多剤耐性結核菌に対するレボフロキサシンの効果は?
薬剤耐性結核の予防は世界保健上の優先課題です。しかし、薬剤耐性結核患者の接触者における結核菌感染の治療効果を評価する試験は不足しています。
そこで今回は、結核菌感染症の治療として、レボフロキサシン(体重に応じた用量)の6ヵ月間連日投与とプラセボ投与を比較した二重盲検ランダム化比較試験の結果をご紹介します。
試験対象者は、ベトナムで細菌学的にリファンピシン耐性または多剤耐性(MDR)結核が確認された人の家庭内接触者でした。ツベルクリン皮膚反応陽性または免疫学的障害のある接触者であれば、年齢を問わず適格とされました。
本試験の主要エンドポイントは、30ヵ月以内に細菌学的に確認された結核でした。副次的エンドポイントは、グレード3または4の有害事象、原因を問わない死亡、後天性薬剤耐性でした。
根拠となった試験の抄録
適格性のスクリーニングを受けた3,948人のうち、61人(1.5%)が共蔓延性結核(ランダム化前に診断された活動性結核疾患と定義)を有し、2,041人がランダム化を受けました。この2,041人のうち1,995人(97.7%)が30ヵ月の追跡を完了し、主要エンドポイントイベントが発生したか、死亡しました。
レボフロキサシン群 | プラセボ群 | 発生率比(95%CI) | |
確定結核 | 6人(0.6%) | 11人(1.1%) | 発生率比 0.55 (0.19~1.62) |
確定結核は、レボフロキサシン群で6人(0.6%)、プラセボ群で11人(1.1%)に発生しました(発生率比 0.55、95%信頼区間[CI] 0.19~1.62);この差は有意ではありませんでした。
グレード3または4の有害事象は両群間でほとんど差がありませんでした(リスク差 1.0%ポイント、95%CI -0.3 ~ 2.4)。グレードを問わず有害事象が報告されたのは、レボフロキサシンを投与された306例(31.9%)とプラセボを投与された125例(13.0%)でした(リスク差 18.9%ポイント、95%CI 14.2~23.6)。
後天性フルオロキノロン耐性は認められませんでした。
コメント
薬剤耐性結核患者の接触者におけるレボフロキサシン予防投与の効果は充分に検証されていません。
さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、リファンピシン耐性または多剤耐性結核の家庭内接触者における30ヵ月後の結核の発生率はレボフロキサシン群のほうがプラセボ群よりも低いことが示されましたが、その差は有意ではありませんでした。
そもそもの発生率が低いことから、レボフロキサシンの予防効果を充分に検証できていません。再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、リファンピシン耐性または多剤耐性結核の家庭内接触者における30ヵ月後の結核の発生率はレボフロキサシン群のほうがプラセボ群よりも低かったが、その差は有意ではなかった。
根拠となった試験の抄録
背景:薬剤耐性結核の予防は世界保健上の優先課題である。しかし、薬剤耐性結核患者の接触者における結核菌感染の治療効果を評価する試験は不足している。
方法:結核菌感染症の治療として、レボフロキサシン(体重に応じた用量)の6ヵ月間連日投与とプラセボ投与を比較する二重盲検ランダム化比較試験を実施した。試験対象者は、ベトナムで細菌学的にリファンピシン耐性または多剤耐性(MDR)結核が確認された人の家庭内接触者とした。ツベルクリン皮膚反応陽性または免疫学的障害のある接触者であれば、年齢を問わず適格であった。
主要エンドポイントは、30ヵ月以内に細菌学的に確認された結核であった。副次的エンドポイントは、グレード3または4の有害事象、原因を問わない死亡、後天性薬剤耐性であった。
結果:適格性のスクリーニングを受けた3,948人のうち、61人(1.5%)が共蔓延性結核(ランダム化前に診断された活動性結核疾患と定義)を有し、2,041人がランダム化を受けた。この2,041人のうち1,995人(97.7%)が30ヵ月の追跡を完了し、主要エンドポイントイベントが発生したか、死亡した。確定結核は、レボフロキサシン群で6人(0.6%)、プラセボ群で11人(1.1%)に発生した(発生率比 0.55、95%信頼区間[CI] 0.19~1.62);この差は有意ではなかった。グレード3または4の有害事象は両群間でほとんど差がなかった(リスク差 1.0%ポイント、95%CI -0.3 ~ 2.4)。グレードを問わず有害事象が報告されたのは、レボフロキサシンを投与された306例(31.9%)とプラセボを投与された125例(13.0%)であった(リスク差 18.9%ポイント、95%CI 14.2~23.6)。後天性フルオロキノロン耐性は認められなかった。
結論:30ヵ月後の結核の発生率はレボフロキサシン群のほうがプラセボ群よりも低かったが、その差は有意ではなかった。(オーストラリア国立保健医療研究評議会の助成による(VQUIN MDRオーストラリア・ニュージーランド臨床試験登録番号、ACTRN12616000215426)。
引用文献
Levofloxacin for the Prevention of Multidrug-Resistant Tuberculosis in Vietnam
Greg J Fox et al. PMID: 39693541 DOI: 10.1056/NEJMoa2314325
N Engl J Med. 2024 Dec 19;391(24):2304-2314. doi: 10.1056/NEJMoa2314325.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39693541/
コメント