駆出率が低下した心不全患者に対するベルイシグアトとサクビトリル/バルサルタンの有効性比較(メタ解析; Int J Cardiol. 2024)

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HFrEF患者の心血管イベントの発生リスクに対するベルイシグアト vs. サクビトリル/バルサルタン

プラセボと比較したベルイシグアトの有効性は確立されているものの、駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者に対するサクビトリル/バルサルタンとの比較有効性については不確実性が残っています。

そこで今回は、システマティックレビュー、ネットワークメタ解析、非劣性試験により、ベルイシグアトとサクビトリル/バルサルタンの相対的有効性を評価することを目的とした研究の結果をご紹介します。

ベルイシグアトとサクビトリル/バルサルタンを含むランダム化第3相臨床試験を同定するために系統的レビューが行われました。心血管死(CVD)とHFによる入院(HF入院)のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)について、これらの試験から抽出され、ネットワークメタ解析により統合されました。

ベルイシグアトの非劣性試験は、あらかじめ定義された非劣性マージン(1.24)を用いた固定マージン法で行われました。感度分析では、HF入院からスクリーニングまでの時間の影響について検討されました。

試験結果から明らかになったことは?

1,366件の試験のうち、2件の試験(VICTORIAおよびPARADIGM-HF)が組み入れ基準を満たしました。

ハザード比 HR
(95%CI)
CVDまたはHF入院HR 0.88(0.62〜1.23

ネットワークメタ解析により、ベルイシグアトによるCVDまたはHF入院のHRはサクビトリル/バルサルタンのHRと有意差がないことが示されました(HR 0.88、95%CI 0.62〜1.23)。95%CIの上限は1.24であり、ベルイシグアトのサクビトリル/バルサルタンに対する非劣性が確認されました。

感度分析により、ベースケースの結果の頑健性が確認されました。

コメント

比較的新しい心不全治療薬であるベルイシグアトは、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を直接刺激
すると共に、内因性一酸化窒素(NO)に対するsGCの感受性を増強させる作用を有しています。特に慢性心不全で低下しているサイクリックGMP(cGMP)を補強することにより心筋および血管障害を抑制する作用を有していることから、患者予後を改善することが期待されています。しかし、実臨床における検証は充分ではありません。

さて、ネットワークメタ解析の結果、ベルイシグアトはサクビトリル/バルサルタンと比較した場合、心血管疾患(CVD)または心不全(HF)入院のリスクが同等であることが示唆されました。

有料文献であることから主要評価項目の構成要素の発生リスクや異質性などの評価が充分にできていませんが、区間推定値から、いずれかの薬剤の方が優れていることはなさそうです。少なくとも現時点については、薬剤間でさはなさそうです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ネットワークメタ解析の結果、ベルイシグアトはサクビトリル/バルサルタンと比較した場合、心血管疾患(CVD)または心不全による入院のリスクが同等であった。

根拠となった試験の抄録

背景:プラセボと比較したベルイシグアトの有効性は確立されているものの、駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者に対するサクビトリル/バルサルタンとの比較有効性については不確実性が残っている。本研究では、システマティックレビュー、ネットワークメタ解析、非劣性試験により、ベルイシグアトとサクビトリル/バルサルタンの相対的有効性を評価することを目的とした。

方法:ベルイシグアトとサクビトリル/バルサルタンを含むランダム化第3相臨床試験を同定するために系統的レビューを行った。心血管死(CVD)とHFによる入院(HF入院)のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)をこれらの試験から抽出し、ネットワークメタ解析により統合した。ベルイシグアトの非劣性試験は、あらかじめ定義された非劣性マージン(1.24)を用いた固定マージン法で行われた。感度分析では、HF入院からスクリーニングまでの時間の影響を検討した。

結果:1,366件の試験のうち、2件の試験(VICTORIAおよびPARADIGM-HF)が組み入れ基準を満たした。ネットワークメタ解析により、ベルイシグアトによるCVDまたはHF入院のHRはサクビトリル/バルサルタンのHRと有意差がないことが示された(HR 0.88、95%CI 0.62〜1.23)。95%CIの上限は1.24であり、ベルイシグアトのサクビトリル/バルサルタンに対する非劣性が確認された。感度分析により、ベースケースの結果の頑健性が確認された。

結論:ベルイシグアトはサクビトリル/バルサルタンと比較した場合、CVDまたはHF入院のリスクは同等であった。重要なことは、HFrEF患者において、ベルイシグアトの有効性はサクビトリル/バルサルタンに統計学的に劣るものではなかったことである。これらの所見は、ベルイシグアトがこの患者集団に対する有効な治療選択肢となる可能性を補強するものである。

キーワード:心不全、メタアナリシス、非劣性試験、サクビトリル/バルサルタン、システマティックレビュー、ベリシグアト

引用文献

Comparative efficacy of vericiguat to sacubitril/valsartan for patients with heart failure reduced ejection fraction: Systematic review and network meta-analysis
Dong-Won Kang et al. PMID: 38242507 DOI: 10.1016/j.ijcard.2024.131786
Int J Cardiol. 2024 Jan 17:131786. doi: 10.1016/j.ijcard.2024.131786. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38242507/

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