急性虚血性脳卒中に対する血管内治療後の血圧管理はどのくらいが良いのか?(Open RCT; BEST-II試験; JAMA. 2023)

nurse taking the blood pressure of a patient 02_循環器系
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血管内治療後の血圧管理における最適な目標値は?

急性虚血性脳卒中に対する血管内治療による再灌流成功後の血圧コントロールについては議論が分かれています。特に収縮期血圧(SBP)コントロールの目標値として、中等度低下の効果は不明です。

そこで今回は、血管内治療後のSBP目標値が低い場合(<140mmHgまたは160mmHg)と、高い場合(≤180mmHg)とを比較検討したBEST-II試験の結果をご紹介します。

本試験は、2020年1月~2022年3月(最終追跡は2022年6月)に、米国の包括的脳卒中センター3施設において血管内治療が成功した急性虚血性脳卒中患者120例を登録したランダム化、非盲検、エンドポイント盲検、第2相、無益性臨床試験です。

血管内治療後、参加者は3つのSBP目標値のいずれかにランダムに割り付けられました。再開通後60分以内に血圧コントロールを開始し、24時間維持しました。
1)40~140mmHg未満群
2)40~160mmHg未満群
3)40~180mmHg未満群(ガイドライン推奨)

主要無益性解析のために事前に規定された複数の主要アウトカムは、36(±12)時間後に測定されたフォローアップ梗塞容積と90(±14)日後の実用重み付け修正ランキンスケール(mRS)スコア(範囲:0[最悪]~1[最高])でした

線形回帰モデルを用いて、血管内治療後のSBP目標値が20mmHg低下するごとに、追跡期間中の梗塞容積が10mL増加(傾き0.5)するか、または実用度重み付けしたmRSスコアが0.10低下(傾き-0.005)するかという有害性と無益性の境界について検定されました(1-sided α=0.05)。さらに事前に規定した無益性の基準は、低閾値および中閾値のSBP目標値と高閾値のSBP目標値とを比較する将来の2群間優越性試験の成功予測確率が25%未満であることでした(実用性重み付けmRSスコアのアウトカムに関して、最大サンプルサイズは1,500)。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化された120例(平均年齢69.6[SD 14.5]歳;女性69例[58%])のうち、113例(94.2%)が試験を完了しました。

140mmHg未満群160mmHg未満群180mmHg以下群
平均梗塞容積32.4mL
(95%CI 18.0~46.7mL
50.7mL
(95%CI 33.7~67.7mL
46.4mL
(95%CI 24.5~68.2mL
実用度加重平均mRSスコア0.51
(95%CI 0.38~0.63)
0.47
(95%CI 0.35~0.60)
0.58
(95%CI 0.46~0.71)

追跡後の平均梗塞容積は、140mmHg未満群で32.4mL(95%CI 18.0~46.7mL)、160mmHg未満群で50.7mL(95%CI 33.7~67.7mL)、180mmHg以下群で46.4mL(95%CI 24.5~68.2mL)でした。

実用度加重平均mRSスコアは、140mmHg未満群で0.51(95%CI 0.38~0.63)、160mmHg未満群で0.47(95%CI 0.35~0.60)、180mmHg以下群で0.58(95%CI 0.46~0.71)でした。

ベースラインのアルバータ脳卒中プログラム早期CTスコアで調整した、SBP目標値が1mmHg低下するごとに追跡後の梗塞体積が減少する勾配は-0.29(95%CI -0.81~∞;無益性P=0.99)でした。

血管内治療後のSBP目標値が1mmHg低下するごとの実用度重み付けmRSスコアの勾配は、ベースラインの実用度重み付けmRSスコアで調整すると、-0.0019(95%CI -∞~0.0017;無益性のP=0.93)でした。

SBP高値目標群と低値目標群を比較すると、将来の試験成功予測確率は140mmHg未満群で25%、160mmHg群で14%でした。

コメント

脳梗塞急性期に血圧を高めに保つことがありますが、これは脳血流が減少している状態で血圧を低めに管理することで脳へのダメージが悪化する可能性があるためです。しかし、血管内治療後の最適な血圧コントロール目標値については明らかとなっていません。

さて、エンドポイント盲検のオープンランダム化比較試験の結果、急性虚血性脳卒中患者において、血管内治療成功後のSBP目標値が140mmHg未満または160mmHg未満では、SBP目標値180mmHg以下と比較して、事前に規定した無益性の基準は満たされませんでした。ただし、本試験は1群100症例未満の小規模なランダム化比較試験であり、検出力が不足していた可能性が高いと考えられます。また、SBP目標値が140mmHg未満の群では、他の群と比較して平均梗塞容積は低い傾向がみられました。

脳血流が再開していることから、一般的な高血圧患者と同様に血圧の管理目標は低めに設定した方が予後が良いのかもしれません。あくまでも傾向がみられたに過ぎないことから、追試が求められます。

続報に期待。

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まとめ:急性虚血性脳卒中患者において、血管内治療成功後のSBP目標値が140mmHg未満または160mmHg未満では、SBP目標値180mmHg以下と比較して、事前に規定した無益性の基準は満たされなかったが、平均梗塞容積は140mmHg未満で低い傾向にあった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:急性虚血性脳卒中に対する血管内治療による再疎通成功後の収縮期血圧(SBP)中等度低下の効果は不明である。

目的:血管内治療後の低いSBP目標値(<140mmHgまたは160mmHg)が高い目標値(≤180mmHg)と比較して有用かどうかを検討する。

試験デザイン、設定、参加者:2020年1月~2022年3月(最終追跡は2022年6月)に、米国の包括的脳卒中センター3施設において血管内治療が成功した急性虚血性脳卒中患者120例を登録したランダム化、非盲検、エンドポイント盲検、第2相、無益性臨床試験。

介入:血管内治療後、参加者は3つのSBP目標値のいずれかにランダムに割り付けられた:40~140mmHg未満群、40~160mmHg未満群、40~180mmHg未満群(ガイドライン推奨)の3群にランダムに割り付け、再開通後60分以内に開始し、24時間維持した。

主要アウトカムと評価基準:主要無益性解析のために事前に規定された複数の主要アウトカムは、36(±12)時間後に測定されたフォローアップ梗塞容積と90(±14)日後の実用重み付け修正ランキンスケール(mRS)スコア(範囲:0[最悪]~1[最高])であった。線形回帰モデルを用いて、血管内治療後のSBP目標値が20mmHg低下するごとに、追跡期間中の梗塞容積が10mL増加(傾き0.5)するか、または実用度重み付けしたmRSスコアが0.10低下(傾き-0.005)するかという有害性と無益性の境界を検定した(1-sided α=0.05)。さらに事前に規定した無益性の基準は、低閾値および中閾値のSBP目標値と高閾値のSBP目標値とを比較する将来の2群間優越性試験の成功予測確率が25%未満であることであった(実用性重み付けmRSスコアのアウトカムに関して、最大サンプルサイズは1,500)。

結果:ランダム化された120例(平均年齢69.6[SD 14.5]歳;女性69例[58%])のうち、113例(94.2%)が試験を完了した。追跡後の平均梗塞容積は、140mmHg未満群で32.4mL(95%CI 18.0~46.7mL)、160mmHg未満群で50.7mL(95%CI 33.7~67.7mL)、180mmHg以下群で46.4mL(95%CI 24.5~68.2mL)であった。実用度加重平均mRSスコアは、140mmHg未満群で0.51(95%CI 0.38~0.63)、160mmHg未満群で0.47(95%CI 0.35~0.60)、高標的群で0.58(95%CI 0.46~0.71)であった。ベースラインのアルバータ脳卒中プログラム早期CTスコアで調整した、SBP目標値が1mmHg低下するごとに追跡後の梗塞体積が減少する勾配は-0.29(95%CI -0.81~∞;無益性P=0.99)であった。血管内治療後のSBP目標値が1mmHg低下するごとの実用度重み付けmRSスコアの勾配は、ベースラインの実用度重み付けmRSスコアで調整すると、-0.0019(95%CI -∞~0.0017;無益性のP=0.93)であった。SBP高値目標群と低値目標群を比較すると、将来の試験成功予測確率は140mmHg未満群で25%、160mmHg群で14%であった。

結論と関連性:急性虚血性脳卒中患者において、血管内治療成功後のSBP目標値が140mmHg未満または160mmHg未満では、SBP目標値180mmHg以下と比較して、事前に規定した無益性の基準は満たされなかった。しかし、この所見から、将来より大規模な試験で検証された場合、血管内治療後のSBP目標値が低いほど有益である可能性は低いことが示唆された。

臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier. NCT04116112

引用文献

Blood Pressure Management After Endovascular Therapy for Acute Ischemic Stroke: The BEST-II Randomized Clinical Trial
Eva A Mistry et al. PMID: 37668620 PMCID: PMC10481231 (available on 2024-03-05) DOI: 10.1001/jama.2023.14330
JAMA. 2023 Sep 5;330(9):821-831. doi: 10.1001/jama.2023.14330.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37668620/

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