うつ病に対する運動の効果は?(RCTのNWM; BMJ. 2024)

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大うつ病性障害の治療に最適な運動量と運動様式は?

大うつ病性障害(MDD)は、抑うつ気分、興味の減退、認知機能の障害ならびに睡眠障害や食欲障害などの自律神経症状を特徴とする消耗性疾患です。MDDの治療に対して心理療法、抗うつ薬が選択されますが、運動の効果については明らかとなっていません。

そこで今回は、対照条件と比較して、大うつ病性障害の治療に最適な運動量と運動様式を明らかにすることを目的に実施された系統的レビューおよびネットワークメタ解析です。

本研究では、スクリーニング、データ抽出、コーディング、バイアスのリスク評価を独立に、かつ重複して実施されました。

主要解析では、ベイズ群ベースのマルチレベルネットワークメタ解析が実施されました。各群のエビデンスの質は、confidence in network meta-analysis(CINeMA)オンラインツールを用いて評価されました。

本研究のデータ情報源はCochrane Library、Medline、Embase、SPORTDiscus、PsycINFOデータベースであり、大うつ病の臨床的カットオフを満たした参加者を対象とした運動群のあるランダム化試験が対象となりました。

試験結果から明らかになったことは?

合計495群、14,170例の参加者を含む218件の研究が組み入れられました。

うつ病の中等度の減少が認められた運動対象との差(95%CI)
※能動的対照(例:通常のケア、プラセボ錠剤)と比較
ウォーキングまたはジョギングn=1,210、κ=51
Hedges’g -0.62(-0.80 ~ -0.45
ヨガn=1,047、κ=33
Hedges’g -0.55(-0.73 ~ -0.36
筋力トレーニングn=643、κ=22
Hedges’g -0.49(-0.69 ~ -0.29
混合有酸素運動n=1286、κ=51
Hedges’g -0.43(-0.61 ~ -0.24
太極拳または気功n=343、κ=12
Hedges’g -0.42(-0.65 ~ -0.21

能動的対照(例:通常のケア、プラセボ錠剤)と比較して、うつ病の中等度の減少がウォーキングまたはジョギング(n=1,210、κ=51、Hedges’g -0.62、95%信頼区間 -0.80 ~ -0.45)、ヨガ(n=1,047、κ=33、g -0.55、-0.73 ~ -0.36)、筋力トレーニング(n=643、κ=22、g -0.49、-0.69 ~ -0.29)、混合有酸素運動(n=1286、κ=51、g -0.43、-0.61 ~ -0.24)、太極拳または気功(n=343、κ=12、g -0.42、-0.65 ~ -0.21)で認められました。

運動の効果は、規定された強度に比例しました。また、筋力トレーニングとヨガが最も受け入れやすい方法であるようでした。

結果は出版バイアスに頑健なようでしたが、バイアスのリスクが低いというコクラン基準を満たした研究は1件のみでした。その結果、CINeMAによる信頼度は、ウォーキングまたはジョギングについては低く、その他の治療法については非常に低いことが示されました。

コメント

大うつ病性障害の治療に最適な運動量と運動様式については不明です。

さて、ランダム化比較試験のネットワークメタ解析の結果、運動はうつ病の効果的な治療法であり、ウォーキングまたはジョギング、ヨガ、筋力トレーニングは他の運動よりも、特に強度の高い場合に効果的であることが示されました。さらに、ヨガと筋力トレーニングは他の治療法と比較して忍容性が高いことが示されました。

通常のケアやプラセボ錠剤と比較して、運動はうつ病の効果的な治療法であることが明らかとなりましたが、どのように大うつ病性障害患者に運動を促すのか、継続するためのプログラムをどう構築するのか等、まだまだ課題が残されています。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 運動はうつ病の効果的な治療法であり、ウォーキングまたはジョギング、ヨガ、筋力トレーニングは他の運動よりも、特に強度の高い場合に効果的であった。ヨガと筋力トレーニングは他の治療法と比較して忍容性が高かった。

根拠となった試験の抄録

目的:心理療法、抗うつ薬、対照条件と比較して、大うつ病性障害の治療に最適な運動量と運動様式を明らかにすること。

試験デザイン:系統的レビューおよびネットワークメタ解析

方法:スクリーニング、データ抽出、コーディング、バイアスのリスク評価を独立に、かつ重複して実施した。主要解析では、ベイズ群ベースのマルチレベルネットワークメタ解析が実施された。各群のエビデンスの質は、confidence in network meta-analysis(CINeMA)オンラインツールを用いて評価した。

データ情報源:Cochrane Library、Medline、Embase、SPORTDiscus、PsycINFOデータベース。

研究選択の適格基準:大うつ病の臨床的カットオフを満たした参加者を対象とした運動群のあるランダム化試験。

結果:合計495群、14,170例の参加者を含む218件の研究が組み入れられた。能動的対照(例:通常のケア、プラセボ錠剤)と比較して、うつ病の中等度の減少がウォーキングまたはジョギング(n=1,210、κ=51、Hedges’g -0.62、95%信頼区間 -0.80 ~ -0.45)、ヨガ(n=1,047、κ=33、g -0.55、-0.73 ~ -0.36)、筋力トレーニング(n=643、κ=22、g -0.49、-0.69 ~ -0.29)、混合有酸素運動(n=1286、κ=51、g -0.43、-0.61 ~ -0.24)、太極拳または気功(n=343、κ=12、g -0.42、-0.65 ~ -0.21)で認められた。運動の効果は、規定された強度に比例した。筋力トレーニングとヨガが最も受け入れやすい方法であるようであった。結果は出版バイアスに頑健なようであったが、バイアスのリスクが低いというコクラン基準を満たした研究は1件のみであった。その結果、CINeMAによる信頼度は、ウォーキングまたはジョギングについては低く、その他の治療法については非常に低かった。

結論:運動はうつ病の効果的な治療法であり、ウォーキングまたはジョギング、ヨガ、筋力トレーニングは他の運動よりも、特に強度の高い場合に効果的であった。ヨガと筋力トレーニングは他の治療法と比較して忍容性が高かった。運動は、併存疾患の有無やベースラインのうつ病レベルが異なる人々に対しても同様に有効であるように思われた。予期効果を軽減するために、今後の研究では参加者とスタッフに盲検化を目指すことができる。このような形態の運動は、うつ病の中心的治療として、心理療法や抗うつ薬とともに考慮されうる。

系統的レビュー登録:PROSPERO CRD42018118040.

引用文献

Effect of exercise for depression: systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials
Michael Noetel et al. PMID: 38355154 PMCID: PMC10870815 DOI: 10.1136/bmj-2023-075847
BMJ. 2024 Feb 14:384:e075847. doi: 10.1136/bmj-2023-075847.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38355154/

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