ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬使用者と非使用者の腎予後の比較(日本のデータベース研究; Diabetes Obes Metab. 2024)

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DPP-4阻害薬による腎予後への影響とは?

ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬(DPP-4is)は、日本では2型糖尿病患者の第一選択薬として広く処方されており、その使用率はアジア人の高い血糖降下作用により60%を超えています(PMID: 34309213)。しかし、DPP-4isに腎保護作用があるかどうかについてはまだ議論の余地があります。

また実臨床において、DPP-4isはプライマリケアで長期にわたって使用されることが多く、心血管リスクが低い患者に使用されることが多いことから大規模ランダム化比較試験の結果を外挿することが制限されています。

そこで今回は、アジアの実データを用いてジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬(DPP-4i)使用者と非使用者の腎予後を評価した日本のデータベース研究の結果をご紹介します。

本研究では、DeSC Healthcare社のデータベースを用いて、2014年から2021年までに抗糖尿病薬を使用した30歳以上の患者が同定されました。傾向スコアマッチング解析により、DPP-4i使用者と非使用者の腎予後が比較されました。

本研究の主要アウトカムは、それぞれeGFR45mL/分/1.73m2以上群とeGFR45mL/分/1.73m2未満群における推定糸球体濾過量(eGFR)低下と末期腎臓病(ESKD)発症でした。

試験結果から明らかになったことは?

eGFR45mL/分/1.73m2以上群とeGFR45mL/分/1.73m2未満群では、それぞれ65,375例と9,866例が同定された。eGFR45mL/分/1.73m2以上群では、傾向スコアマッチングにより16,002組が作成された。主要アウトカムであるeGFR低下については、2年後(-2.31 vs. -2.56mL/分/1.73m2:差 0.25mL/分/1.73m2;95%信頼区間[CI] 0.06〜0.44)と3年後(-2.75 vs. -3.41mL/分/1.73m2:差 0.66mL/分/1.73m2;95%CI 0.39〜0.93)でDPP-4i使用群と非使用群で有意差が認められた。eGFR45mL/分/1.73m2未満群では、傾向スコアマッチングにより2,086組が作成された。平均2.2年の観察後、ESKDの発症は使用者で1.15%、非使用者で2.30%であり、Kaplan-Meier解析で有意差が認められた(log rank P=0.005)。

コメント

糖尿病患者における腎機能低下と、薬剤使用との関連性について検証結果が限られています。

さて、日本のデータベースを用いたレトロスペクティブな実臨床試験の結果、DPP-4阻害薬を使用している患者は使用していない患者よりも腎予後が良好であることが明らかになりました。ただし、これまでの試験結果を踏まえると追試が求められます。

これまでの検証結果では、DPP-4阻害薬により、アルブミン尿の新規発症または悪化リスクの低減の可能性が示されているものの、eGFR低下リスクの低減など腎機能低下を抑制する結果は示されていません。また、逆因果の可能性が残存しています。つまり腎機能低下リスクの低い患者集団において、DPP-4阻害薬が使用されている可能性があります。例えば、SGLT2阻害薬は腎機能(eGFR)低下のリスク低減が示されていることから、そもそも心血管イベントのリスクが高い患者集団において優先的に使用されている可能性が高いと考えられます。

したがって、本研究結果を持って、アジア人(特に日本人)において腎機能低下のリスク低減を目的としたDPP-4阻害薬の使用を積極的に推奨することは困難です。引き続き検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ レトロスペクティブな実臨床試験の結果、DPP-4阻害薬を使用している患者は使用していない患者よりも腎予後が良好であることが明らかになったが、これまでの試験結果を踏まえると追試が求められる。

根拠となった試験の抄録

目的:アジアの実データを用いてジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬(DPP-4i)使用者と非使用者の腎予後を評価する。

方法:DeSC Healthcare社のデータベースを用いて、2014年から2021年までに抗糖尿病薬を使用した30歳以上の患者を同定した。傾向スコアマッチング解析を用いて、DPP-4i使用者と非使用者の腎予後を比較した。
主要アウトカムは、それぞれeGFR45mL/分/1.73m2以上群とeGFR45mL/分/1.73m2未満群における推定糸球体濾過量(eGFR)低下と末期腎臓病(ESKD)発症とした。

結果:eGFR45mL/分/1.73m2以上群とeGFR45mL/分/1.73m2未満群では、それぞれ65,375例と9,866例が同定された。eGFR45mL/分/1.73m2以上群では、傾向スコアマッチングにより16,002組が作成された。主要アウトカムであるeGFR低下については、2年後(-2.31 vs. -2.56mL/分/1.73m2:差 0.25mL/分/1.73m2;95%信頼区間[CI] 0.06〜0.44)と3年後(-2.75 vs. -3.41mL/分/1.73m2:差 0.66mL/分/1.73m2;95%CI 0.39〜0.93)でDPP-4i使用群と非使用群で有意差が認められた。eGFR45mL/分/1.73m2未満群では、傾向スコアマッチングにより2,086組が作成された。平均2.2年の観察後、ESKDの発症は使用者で1.15%、非使用者で2.30%であり、Kaplan-Meier解析で有意差が認められた(log rank P=0.005)。

結論:このレトロスペクティブな実臨床試験から、DPP-4isを使用している患者は使用していない患者よりも腎予後が良好であることが明らかになった。

キーワード:DPP-4阻害薬、抗糖尿病薬、データベース研究、リアルワールドエビデンス

引用文献

Comparison of renal prognosis between dipeptidyl peptidase-4 inhibitor users and non-users
Hideaki Hashimoto et al. PMID: 39086031 DOI: 10.1111/dom.15800
Diabetes Obes Metab. 2024 Jul 31. doi: 10.1111/dom.15800. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39086031/

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