)、プラセボ群が11例(58%)に割り付けられた。
・プラセボ群と比較して、スボレキサント群では、10mg投与 1週間後に平均1.04(SE 0.53)時間(P = 0.05)、20mg投与 2週間後には2.16( SE 0.75)時間(P = 0.004)で客観的な総睡眠時間が増加した。
・主観的な睡眠時間は、プラセボ群と比較して、スボレキサント群では、10mg投与 1週間後に2.08(0.47)時間(P < 0.001)、20mg投与 2週間後には2.97(0.56)時間(P < 0.001)増加していた。
・日中の睡眠に関する医師の評価は、プラセボ群では変化がなく、スボレキサント群では大幅に改善していたため、これらの指標と一致していた。スボレキサント群では有害事象は報告されなかった。
結論と関連性
このパイロット研究では、現実の環境下でのシフトワーカーに二重ヒポクレチン受容体拮抗薬を使用することで、1回のエピソードにつき日中の睡眠時間が2時間以上延長されたことが明らかになった。
今後の研究では、より大規模なサンプルサイズでこのパイロット研究の知見を確認し、長期的にこの薬の使用が医療および精神医学的健康、職場のパフォーマンスおよび安全性の向上を伴うかどうかを検討すべきである。
コメント
24時間周期のサーカディアンリズムは、間脳の視床下部にある視交叉上核に存在する体内時計によって制御されています。シフトワーカーは、一般的な昼夜サイクルから外れた時間に眠ってしまい、生活に支障をきたす概日(サーカディアン)リズム睡眠障害を有しています。この概日リズム睡眠障害は、日中に労働する集団よりも、より一般的に認められます。
生体内ホルモンであるオレキシンは、ヒトの覚醒に関与しています。オレキシン(ヒポクレチン)受容体拮抗薬であるスボレキサントは、オレキシンによる覚醒作用を抑制することで、睡眠を誘導します。海外では時差ボケ(jet lag disorder)やシフトワーク障害(shift work disorder)への応用が期待されています。
さて、本試験結果により、シフトワーカーにおける日中の総睡眠時間は、スボレキサント群で、プラセボ群と比較して有意に増加しました。これは客観的および主観的な測定結果で一致していました。
ただし、本試験はパイロット試験であるため、症例数も少なく、現状では一般化が困難です。今後の研究結果に注目していきたいです。
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