成人のアルコール使用障害患者におけるセマグルチド週1回投与の効果は?(DB-RCT; JAMA Psychiatry. 2025)

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セマグルチドはアルコール使用障害に対しても有効?

グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬(GLP-1 RA)がアルコール摂取を減少させる可能性があることを示す前臨床試験、観察試験、および薬剤疫学的エビデンスがあります。しかし、実臨床における質の高い報告はなく、これらの所見の臨床的意義を明らかにするためには、ランダム化試験が必要とされています。

そこで今回は、成人アルコール使用障害(AUD)患者において、週1回セマグルチド皮下投与がアルコール摂取および渇望に及ぼす影響を評価することを目的に実施された第2相二重盲検ランダム化並行群間比較試験の結果をご紹介します。

本試験には、9週間の外来治療が含まれていました。登録は2022年9月から2024年2月にかけて米国の学術医療センターで行われました。504人の潜在的参加者が評価され、48人のAUDの非治療希望者がランダム化されました。

試験参加者はセマグルチド(0.25mg/週を4週間、0.5mg/週を4週間、1.0mgを1週間)またはプラセボを週1回の診療時に投与されました。

本試験の主要アウトカムは、治療前と治療後(0.5mg/週)に測定された実験室でのアルコール自己摂取でした。副次的および探索的転帰として、アルコール消費と渇望の前向き変化について外来受診時に評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

48人の参加者(女性 34人[71%];平均年齢 39.9[SD 10.6]歳)がランダム化されました。

介入前後の変化量
(95%CI)
実験室での自己投与課題におけるアルコール摂取量β -0.48(-0.85 ~ -0.11
P=0.01
呼気ピークアルコール濃度β -0.46(-0.87 ~ -0.06
P=0.03
飲酒日あたりの飲酒量β -0.41(-0.73 ~ -0.09
P=0.04
週間アルコール渇望β -0.39(-0.73 ~ -0.06
P=0.01
経時的な大量飲酒の減少β 0.84(0.71~0.99
P=0.04
1日あたりのタバコの相対的減少β -0.10(-0.16 〜 -0.03
P=0.005

低用量セマグルチドは、治療後の実験室での自己投与課題におけるアルコール摂取量を減少させ、アルコール摂取グラム数(β -0.48、95%CI -0.85 ~ -0.11;P=0.01)および呼気ピークアルコール濃度(β -0.46、95%CI -0.87 ~ -0.06;P=0.03)において中程度から大きな効果量のエビデンスが得られました。

セマグルチド投与は、暦日あたりの平均飲酒量や飲酒日数には影響を与えませんでしたが、飲酒日あたりの飲酒量(β -0.41、95%CI -0.73 ~ -0.09;P=0.04)および週間アルコール渇望(β -0.39、95%CI -0.73 ~ -0.06;P=0.01)を有意に減少させ、また、プラセボと比較して経時的な大量飲酒の減少をより大きく予測しました(β 0.84、95%CI 0.71~0.99;P=0.04)。

治療と時間の有意な交互作用により、現在タバコを使用している人のサブサンプルにおいて、セマグルチド治療が1日あたりのタバコの相対的減少をより大きく予測することが示されました(β -0.10、95%CI -0.16 〜 -0.03;P=0.005)。

コメント

グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬(GLP-1 RA)は、血糖降下作用を示すことから2型糖尿病治療薬として承認されました。その後、多面的な作用を有することから肥満患者など、他の疾患へ適応拡大されています。多面的な作用の一つとして、アルコール使用障害患者におけるアルコール摂取量の減少効果に期待が寄せられていますが、実臨床における検証は充分ではありません。

さて、第二相ランダム化比較試験の結果、低用量セマグルチドはアルコール渇望およびいくつかの飲酒転帰を軽減することが示されました。試験適格者は48例であり、小規模な検証結果であることから、再現性の確認も含めて更なる検証が求められます。

アルコール使用障害に対するGLP-1RAを評価するための大規模臨床試験を正当化する結果が得られたことから、より大規模な第三相臨床試験の実施が求められます。

また、セマグルチド以外のGLP-1 RAについても同様の結果が示されられるのか気にかかるところです。

続報に期待。

close up shot of a toasting champagne glass

✅まとめ✅ 第二相ランダム化比較試験の結果、低用量セマグルチドはアルコール渇望およびいくつかの飲酒転帰を軽減した。アルコール使用障害に対するGLP-1RAを評価するための大規模臨床試験を正当化するものである。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬(GLP-1RA)がアルコール摂取を減少させる可能性があることを示す前臨床試験、観察試験、および薬剤疫学的エビデンスがある。これらの所見の臨床的意義を明らかにするためには、ランダム化試験が必要である。

目的:成人アルコール使用障害(AUD)患者において、週1回セマグルチド皮下投与がアルコール摂取および渇望に及ぼす影響を評価すること。

試験デザイン、設定、参加者:本試験は第2相二重盲検ランダム化並行群間比較試験であり、9週間の外来治療を含む。登録は2022年9月から2024年2月にかけて米国の学術医療センターで行われた。504人の潜在的参加者が評価され、48人のAUDの非治療希望者がランダム化された。

介入:試験参加者はセマグルチド(0.25mg/週を4週間、0.5mg/週を4週間、1.0mgを1週間)またはプラセボを週1回の診療時に投与された。

主要アウトカムと評価基準:主要アウトカムは、治療前と治療後(0.5mg/週)に測定された実験室でのアルコール自己摂取であった。副次的および探索的転帰として、アルコール消費と渇望の前向き変化を外来受診時に評価した。

結果:48人の参加者(女性 34人[71%];平均年齢 39.9[SD 10.6]歳)がランダム化された。低用量セマグルチドは、治療後の実験室での自己投与課題におけるアルコール摂取量を減少させ、アルコール摂取グラム数(β -0.48、95%CI -0.85 ~ -0.11;P=0.01)および呼気ピークアルコール濃度(β -0.46、95%CI -0.87 ~ -0.06;P=0.03)において中程度から大きな効果量のエビデンスが得られた。セマグルチド投与は、暦日あたりの平均飲酒量や飲酒日数には影響を与えなかったが、飲酒日あたりの飲酒量(β -0.41、95%CI -0.73 ~ -0.09;P=0.04)および週間アルコール渇望(β -0.39、95%CI -0.73 ~ -0.06;P=0.01)を有意に減少させ、また、プラセボと比較して経時的な大量飲酒の減少をより大きく予測した(β 0.84、95%CI 0.71~0.99;P=0.04)。治療と時間の有意な交互作用により、現在タバコを使用している人のサブサンプルにおいて、セマグルチド治療が1日あたりのタバコの相対的減少をより大きく予測することが示された(β -0.10、95%CI -0.16 〜 -0.03;P=0.005)。

結論と関連性:これらの知見は、低用量のセマグルチドがアルコール渇望およびいくつかの飲酒転帰を軽減しうるという最初の前向きエビデンスを提供し、アルコール使用障害に対するGLP-1RAを評価するための大規模臨床試験を正当化するものである。

臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier. NCT05520775

引用文献

Once-Weekly Semaglutide in Adults With Alcohol Use Disorder: A Randomized Clinical Trial
Christian S Hendershot et al. PMID: 39937469 PMCID: PMC11822619 DOI: 10.1001/jamapsychiatry.2024.4789
JAMA Psychiatry. 2025 Feb 12:e244789. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2024.4789. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39937469/

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