抗凝固薬を服用中の心房細動患者における再発性虚血性脳卒中リスクはどのくらいですか?(前向きコホート7件のプール解析; Ann Neurol. 2020)

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Ischemic Stroke Despite Oral Anticoagulant Therapy in Patients With Atrial Fibrillation

David Seiffge et al.

Ann Neurol. 2020

PMID: 32052481

DOI: 10.1002/ana.25700

目的

経口抗凝固薬療法にもかかわらず虚血性脳卒中の心房細動(AF)患者において、さらなる再発性脳卒中リスクが高いかどうか、および進行中の二次予防の管理方法は不明である。

方法

AF及び脳卒中患者を組み入れた前向きコホート研究7つにおける個々の患者データのプール分析を実施した。

インデックスイベントの前に経口抗凝固薬(ビタミンK拮抗薬[VKA]または直接経口抗凝固薬[DOAC])を服用している患者と、事前の抗凝固薬(OACprior)を服用していない患者(OACnaive)を比較した。

さらに、抗凝固薬のタイプを変更した患者(VKAまたはDOACからその逆、またはDOACから服用していた薬剤とは別のDOACに変更)と二次予防と同じ抗凝固薬を継続した患者(OACunchanged)を比較した。

再発性虚血性脳卒中(AIS)発生までの時間は、多変量競合リスクFine-Grayモデルを使用して分析し、ハザード比(HR)および95%信頼区間(95%CI)を計算した。

結果

・患者5,413人(年齢中央値 78歳[IQR 71-84歳]、5,136 [96.7%]が虚血性脳卒中を指標イベントとしていた(NIHSS入院時中央値6 [IQR 2-12])を解析に組み入れた。

・CHA2 DS2- Vascスコアの中央値は5(IQR4-6)で、OACprior(n = 1,195)とOACnaive(n = 4,119、p = 0.103)で差はなかった。

・6,128患者-年の追跡期間中、289人がAISを有した(4.7%/年 、95%CI 4.2-5.3%)。

・OACpriorはAISリスク増加と関連していた。

★HR =1.6、95%CI 1.2-2.3、p = 0.005

—-

・OACchanged(n = 307)群では、OACunchaged(n = 585)群と比較して、AISリスク減少と関連していなかった。

★HR =1.2、95%CI 0.7-2.1、p = 0.415)

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解釈

経口抗凝固療法を一度行っても脳卒中を起こした心房細動患者では、以前の経口抗凝固療法を行っていない患者と同様のCHA2 DS2 -Vascスコアにもかかわらず、再発性脳卒中リスクが高くなる。このハイリスク患者グループには、より良い予防戦略が必要である。

コメント

コホート研究のプール解析。

脳卒中の既往がある心房細動患者において、二次予防のための抗凝固薬を使用しているか否かで、再発性の虚血性脳卒中リスクが変化するか検討した。

結果として、二次予防のために抗凝固薬を使用している群と比較して、抗凝固薬を使用していない群では、ハザード比 1.2〜2.3と有意なリスク増加が認められた。

あくまでも仮説生成的な結果であることは念頭においておきたい。

また二次予防のための抗凝固薬を服用している群において、①VKAからDOACへの変更、②DOACからVKAへの変更、③DOACから他のDOACへの変更、これらの変更は、変更しなかった群と比較して脳卒中のリスク増加は認められなかった。

したがって、二次予防のために何かしらの抗凝固薬を服用していれば良さそうとかんがえられます。

個人的には、観察研究における「ハザード比 1.2〜2.3」という値は、けっして高い値ではないと思います。誤差である可能性も充分あり得ます。また大出血については、abstractで触れていません。したがって個々の患者における虚血と出血リスクのバランスを鑑みた方が有益であると考えられます。

✅まとめ✅ 脳卒中既往のAF患者における二次予防のための抗凝固薬使用は脳卒中再発リスクを低下させるかもしれない

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