心筋梗塞後におけるβ遮断薬の中断と継続どちらが良い?(OPen-RCT; ABYSS試験; N Engl J Med. 2024)

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心筋梗塞後のβ遮断薬の治療期間はどのくらいが良いのか?

心筋梗塞後のβ遮断薬による適切な治療期間は不明です。合併症を有さない心筋梗塞既往の患者において、副作用を軽減しQOLを改善するために長期間のβ遮断薬治療を中断した場合の安全性と有効性に関するデータが求められています。

そこで今回は、心筋梗塞既往を有する患者をβ遮断薬治療の中断群と継続群に1:1の割合でランダムに割り付け、ベータ遮断薬による予後への影響を検証した非盲検ランダム化比較試験(ABYSS試験)の結果をご紹介します。

本試験は、フランスの49施設で行われた多施設共同オープンラベルランダム化非劣性試験です。試験参加者は、長期β遮断薬治療中に左室駆出率が40%以上であり、過去6ヵ月間に心血管イベントの既往を有していませんでした。

本試験の主要エンドポイントは最長追跡期間(最低1年)における死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管系を原因とする入院の複合であり、非劣性(両側95%信頼区間の上限の群間差が3%ポイント未満と定義)の解析に従い行われました。主な副次的エンドポイントは、European Quality of Life-5 Dimensions質問票で測定したQOLの変化でした。

試験結果から明らかになったことは?

合計3,698例の患者がランダム化を受けました:1,846例が中断群に、1,852例が継続群に割り付けられました。最終心筋梗塞からランダム化までの期間中央値は2.9年(四分位範囲 1.2~6.4)、追跡期間中央値は3.0年(四分位範囲 2.0~4.0)でした。

β遮断薬の中断群継続群リスク差
(95%CI)
ハザード比
(95%CI)
一次転帰イベント1,812例中432例(23.8%)1,821例中384例(21.1%)リスク差 2.8%ポイント
<0.1~5.5
ハザード比 1.16
1.01~1.33
非劣性のP=0.44
 死亡76例(4.1%)74例(4.0%)
 非致死的心筋梗塞46例(2.5%)44例(2.4%)
 非致死的脳卒中18例(1.0%)19例(1.0%)
 心血管系を原因とする入院349例(18.9%)307例(16.6%)

一次転帰イベントは、中断群では1,812例中432例(23.8%)に、継続群では1,821例中384例(21.1%)に発生し(リスク差 2.8%ポイント;95%信頼区間[CI] <0.1~5.5)、ハザード比は1.16(95%CI 1.01~1.33;非劣性のP=0.44)でした。

β遮断薬の中断は患者のQOLを改善しませんでした(平均差 0.002;95%CI -0.008~0.012)。

コメント

さて、非盲検ランダム化比較試験の結果、心筋梗塞の既往のある患者において、長期にわたるβ遮断薬治療の中断はβ遮断薬の継続戦略に対して非劣性であることは明らかにされなかった。

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✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、心筋梗塞の既往のある患者において、長期にわたるβ遮断薬治療の中断はβ遮断薬の継続戦略に対して非劣性であることは明らかにされなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:心筋梗塞後のβ遮断薬による適切な治療期間は不明である。合併症のない心筋梗塞の既往のある患者において、副作用を軽減しQOLを改善するために長期間のβ遮断薬治療を中断した場合の安全性と有効性に関するデータが必要である。

方法:フランスの49施設で行われた多施設共同オープンラベルランダム化非劣性試験において、心筋梗塞の既往のある患者をβ遮断薬治療の中断群と継続群に1:1の割合でランダムに割り付けた。全例は長期β遮断薬治療中に左室駆出率が40%以上であり、過去6ヵ月間に心血管イベントの既往はなかった。
主要エンドポイントは最長追跡期間(最低1年)における死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管系の理由による入院の複合とし、非劣性(両側95%信頼区間の上限の群間差が3%ポイント未満と定義)の解析に従った。主な副次的エンドポイントは、European Quality of Life-5 Dimensions質問票で測定したQOLの変化であった。

結果:合計3,698例の患者がランダム化を受けた:1,846例が中断群に、1,852例が継続群に割り付けられた。最終心筋梗塞からランダム化までの期間中央値は2.9年(四分位範囲 1.2~6.4)、追跡期間中央値は3.0年(四分位範囲 2.0~4.0)であった。一次転帰イベントは、中断群では1,812例中432例(23.8%)に、継続群では1,821例中384例(21.1%)に発生し(リスク差 2.8%ポイント;95%信頼区間[CI] <0.1~5.5)、ハザード比は1.16(95%CI 1.01~1.33;非劣性のP=0.44)であった。β遮断薬の中断は患者のQOLを改善しなかったようである。

結論:心筋梗塞の既往のある患者において、長期にわたるβ遮断薬治療の中断はβ遮断薬の継続戦略に対して非劣性であることは明らかにされなかった。

資金提供:フランス保健省およびACTION Study Groupの助成

試験登録:ClinicalTrials.gov番号, NCT03498066;EudraCT番号, 2017-003903-23

引用文献

Beta-Blocker Interruption or Continuation after Myocardial Infarction
Johanne Silvain et al. PMID: 39213187 DOI: 10.1056/NEJMoa2404204
N Engl J Med. 2024 Aug 30. doi: 10.1056/NEJMoa2404204. Online ahead of print.
— 読み進める www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2404204

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