プロトンポンプ阻害薬と心血管有害事象との関連性は?(RCTのメタ解析; Am J Gastroenterol. 2024)

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PPI使用による心血管イベントの発生リスクは?

いくつかの観察研究ではプロトンポンプ阻害薬(PPI)投与による心血管リスクが示唆されていますが、観察データはバイアスの影響を受ける可能性があります。

そこで今回は、PPI治療中の心血管イベントに関するランダム化比較試験データのメタ解析の結果をご紹介します。

PPIメーカーからPPI臨床試験プログラムのデータが提供されました。被験者100人以上、治療期間30日以上、非PPI比較対象(活性またはプラセボ)を有するランダム化試験が対象でした。一次解析では要約罹患率比、二次解析では罹患率差が算出されました。

本解析の主要複合アウトカムはmajor adverse cardiovascular events-plus(MACE+)であり、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、致死的心血管系有害事象、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術が対象となりました。

試験結果から明らかになったことは?

MACE+イベント
(PPI:プラセボ)
全体(主要解析)要約偶発率比 0.72
(95%信頼区間 0.42~1.26
胃食道逆流障害の試験に限定した解析罹患率差 1.04
(95%信頼区間 0.58~1.50

心血管アウトカムはPPIのランダム化試験ではまれであり、主要解析では全体的な関連は認められませんでした(MACE+イベント、PPI:プラセボ、要約偶発率比 0.72、95%信頼区間 0.42~1.26)。

適応症別にみると、いくつかの異質性がみられ、罹患率差の指標を用いると、胃食道逆流障害の試験ではプラセボと比較して治療100人年あたり1.04(95%信頼区間 0.58~1.50)のMACE+イベントの過剰がみられました。

アクティブコントロールとの比較では、一般的にPPI治療による正の発生率差が示されました。

コメント

プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用期間は適応症ごとに異なりますが、しばしば長期的に投与されます。特に難治性の逆流性食道炎では長期投与されることが多いことから長期的な安全性評価が求められています。観察研究の結果、PPI使用と心血管イベントとの関連性が報告されていますが、質の高い検証は行われていません。

さて、ランダム化比較試験のメタ解析の結果、全体として、PPI治療と心血管イベントの関連はみられませんでした。心血管イベントは胃食道逆流障害の試験でPPI治療により高頻度にみられましたが、このサブグループの結果は、アウトカム数がまばらであること、個々の患者データがないことなど、解析の限界を念頭に置いて解釈されるべきです。

有料文献であるため、追跡期間や解析に組み入れられた患者数などは不明です。どのような患者で心血管イベントが増加するのか、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験のメタ解析の結果、全体として、PPI治療と心血管イベントの関連はみられなかった。

根拠となった試験の抄録

はじめに:いくつかの観察研究ではプロトンポンプ阻害薬(PPI)投与による心血管リスクが示唆されているが、観察データはバイアスの影響を受ける可能性がある。われわれはPPI治療中の心血管イベントに関するランダム化比較試験データのメタ解析を行った。

方法:PPIメーカーからPPI臨床試験プログラムのデータが提供された。被験者100人以上、治療期間30日以上、非PPI比較対象(活性またはプラセボ)を有するランダム化試験を対象とした。一次解析では要約罹患率比を、二次解析では罹患率差を算出した。
主要複合アウトカムはmajor adverse cardiovascular events-plus(MACE+)とし、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、致死的心血管系有害事象、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術を対象とした。

結果:心血管アウトカムはPPIのランダム化試験ではまれであり、主要解析では全体的な関連は認められなかった(MACE+イベント、PPI:プラセボ、要約偶発率比 0.72、95%信頼区間 0.42~1.26)。適応症別にみると、いくつかの異質性がみられ、罹患率差の指標を用いると、胃食道逆流障害の試験ではプラセボと比較して治療100人年あたり1.04(95%信頼区間 0.58~1.50)のMACE+イベントの過剰がみられた。アクティブコントロールとの比較では、一般的にPPI治療による正の発生率差が示された。

考察:全体として、PPI治療と心血管イベントの関連はみられなかった。心血管イベントは胃食道逆流障害の試験でPPI治療により高頻度にみられたが、このサブグループの結果は、アウトカム数がまばらであること、個々の患者データがないことなど、解析の限界を念頭に置いて解釈されるべきである。

引用文献

Proton-Pump Inhibitors and Cardiovascular Adverse Events: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
Andrew D Mosholder et al. PMID: 39207289 DOI: 10.14309/ajg.0000000000003058
Am J Gastroenterol. 2024 Aug 27. doi: 10.14309/ajg.0000000000003058. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39207289/

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