高齢者の慢性不眠にミルタザピンは効果があるのか?(DB-RCT; MIRAGE試験; Age Ageing. 2025)

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高齢者の不眠に抗うつ薬は効くのか? —ミルタザピンの使用をめぐる臨床疑問—

高齢者に多くみられる慢性不眠症は、QOL(生活の質)や日中機能に重大な影響を及ぼします。しかし、ベンゾジアゼピン系薬剤の長期使用は転倒や認知機能低下のリスクがあり、非ベンゾジアゼピン系やその他の代替薬の選択が求められています。

ミルタザピンは、抗うつ作用に加え鎮静効果も持つ薬剤として、不眠症治療に用いられることがあります。今回ご紹介するMIRAGE試験は、65歳以上の慢性不眠症患者に対してミルタザピンの有効性と安全性を評価したランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。

試験結果から明らかになったことは?

本試験は、カナダで実施されたRCTで、65歳以上の慢性不眠症患者60名を対象に、ミルタザピンまたはプラセボを28日間投与しました。

主要評価項目は、自己申告による入眠後中途覚醒時間(WASO)、総睡眠時間(TST)、睡眠効率(SE)でした。副次的に、不眠重症度指標(ISI)の変化量や日中の眠気、有害事象も評価されました。

🔍 主要評価項目(28日後)

指標ミルタザピン群プラセボ群結果
入眠後中途覚醒時間(WASO)有意に減少減少ミルタザピンが有意に優越
総睡眠時間(TST)有意に延長軽度延長ミルタザピンが有意に優越
睡眠効率(SE)有意に改善軽度改善ミルタザピンが有意に優越

🔎 不眠重症度(ISIスコア)の変化

  • ミルタザピン群:−6.5(95% CI −8.3 ~ −4.8
  • プラセボ群:−2.9(95% CI −4.4 ~ −1.4
  • 群間差:有意(p=0.003)

🔎 安全性

ミルタザピン群では日中の眠気が多く報告され、副作用として注意が必要です。

重篤な有害事象:なし

有害事象による治療中止:ミルタザピン群6名、プラセボ群1名

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このMIRAGE試験の結果は、ミルタザピンが高齢者の慢性不眠症に対して有効である可能性を示すものです。症例数が60名と限られていることから一般化することは困難です。

入眠後中途覚醒の減少、総睡眠時間の延長、睡眠効率の改善といった複数の睡眠指標で有意な効果が確認されました。ただし、抄録では具体的な群間差や統計検定方法、P値の結果は示されていません。結果の解釈に注意を要します。

副作用として、ミルタザピン群では日中の眠気や有害事象による中止が多く報告されており、高齢者では副作用とのバランスを考慮した慎重な投与が求められます。特に転倒リスクの高い患者には注意が必要です。

この試験は短期間(28日間)の評価であり、長期使用時の有効性・安全性に関してはさらなる検証が必要です。

再現性の確認も含めて更なる検証が求められます。続報に期待。

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✅まとめ✅ 65歳以上の高齢者を対象とした二重盲検ランダム化比較試験の結果、ミルタザピンは高齢者の慢性不眠症の症状を軽減することが示された。しかし、軽度ではあるものの臨床的に関連する有害事象により、その使用は制限される可能性がある。

試験結果から明らかになったことは?

背景:高齢者における慢性不眠症は有病率が高く、治療選択肢に制限がある。本研究では、ミルタザピンの有効性と安全性を評価することを目的とした。

方法:65歳以上の慢性不眠症患者を対象に、ミルタザピンまたはプラセボを28日間投与し、主要評価項目(入眠後中途覚醒時間、総睡眠時間、睡眠効率)および副次評価項目(ISIスコア、日中の眠気、有害事象)を評価した。

結果:ミルタザピンはプラセボよりも主要な睡眠指標を有意に改善した。ISIスコアの平均変化量はミルタザピン群が−6.5(95% CI −8.3~−4.8)、プラセボ群が−2.9(95% CI −4.4~−1.4)であり、有意差があった(p=0.003)。重篤な有害事象は認められなかったが、有害事象による中止はミルタザピン群で多くみられた。

結論:ミルタザピンは、高齢者の慢性不眠症に対して有効性を示したが、副作用の管理が重要である。

引用文献

Mirtazapine for chronic insomnia in older adults: a randomised double-blind placebo-controlled trial—the MIRAGE study
Nguyen PV-Q, Dang-Vu TT, Forest G, et al. PMID: 40135470 DOI: 10.1093/ageing/afaf050
Age Ageing. 2025 Mar 1;54(3):afaf050. doi: 10.1093/ageing/afaf050. Epub 2024 Dec 22.
ー 続きを読む:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40135470/

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