高齢者におけるDAPTのリスクベネフィットはどのくらいか?
高齢者の経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention, PCI)後の二重抗血小板療法(dual antiplatelet therapy, DAPT)の至適期間は不明です。
そこで今回は、PCI後の高齢者におけるDAPTの短縮と有害臨床イベントとの関連を検討することを目的に実施されたメタ解析の結果をご紹介します。
文献検索について、Cochrane Library,Google Scholar,Embase,MEDLINE,PubMed,Scopus,Web of Scienceを開始時から2023年8月9日まで検索されました。
65歳以上または75歳以上の成人を対象として、1、3、6、12ヵ月のDAPTのうちいずれか2つを比較したランダム化比較試験が組み入れられました。
データの抽出およびデータの質の評価には、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)報告ガイドラインが用いられました。DAPTの期間ごとのリスク比は、参照群を交互に変え算出されました。
本解析の主要アウトカムは純有害臨床イベント(net adverse clinical events, NACE)であり、副次的アウトカムは主要有害心血管イベント(MACE)と出血でした。
試験結果から明らかになったことは?
高齢者19,102例を対象とした14件のランダム化臨床試験において、1、3、6、12ヵ月のDAPT施行によるNACEまたはMACEのリスクに差は認められませんでした。
高齢者 | 出血の相対リスク RR (95%CI) vs. 3ヵ月 |
6ヵ月のDAPT | RR 0.50(0.29〜0.84) |
12ヵ月のDAPT | RR 0.57(0.45〜0.71) |
しかし、高齢者では6ヵ月のDAPT(相対リスク[RR] 0.50、95%CI 0.29〜0.84)および12ヵ月のDAPT(RR 0.57、95%CI 0.45〜0.71)と比較して、3ヵ月のDAPTは出血リスクの低下と関連していました。
高齢者 | 出血の相対リスク RR (95%CI) vs. 6ヵ月 |
1ヵ月のDAPT | RR 0.68(0.54〜0.86) |
また、1ヵ月間のDAPTは6ヵ月間のDAPTと比較して出血リスクの低下と関連していました(RR 0.68、95%CI 0.54〜0.86)。
コメント
高齢者においては、出血リスクが重大な患者転帰と関連しやすいことから、DAPTのリスク・ベネフィット評価を慎重に行う必要があります。
さて、PCI後の高齢者に対するさまざまなDAPT期間に関するこの系統的レビューおよびメタ解析の結果、高齢者ではよりリスクの高い冠動脈解剖学的構造および併存疾患が懸念されるにもかかわらず、DAPT期間の短縮はMACEまたはNACEのリスクを伴うことなく出血リスクの低下と関連していました。
DAPT期間の変化における心血管イベントや死亡リスクへの影響はほぼないようですが、出血リスクについてはDAPT期間の短縮による利益が大きいようです。患者背景にもよりますが、DAPTの期間を短縮できるようであれば、短縮した方が良さそうです。
続報に期待。
✅まとめ✅ PCI後の高齢者に対するさまざまなDAPT期間に関するこの系統的レビューおよびメタ解析では、高齢者ではよりリスクの高い冠動脈解剖学的構造および併存疾患が懸念されるにもかかわらず、DAPT期間の短縮はMACEまたはNACEのリスクを伴うことなく出血リスクの低下と関連していた。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:高齢者の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の二重抗血小板療法(DAPT)の至適期間は不明である。
目的:PCI後の高齢者におけるDAPTの短縮と有害臨床イベントとの関連を検討すること。
データ源:Cochrane Library,Google Scholar,Embase,MEDLINE,PubMed,Scopus,Web of Scienceを開始時から2023年8月9日まで検索。
試験の選択:65歳以上または75歳以上の成人を対象として、1、3、6、12ヵ月のDAPTのうちいずれか2つを比較したランダム化臨床試験を組み入れた。
データの抽出と統合:データの抽出およびデータの質の評価には、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)報告ガイドラインを用いた。DAPTの期間ごとのリスク比は、参照群を交互に変えて算出した。
主要アウトカムと評価基準:主要アウトカムは純有害臨床イベント(net adverse clinical events, NACE)であった。副次的アウトカムは主要有害心血管イベント(MACE)と出血であった。
結果:高齢者19,102例を対象とした14件のランダム化臨床試験において、1、3、6、12ヵ月のDAPT施行によるNACEまたはMACEのリスクに差は認められなかった。しかし、高齢者では6ヵ月のDAPT(相対リスク[RR] 0.50、95%CI 0.29〜0.84)および12ヵ月のDAPT(RR 0.57、95%CI 0.45〜0.71)と比較して、3ヵ月のDAPTは出血リスクの低下と関連していた。また、1ヵ月のDAPTは6ヵ月のDAPTと比較して出血リスクの低下と関連していた(RR 0.68、95%CI 0.54〜0.86)。
結論と関連性:PCI後の高齢者に対するさまざまなDAPT期間に関するこの系統的レビューおよびメタ解析では、高齢者ではよりリスクの高い冠動脈解剖学的構造および併存疾患が懸念されるにもかかわらず、DAPT期間の短縮はMACEまたはNACEのリスクを伴うことなく出血リスクの低下と関連していた。本研究は、高齢者に対するこの短縮治療に関する初のネットワークメタ解析であり、臨床医が高齢者に対するDAPTの短縮を考慮する可能性を示唆している。
引用文献
Shorter Dual Antiplatelet Therapy for Older Adults After Percutaneous Coronary Intervention: A Systematic Review and Network Meta-Analysis
Dae Yong Park et al. PMID: 38546647 PMCID: PMC10979312 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2024.4000
JAMA Netw Open. 2024 Mar 4;7(3):e244000. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2024.4000.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38546647/
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