ロスバスタチンとピタバスタチンを回避するだけでは不十分?
免疫抑制剤シクロスポリン(ネオーラル)を服用中の患者にスタチンが新規処方された場合、
併用禁忌・重篤な薬物相互作用を見逃さないことが極めて重要です。
本記事では、実際の薬局業務で発生した
「シクロスポリンとスタチンの併用禁忌」に対する疑義照会事例をもとに、
どのように薬剤師が判断し、処方変更に至ったのかを解説します。
事例の概要(調剤時に発見)
- 患者:60歳 男性
- 診療科:皮膚科(定期)+ 内分泌糖尿病内科(新規)
- 背景:
- 皮膚科より
- ネオーラルカプセル50mg(シクロスポリン)
- プレドニン、パリエット、ボナロンを継続服用
- 内分泌糖尿病内科より
- リバロOD錠1mg(ピタバスタチン) が新規処方
- 皮膚科より
調剤者は薬歴から、シクロスポリン服用中であることを確認しました。
問題点:ピタバスタチンは併用禁忌
シクロスポリン(商品名:ネオーラル)の添付文書では、
以下のスタチンが併用禁忌とされています。
- ピタバスタチン(商品名:リバロ)
- ロスバスタチン(商品名:クレストール)
◆併用禁忌の理由
- シクロスポリン併用により、
- ピタバスタチン:Cmax 6.6倍、AUC 4.6倍
- ロスバスタチン:Cmax 10.6倍、AUC 7.1倍
- 血中濃度が著明に上昇し、
筋症・横紋筋融解症などの重篤な副作用リスクが増大するため
薬剤師の判断:代替スタチンの検討
調剤者は、添付文書および文献情報を基に、
- シクロスポリンと併用可能性が比較的高いスタチン
- AUC上昇が比較的小さい薬剤
を検討しました。
◆着目点
- スタチンの多くは、
OATP1B1トランスポーターを介して肝臓に取り込まれる - シクロスポリンは OATP1B1阻害薬
- その結果、
- 肝取り込みが阻害
- 血中濃度上昇
- 筋障害リスク増加
という機序が成立する
代替薬としてはフルバスタチンが適切?
フルバスタチン(商品名:ローコール)は他のスタチンと異なる特徴があります。
- シクロスポリン併用時の AUC増加率:2〜4倍
- 最大用量:60mg
- AUC増加を考慮しても、10〜20mgであれば最大用量内に収まる
この点から、シクロスポリンとスタチン系薬剤の併用において、
相対的に安全性が高い選択肢として判断されました。
疑義照会の結果
薬剤師は医師に対し、
- ピタバスタチンが併用禁忌であること
- フルバスタチンであればAUC増加が比較的小さいこと
- 20mgでの慎重投与案
を説明。
◆処方変更後
- ローコール錠20mg 1日1回 朝食後
に変更され、
患者には筋肉痛・脱力感など初期症状の説明を行ったうえで交付されました。
本事例から学ぶポイント
✔ 薬歴確認の重要性
- 他科・他院処方の把握が、重篤な副作用回避につながる
✔ 添付文書ベースの判断
- 「併用注意」ではなく併用禁忌である点を明確に説明できることが重要
✔ 代替薬提案は“理論と数値”で
- AUC増加率
- 最大用量との関係
を根拠に示すことで、医師の理解と合意が得られやすい
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◆まとめ
- シクロスポリンとピタバスタチン・ロスバスタチンは併用禁忌
- スタチン併用が必要な場合、
フルバスタチン(ローコール)は相対的に選択肢となり得る - 薬剤師の介入により、
重篤な薬物相互作用を未然に防いだ実践例である。
脂質コントロールが不十分であれば、エゼチミブ(商品名:ゼチーア)やベンペド酸(商品名:ネクセトール)、エボロクマブ(商品名:レパーサ)の併用が検討されます。
患者背景や検査値を基に脂質コントロールを適正に行うことが求められます。
続報に期待。

✅まとめ✅ シクロスポリンとの併用が許容されるスタチン系薬剤として、フルバスタチンが適しているようであった。
参考文献
- 平田純生ら. 薬剤性腎障害と薬物の適正使用. 日腎会誌 2012; 54(7): 999-1005.
- 山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」. ネオーラルと併用できるスタチンはどれ? 日経DI 2016/02/09


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