急性心筋梗塞におけるスピロノラクトンの定期的投与の効果は?(RCT; CLEAR試験; N Engl J Med. 2024)

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急性心筋梗塞によりPCIを受けた患者に対するスピロノラクトンの効果は?

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、うっ血性心不全を伴う心筋梗塞後の患者の死亡率を低下させることが示されています。しかし、スピロノラクトンのルーチン使用が心筋梗塞後に有益かどうかは不明です。

そこで今回は、2×2要因デザインの多施設共同試験において、経皮的冠動脈インターベンションを受けた心筋梗塞患者をスピロノラクトンまたはプラセボ、コルヒチンまたはプラセボのいずれかを投与する群にランダムに割り付けた試験の結果、特にスピロノラクトン試験の結果をご紹介します。

本試験の2つの主要アウトカムは、心血管系の原因による死亡または心不全の新規または悪化の複合(イベントの総数として評価)、および心筋梗塞、脳卒中、心不全の新規または悪化、心血管系の原因による死亡の複合(初発で評価)でした。また、安全性んびついても評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

14ヵ国104施設で7,062例が登録され、3,537例がスピロノラクトン投与群に、3,525例がプラセボ投与群に割り付けられました。解析の時点で、45例(0.6%)の患者の生命状態が不明でした。

スピロノラクトン群プラセボ群調整ハザード比
(非心血管系を原因とする死亡の競合リスクで調整)
心血管系の原因による死亡または心不全の新規または悪化の複合183イベント
(1.7/100患者・年)
220イベント
(2.1/100患者・年)
調整ハザード比 0.91
(95%CI 0.69~1.21
P=0.51
心筋梗塞、脳卒中、心不全の新規または悪化、心血管系の原因による死亡の複合3,537例中280例
(7.9%)
3,525例中294例
(8.3%)
調整ハザード比 0.96
(95%CI 0.81~1.13
P=0.60

第一の主要アウトカムに関しては、追跡期間中央値3年間で、スピロノラクトン群では183イベント(1.7/100患者・年)であったのに対し、プラセボ群では220イベント(2.1/100患者・年)でした(非心血管系を原因とする死亡の競合リスクで調整したハザード比 0.91、95%信頼区間[CI] 0.69~1.21;P=0.51)。

2番目の主要アウトカムに関しては、スピロノラクトン群では3,537例中280例(7.9%)に、プラセボ群では3,525例中294例(8.3%)にイベントが発生しました(競合リスクで調整したハザード比 0.96、95%CI 0.81~1.13;P=0.60)。

重篤な有害事象はスピロノラクトン群で255例(7.2%)、プラセボ群で241例(6.8%)に報告されました。

コメント

心筋梗塞後の心不全に対して、標準治療へのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の追加が死亡リスクを低減することが報告されていますが、急性心筋梗塞後にPCIを受けた患者における有効性については充分に検証されていません。

さて、ランダム化比較試験の結果、心筋梗塞患者において、スピロノラクトンは心血管系の原因による死亡、心不全の新規または悪化の発生率、あるいは心血管系の原因による死亡、心筋梗塞、脳卒中、心不全の新規または悪化の複合の発生率を減少させませんでした。

患者背景としては、全患者のうち9.0%に心筋梗塞の既往、0.8%に心不全の既往があり、18.5%に糖尿病がありあした。ランダム化を受けた患者のほとんどはSTEMI(95.1%)であり、NSTEMIは4.9%でした。心筋梗塞発症からランダム化までの時間の中央値は26.8時間(四分位範囲15.9〜42.4)、ランダム化から治験薬の初回投与までの時間の中央値は2.1時間(四分位範囲0.7〜9.2)と、かなり早い段階で投与が開始されています。また、退院時に投与された薬剤は、両群で同様でした。

追跡期間の中央値は3.00年(四分位範囲:2.14〜3.71)で、スピロノラクトン群では28.0%、プラセボ群では24.4%の患者が試験レジメンを中止しました。全体として、やや脱落が多い印象を受けます。検出力の低下を招いた可能性を否定できません。さらに、スピロノラクトン群140例(4.0%)、プラセボ群166例(4.7%)では、担当医が治験薬の代わりに非盲検スピロノラクトンを処方していました。これも試験結果に影響を与えたと考えます。

本試験デザインは2 by 2ファクトリアルデザインであり、コルヒチン投与の影響が残存している可能性があります。コルヒチンは抗炎症作用を有することから、炎症フェーズである急性心筋梗塞の初期ステージにおける炎症を抑えて、予後改善に寄与している可能性があるためです。

非常に興味深い臨床疑問であるため、残念な検証結果ではあります。続報に期待したいところです。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、心筋梗塞患者において、スピロノラクトンは心血管系の原因による死亡、心不全の新規または悪化の発生率、あるいは心血管系の原因による死亡、心筋梗塞、脳卒中、心不全の新規または悪化の複合の発生率を減少させなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、うっ血性心不全を伴う心筋梗塞後の患者の死亡率を低下させることが示されている。スピロノラクトンのルーチン使用が心筋梗塞後に有益かどうかは不明である。

方法:この多施設共同試験では、2×2要因デザインで、経皮的冠動脈インターベンションを受けた心筋梗塞患者をスピロノラクトンまたはプラセボ、コルヒチンまたはプラセボのいずれかを投与する群にランダムに割り付けた。スピロノラクトン試験の結果をここに報告する。
2つの主要アウトカムは、心血管系の原因による死亡または心不全の新規または悪化の複合で、イベントの総数として評価され、心筋梗塞、脳卒中、心不全の新規または悪化、心血管系の原因による死亡の初発の複合で評価された。安全性も評価された。

結果:14ヵ国104施設で7,062例が登録され、3,537例がスピロノラクトン投与群に、3,525例がプラセボ投与群に割り付けられた。解析の時点で、45例(0.6%)の患者の生命状態が不明であった。第一の主要アウトカムに関しては、追跡期間中央値3年間で、スピロノラクトン群では183イベント(1.7/100患者・年)であったのに対し、プラセボ群では220イベント(2.1/100患者・年)であった(心血管系以外の原因による死亡の競合リスクで調整したハザード比 0.91、95%信頼区間[CI] 0.69~1.21;P=0.51)。2番目の主要アウトカムに関しては、スピロノラクトン群では3,537例中280例(7.9%)に、プラセボ群では3,525例中294例(8.3%)にイベントが発生した(競合リスクで調整したハザード比 0.96、95%CI 0.81~1.13;P=0.60)。重篤な有害事象はスピロノラクトン群で255例(7.2%)、プラセボ群で241例(6.8%)に報告された。

結論:心筋梗塞患者において、スピロノラクトンは心血管系の原因による死亡、心不全の新規または悪化の発生率、あるいは心血管系の原因による死亡、心筋梗塞、脳卒中、心不全の新規または悪化の複合の発生率を減少させなかった。

試験登録:ClinicalTrials.gov番号 NCT03048825

引用文献

Routine Spironolactone in Acute Myocardial Infarction
Sanjit S Jolly et al. PMID: 39555814 DOI: 10.1056/NEJMoa2405923
N Engl J Med. 2024 Nov 17. doi: 10.1056/NEJMoa2405923. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39555814/

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