「お酒の合間に水を飲む」と二日酔いは軽くなるのか?

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― 日本人成人男性を対象としたランダム化クロスオーバー試験(Front Pharmacol. 2026)


臨床疑問(Clinical Question)

飲酒中に「チェイサー」として水をこまめに飲むことは、アルコールやアセトアルデヒドの体内動態を変化させ、翌日の二日酔い症状や精神運動機能を改善するのでしょうか?


研究の背景

飲酒後の二日酔い(Hangover)は、頭痛、倦怠感、吐き気、集中力低下、眠気など様々な症状を引き起こし、自動車運転や産業現場での作業能力低下にもつながることが知られています。

一般には、「お酒の合間に水を飲む(チェイサー)」ことで二日酔いが軽くなると言われています。

しかし、この方法は経験則として広く知られている一方で、本当にアルコール代謝を変えるのか、アセトアルデヒド濃度に影響するのか、翌日の症状を改善するのかについては、これまで十分な科学的検証が行われていませんでした。

そこで本研究では、日本人成人男性を対象に、飲酒中の間欠的な飲水がアルコール動態および二日酔いに及ぼす影響をランダム化クロスオーバー試験で検証しました。


PICO

項目内容
P(Patients)ALDH2 *1/*1(野生型)の健康な日本人成人男性
I(Intervention)日本酒とともに15mL/kgの水を間欠的に飲用(Water群)
C(Comparison)日本酒のみ(Control群)
O(Outcome)呼気エタノール濃度、呼気アセトアルデヒド濃度、DSST、VASによる二日酔い症状

試験デザイン

項目内容
研究デザインランダム化2×2クロスオーバー試験
対象健康な日本人成人男性13名
ALDH2遺伝子型*1/*1(野生型)のみ
アルコール量純アルコール1.3 g/kg(日本酒)
飲水量15 mL/kg
飲酒時間1時間で一定速度
観察期間飲酒前〜15時間後
解析Linear mixed-effects model

評価項目

主要評価項目

  • 呼気エタノール濃度
  • 呼気アセトアルデヒド濃度

副次評価項目

  • Digit Symbol Substitution Test(DSST)
  • 主観的酩酊・二日酔い症状(VAS)

その他の評価項目

  • 顔面紅潮
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 集中力
  • 眠気
  • 気分高揚

試験結果から明らかになったことは?

① 呼気エタノール濃度

結果
Water群とControl群で有意差なし

飲酒中に水を飲んでも、エタノールの体内動態は変化しませんでした。


② 呼気アセトアルデヒド濃度

結果
群間差なし

飲水によってアセトアルデヒド濃度も変化しませんでした。


③ 精神運動機能(DSST)

結果
群間差なし

翌日の認知・精神運動機能にも差は認められませんでした。


④ 主観的症状(VAS)

評価した症状

  • 顔面紅潮
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 集中力
  • 眠気
  • 気分高揚

すべての項目で群間差は認められませんでした。


研究結果まとめ

評価項目Water群 vs Control群
呼気エタノール濃度差なし
呼気アセトアルデヒド濃度差なし
DSST差なし
頭痛差なし
吐き気差なし
眠気差なし
集中力差なし
顔面紅潮差なし

著者らの結論

飲酒中にチェイサーとして水を飲んでも、エタノール代謝、アセトアルデヒド代謝、精神運動機能、二日酔い症には有意な改善は認められませんでした

したがって、飲酒中の間欠的な飲水は、二日酔いを軽減する方法としては支持されないと結論づけています。


臨床的意義

「チェイサーを飲めば二日酔いになりにくい」という考えは広く浸透していますが、本研究ではその仮説を支持する結果は得られませんでした。

少なくとも、エタノールの排泄速度、アセトアルデヒドの排泄、翌日の自覚症状、精神運動機能に対する明確な改善効果は確認されませんでした。

一方で、この結果は「飲水に意味がない」ことを示すものではありません。水分補給は脱水の予防には有用と考えられますが、本研究からは「二日酔いを軽減する効果」は確認されなかった、という点を区別して理解する必要があります。


試験の限界(批判的吟味)

① サンプルサイズが非常に小さい

対象は13名のみであり、小さな効果を検出するには十分な統計学的検出力がなかった可能性があります。


② 対象が限定されている

試験参加者は健康な日本人成人男性かつALDH2*1/*1(野生型)に限定されています。そのため、ALDH2欠損者(*1/*2、*2/*2)、女性、高齢者、他民族には結果を直接一般化できません。


③ 評価したアルコール量は限定的

純アルコール1.3 g/kg*という条件で評価されており、より少量あるいは大量飲酒時で同様の結果となるかは不明です。

*日本酒の純アルコール量(g)は「摂取量(mL)× 度数(%)÷ 100 × 0.8(アルコールの比重)」で計算。一般的な日本酒(度数15度)の場合、1合(180mL)で約22g、100mLあたり約12gの純アルコールを含有。


④ 飲水方法は一種類のみ

検討されたのは15 mL/kgを飲酒中に間欠的に摂取する方法のみであり、飲水量やタイミングが異なる場合の効果は評価されていません。


⑤ 二日酔いの評価は主観的指標を含む

VASは患者報告アウトカムであり、症状の感じ方には個人差があります。ただし、本研究ではDSSTという客観的な精神運動機能検査も併用されており、その結果も群間差は認められませんでした。


⑥ 長期的な健康影響は評価していない

本研究は単回飲酒後15時間までの評価であり、飲水が脱水、腎機能、循環動態などに及ぼす影響や、長期的な飲酒習慣への影響は検討されていません。


実臨床への応用

本研究からは、飲酒中に水を飲むことで二日酔いを予防できるという明確な根拠は得られませんでした。したがって、「チェイサーを飲めば二日酔いにならない」と患者へ説明することは、本研究の結果からは支持されません。

一方で、水分補給はアルコールによる利尿作用に伴う脱水を軽減する可能性があり、口渇や循環動態の維持など別の目的では有益と考えられます。しかし、本研究では脱水指標は評価されておらず、飲水の利益を否定するものではありません。

二日酔い予防として最も確実なのは、過度の飲酒を避け、適量を守ることであり、水分補給はあくまで補助的な健康管理として位置付けるのが適切でしょう。


まとめ

  • 健康な日本人成人男性13名を対象としたランダム化2×2クロスオーバー試験
  • 飲酒中に15 mL/kgの水を間欠的に摂取しても、呼気エタノール・アセトアルデヒド濃度は変化しなかった
  • 精神運動機能(DSST)や主観的二日酔い症状(VAS)にも有意な改善は認められなかった
  • 「チェイサーで二日酔いが軽くなる」という経験則を支持する科学的根拠は、本研究では示されなかった
  • ただし、本研究は小規模で対象も限定されており、水分補給の脱水予防効果など、二日酔い以外の側面については今後の検討が必要である

再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

pouring water to glass

✅まとめ✅ ランダム化2×2クロスオーバー試験の結果、エタノール摂取中に断続的に飲料水を摂取しても、エタノールの体内動態や薬力学的パラメータに大きな変化は見られず、二日酔いの症状には影響しなかった。

根拠となった試験の抄録

背景: 二日酔いは、頭痛や疲労などの不快な症状を引き起こすだけでなく、車の運転や工場での作業能力を損なう可能性があります。二日酔いの症状を軽減する効果としては、飲酒の合間に水を飲むこと(いわゆる「チェイサー」)が経験的に認められていますが、その効果はこれまで検証されていませんでした。本研究の目的は、飲酒中に断続的に水を飲むことが体内のエタノールとアセトアルデヒドの動態に影響を与えるかどうか、また、翌日の精神運動機能検査や主観的症状によって二日酔いの症状を軽減するかどうかを明らかにすることでした。

方法: 本研究には、 野生型アルデヒド脱水素酵素(ALDH)2(ALDH2*1/*1)を有する健康な日本人成人男性13名が参加した。試験デザインは、被験者が(1)体重1kgあたり純アルコール1.3gに相当する日本酒(対照群)と(2)同量の日本酒と体重1kgあたり15mLの水(水群)をそれぞれ1時間かけて断続的に摂取する、ランダム化2×2クロスオーバー試験であった。飲用前、飲用直後、および飲用後15時間までの様々な時点で、呼気中のエタノールおよびアセトアルデヒド濃度を測定し、数字記号置換テスト(DSST)を実施し、主観的酩酊症状スコア(VAS)を評価した。呼気中のエタノールおよびアセトアルデヒド濃度は、センサーガスクロマトグラフィーによって測定した。 2つのグループ間の呼気濃度と薬力学的指標の差は、試験飲料と投与回数を固定効果、被験者をランダム効果とする線形混合効果モデルを使用して評価した。

結果: 呼気中のエタノールとアセトアルデヒドの動態において、両群間に差は認められなかった。DSSTスコアも両群間で同様であった。VASを用いて顔面紅潮、頭痛、吐き気、集中力、眠気、気分高揚といった主観的症状を評価したところ、両群間に差は認められなかった。

結論: エタノール摂取中に断続的に飲料水を摂取しても、エタノールの体内動態や薬力学的パラメータに大きな変化は見られず、二日酔いの症状には影響しなかったと考えられる。

キーワード: チェイサー; エタノール代謝; 二日酔い; 二日酔い効果; 水

引用文献

Water intake during drinking does not alleviate hangover symptoms
Hiromitsu Imai et al. PMID: 42375618 PMCID: PMC13311531 DOI: 10.3389/fphar.2026.1852528
Front Pharmacol. 2026 Jun 15:17:1852528. doi: 10.3389/fphar.2026.1852528. eCollection 2026.
― 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42375618/

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